是永昭宏絵画展|創作と視覚障害〜もうひとつのリアリティ
広島県立美術館・県民ギャラリーで開催中の展覧会。
是永昭宏さんは、視覚障害をお持ちで、両眼とも視野の中心部がぼんやりとしか見えないため、ルーペを使って絵を描いておられる画家さんです。
地元のラジオで何度か特集されていたのがきっかけで、足を運んでみました。(NHKハートネットTVブレイクスルーでも特集されたことがあるそうです。)
ご本人様がご在廊だったので、いろいろとお話しも伺い、私も視覚障害者なので、その話でもちょっと盛り上がったり(◍•ᴗ•◍)✧*。
視覚障害も人それぞれで、是永さんは中心部、私は周辺部が主に見えにくいため、生活上のお困り事も対照的。私はものを見つけたり外出するのが難しく怪我も多いのですが、是永さんはそれはわりと大丈夫だけど、肝心の見たいものがはっきり見えない、とのことで、そちらのほうが大変だろうと思います。
「やっぱり若い頃はいろいろ考えたり悩んだりしました」とおっしゃる是永さん。ラジオでは、《見えないからこそ描ける境地がある》というふうに仰っていました。
私も、「全くの趣味ですが、書くのが好きで...やっぱり、目が悪くなってから、いろいろと思い悩みましたが、《儚さ》に対する感覚が鋭くなったと思います」とお話し申し上げ、互いに苦労話をさわりだけしたあと、ふたりして、「でもみんないずれ死にますから、それとあまり変わらないですよね」と、落ち着くべきところに落ち着いたのでした。
是永さんは、生きることを楽しんでいらっしゃるとのことで、「私、そこまで言い切れるかなあ...(^^ゞ」なんて。
SNS掲載OKとのことなので、写真を撮ってきました。後ほど、ご紹介しますね。
是永さんは、17歳の頃に視力が急に低下し、美大に進む道を諦めたそうです。
初期の頃は、《見えない》ことにストレスや憤りを感じ、見えていたら描くことができたはずの"写実"にこだわっておられたとのこと。でも、非常なる努力の末に納得のいくものが描けた後は自由になって、《見る》ことから少し離れた絵を描くようになったそうです。
これは私もよくわかります。たとえば、肉眼でもプラネタリウムでも、私の眼に星は一切見えないけれど、昔見た星のイメージと、ゴッホ『星月夜』やサン=テグジュペリ『星の王子さま』、いろんな詩に描かれた星のイメージが合体して、非-写実の星のほうがよりリアルになってくる、といった具合です。今となっては、ボードレールが書き留めた星、原民喜さんが見上げた夜空の方が、よりはっきりと《視える》のですから。これは、感受性の話であるよりも前に、純然たる情報量の話です。
私の眼の病気は進行性なので、いつか絵を見ることができなくなるかもしれないけれど、音声図書を通じて、現実問題として手軽に、日々、iPadで本を聴くことはできます。失くしたものを、取り戻す…というより別の豊かさで新たに与えてくれるのは、詩人たちなのです。私が《ことば》を愛さずにいられないのは、こういった背景もあると思っています。
このように、見えにくくなって得たものはたくさんあります。それはダイレクトに《個性》になる性質の(いわばフィクションの)ものなので、いったんリアリズムさえ手放してしまえば、創作にはとても向いている。でも、それはやっぱり、個々人の《絶望力》(?)の限りに深く思い悩み、苦労した上で、なにかの代償として手にしたものだから、誰か個人を勇気づけることができればとてもうれしいけれど、メディアなどから《美談》《感動ネタ》として"消費"してもらいたくはないのです。(←これは、是永さんではなく私個人の考えです。念のため。)
「やっぱり目が悪くなりたくはなかったですよねえ」「もちろんそうです」と頷き合ったのが正直なところです。
でもこれって、障害というほどではなくてもみなさんそれぞれの不得意、困難さというものはありますので、程度の差はあるけれど、本質的な違いはないわけです。私個人の狭い経験でも、目が悪くて困ること以上に大変なことは世の中にたくさんあります。それも含めて「みんな、生まれてきて、死んでいきますから」という、《いのち》シリーズをめぐる是永さんの言葉に収束してゆくのだろうと思います。
視覚障害者同士というのはおもしろい(?)もので、ふだん話す機会はそれほどないので、いざ出会うと共通項も多く印象深いのに、目が悪い&視覚に期待していないものだから、のちにどこかですれ違ってもお互い気づかないんです。そして、話している最中にも、お互いにそれを意識している。なんだか《多生の縁》っぽくて味わい深いなあと思います。一期一会感、なんですね。
🎨 展覧会より
写真だと、繊細な階調も柔らかさも消えてしまうので、お近くの方はぜひ実際にご覧になってみて下さい(^^)/
Instagramの猫の絵も、お茶目でかわいらしいです ·͜· ♡
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