原始、ロリィタはロリータであった。
ロリータの界隈では太古の昔から一つの血で血を洗う論争が繰り広げられている。
それは
「それってロリータじゃなくね?」論争である。
今では様々なロリータに寄った商品を作っているメゾンがターゲットになりつつあるのですが、実はこの論争の原点は実はMILKである。
MILKは1970年にデザイナーの大川ひとみ氏が設立されたメゾンです。
その最も偉大な功績は『ガーリー』という概念を日本で根付かせた事である。
少女的でありつつも決して幼くはなく、少女が持つその独特の雰囲気や妖しさ、ロマンティシズムとグロテスク、可愛さと残酷さ。それらを上手く掛け合わせた世界観で80年代に掛けて爆発的な人気を確立。
それに加えてMILKのその時代のアイドルの衣装として用いられた事もあり、その地位は今もなお絶大です。
そして、ロリータのカリスマと呼ばれている嶽本野ばら氏が熱狂的なMILK信者であり、処女作『ミシン』の中にもMILKを愛する登場人物を登場させた事により、ロリータの中ではMILKは特別な印象を植え付けました。
当時ロリータが一大ムーヴメントを起こす事になるなど誰も予期していなかった。
しかし、世の流れでロリータというものが一定のファッションジャンルとしての位置を確立してしまった事からMILKはロリータメゾンという認識が広まりつつありました。
そしてその事を危惧した大川ひとみ氏はロリータブランドと呼ばれる事を良くは思わなかったそうです。
その文化が根付く前からその精神でやって来たのに、後発の概念に飲み込まれるのを良しとしなかった。
ヴィジュアル系でいう所のかつてのL'Arc〜en〜Cielみたいなもんよ。
自らの矜持を似ているからと言ってそこに組み込まれる事は我慢ならなかったと推測されます。
商業的な意味では表面的同意又は曖昧にしておけば良かったんでしょうが、それをした所で結局長い目で見るとそこに所属しない方がいいと判断されたと思われます。
しかし、その結果として熱狂的なMILKの信者を今日まで生み出す事になっていると言うのですからまさにロリータに於けるL'Arc〜en〜Cielだと思っています。
↑バンギャの発想。
という訳で、MILKが「ロリータぢゃねーーーー!!!!」と発信した事によって、ロリータさんからは疑問が生まれます。
「果たしてどのメゾンがロリータ(ロリィタ)メゾンと呼んでいいのかしらん?」
という至極真っ当な流れを踏む訳です。
これもまた言及するには非常に面倒!!!!
何故なら『ロリータ』という文化に属する人種は何でもロリータにしてしまうのです!
基本的に何でも食べますし、何でも可愛くしてしまう。
アイテムもそうですし、文化や概念、はたまた宗教までもを巻き込む。
現在の分類を纏めてくれているものを発見しましたので引用させて頂きましたが、まぁ何なんだ?と。
グルメもここまで来ると悪食かと…
この瞬間にも新たなジャンルが増殖していて、流行病の速度で生まれてきます。
しかし、自分達は他の文化を取り込むのに、その逆として自らのジャンルに入ってこようとする者を大きく拒絶する特色があります。
ロリータにとってそのジャンルというものはある意味でのサンクチュアリなのです。
聖域を広げる事はあっても他者によって侵略される事は決して受け入れられない。
自分にとって益になるものは侵略してでも奪い、我が物とするがその逆は決して受け入れない。
だからこそのこれだけのジャンルに細分化されてしまう訳です。
このような状況であるからこそ、度々戦争が勃発する。
その中で最も大きい物であり、全ロリータを団結させる世界大戦が
BODY LINE大戦です。
これはもうブームとなった00年代から今もなお続く大戦です。
簡単に説明すると…
BODY LINEとは2003年に生まれたメゾンで、意外な事にその発祥は大阪アメリカ村だったそうです。
元々チャイナドレスを製造するメゾンとして誕生したものの、当時のロリータやパンクファッションのムーヴメントに乗ってそれらのテイストの洋服を製造、販売したそうです。
現在ではコスプレを念頭に置いた商品展開をしている事から、特に毎年のハロウィンでの仮装需要を満たす大きな役割を果たすまでになっています。
分かりやすく言うと、ドンキホーテで売っているコスプレ衣装のバリエーションが多いお店を想像していただけると宜しいかと。
であるから故に、BODY LINEの商品はその時の間に合わせ的なものが欲しいという方々の支持を得ている。
前述もしたが、昨今の日本のハロウィンを想像して頂けると良いかと思われます。
ハロウィンの夜、仮装をして友人と街に繰り出す事になったけどそんな洋服は持っていない。
仮に購入するにしても一夜の為にそういう洋服を購入するのも気が引けるし、その後も着る事はないし、どうにかならないだろうか?
そういう需要にピタリとハマるのがBODY LINEの商品であると言う訳です。
バリエーションも多い事から、ドンキで購入する人と被る事はないし気軽に試せる。
もしダメだったとしても金銭的ダメージは少なく諦めもつく。
という事から一定の売り上げを上げているメゾンであります。
加えてInstagramなどのSNSブームに於ける気軽なコスプレ需要にもマッチしている。
しかし、ロリータ愛好家からはそのジャンルを越えて毛嫌いされる傾向があります。
それはBODY LINEの商品がロリータの有名メゾンのデザインに酷似している事が大きい。
写真で比較するとまるで瓜二つという商品も多数である事から、多くのロリータからは「パクリだ!」と言われます。
この様なロリータさんの言い分も分からなくはないです。
自分が好きで追いかけているメゾンで、毎回新作が発表される度にドキドキしながら待ち、気に入ったものがあればそのサイズや丈感、時には自分が着て似合うかもそっちのけにして生産数が限られているが故の予約戦争に身を投じ、手に入れる苦労と喜びとその服に対する思い入れ…
ロリータにとってワードローブを手に入れると言う事は金銭的な問題以上に精神的なハードルが幾つも待ち構えるものなのです。
故にそれを手に入れた時の喜びは一入であり、思い入れも非常に大きいものがあります。
そういう思いをして手に入れたものの粗悪なコピー品が安価でその素晴らしさを分からない人間が気軽にその服を纏う事は自分が敬愛するメゾンへの侮辱であり、自分の尊厳を傷付けられたような心持ちになる事は想像に難くありません。
しかし、そんな批判はものともせずBODY LINEは市場で圧倒的な需要を誇っています。
そりゃそうです。ロリータの数より潜在的にコスプレやってみたい民の人口の方が遥かに大きい訳ですから。
幾ら気持ちの面でロリータが勝っていようとも数の論理では資本主義社会で強いのは後者です。
それにデザインに関してもファッションの業界ではその著作権を主張する事は極めて難しい。
分かりやすく言えばモノグラムです。
モノグラムと言われると多くの人はLOUIS VUITTONを想像されると思います。
しかし、モノグラムの発想の原点は日本に於ける家紋の発想であり、その国の文化に著作権を主張する事はできないということで認められていない。
故に、多くのメゾンがそのデザインを流用し何処のメゾンでもモノグラム柄を作っているというわけです。
モノグラム作るのにそのオリジナルに近いであろうLOUIS VUITTONに何処も使用料払ったりしてないでしょ?
という訳で、そのメゾンを代表するプリントのパターンでさえ認められないのに日本のトップでもないメゾンがその独自性を主張した所でそれが認められる事はほぼない。
Frank Mullerがフランク三浦に負けるのがファッションに於ける著作権の関係なのですから。
それが頭で理解していても、それを受け入れたくないという気持ちから多くのロリータはBODY LINEユーザーを毛嫌いするようになりました。
そもそもフィールドが違うのだから放置しておけばいいのですが、BODY LINEのユーザーがその背景を知らずにロリータに近付いてくる事があることから毎回SNSでは大戦が勃発してしまう訳です。
まーーーーーーーーーー面倒臭い!!!!!!
であるからして、私はこのような考えに至りました。
原始、ロリータは孤高であった。
真正の服好きであった。
今、ロリータは仲間である。
他に依って生き、他の意を汲み取る、病人のような蒼白い顔の者である。
現代のロリィタの為すことは未だ嘲りの笑みを馬鹿にするばかりである。
私はよく知っている、嘲りの笑みの下に気高き愛がある事を。
という表現が結構的を得てるのではないかと思うんです。
なんというか自分の好きなものを愛すればいいじゃない?
動機はその人の数だけあるし、その気持ちの大きさも人の数だけある。
しかし、ロリィタである以上お互いの関係性には常に敬意が伴わねばならない。
それは気の知れた友人の関係性では決してない。
同志ではあれど、そこに友愛という関係性は残念ながら発現し得ないのです。
何故なら友愛よりも大切なものが沢山あるから。
例え同志が病に臥せっていようと、大怪我を負おうと欲しい洋服の発売日には必ず駆け付け、それを手に入れた事を報告に病院に向かい、それをあたかも武勇伝の如く語る。
そしてそれを相手は病床の上で喜んで聞く。
それがロリータという種族の運命である。
だから、そこに友愛の情などは生まれない。
その関係性が友愛になってしまうことは尊い事であるが、その事は稀であり、そうなった二人は何を持ってしても引き裂かれることはない。
ロリータの心持ちは、その唯一の関係性を築く事のできる相手を見付け出したいが故の感情なのではないかと常々思っている訳である。
御拝読誠に感謝する。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?