しん

新築の現場には大工が必ず居る
その大工に好かれたほうが
監督として仕事はしやすい

一人ベテランの大工がいる
建築士の資格を取って監督をして
大工をしている

道具や木材の使い方をよく知っている
他の職人の不備や雑さを指摘する
会社にとってはありがたい存在だ

僕はそういう人材を囲む空気が苦手だ
皆が諸手を上げて賞賛する
それが善であり正解だという空気が苦手だ

始めたての頃、現場を担当してもらった
色んな事を高いレベルで教えてもらった
一日の濃度が高くて楽しかった

彼と現場をこなした監督同士で語る空気は好きだ
彼から学んだ何かを次に生かせないかとする議論は好きだ
ただ横にいた、話した程度の周囲が作る空気を吸うのは嫌だ

僕は彼の現場にあまり行かないし行けないことが増えた
彼は僕と根本的には合わないんだと思う
けれど突き詰めていくレベルや感覚では似てる気がする

一緒にこなした現場ではたくさん話した
短期間で対話することができる人は数少ないから
年齢や立場がない世界だったらどんなに楽だろうか

群れない
媚びない
靡かない

群れたくても
媚びたくても
靡かれたくても

自分がそうしようとする自分を許さない
それをした自分は底に落ちていく
そう自覚しているからできない

一匹狼は一匹でいたいのではなく、いるしかできないんだろう


貯金箱に全額入れて保護猫の会に寄付します