くち

明日、一人辞める
同じ現場監督の子
僕は2年前に見限っていた

建築の世界は能力社会だ
できる奴は上がり
できない奴は下がる

1日朝から夕方まで働く
彼らが何を見て望むか
楽で早く評価されるか

できる奴と思わせるには
楽で早く評価する奴だと感じさせればよく
僕はそう努めている

話すことが苦手だ
講師やプレゼンは得意だけれど
自分を話して何かを感じさせることが苦手だ

だから行動する
経験が全てな職種で未経験だったから
早さだけにこだわって行動した

ミスをすると時間が過ぎる
経験がなければミスをする
できるかできないか

それを決めるのは過ぎゆく時間の差
ミスに気づいてからの時間
走ればいい

責任感、リスペクト、信用
どれも間違いではないけど
僕はできない自分自身への怒りで走る

できないと評価される人はすぐわかる
怒りを感じない
悔しいとか情けないではなく

辞めていく子も怒りを感じなかった
まだ何人か怒りを感じない人が職場にいる
なぜ平気なのかなぁ、と思う

ただそれ以上は何も思わない
だからサバサバしていると受け取られるんだろうな
それでいいんだけど

いつもなら何も言わず明日を迎えるけど
僕が僕に一つ変化を加えてみるために
2年前に見限った理由を話してみた

言葉の遅い彼はそうですか、と苦笑していた
想定した反応、傷つけたかなという小さな罪悪感
でも僕は今までしたことがないことをした

本心を伝えた
自分の中で一番表に出してこなかった核を出した
僕は一つ変わることができた

彼に感謝している


貯金箱に全額入れて保護猫の会に寄付します