『「線と言葉・楠本まきの仕事」展』

京都漫画ミュージアムで現在開催中の『線と言葉・楠本まきの仕事展』へ行ってきました。

画像1

この展覧会が開催されている京都ですが、緊急事態宣言下にあり当初は予定通り開催されるのかと心配しておりましたが、無事に開催され一安心。

この2ヶ月間で行こうと思っていた展覧会が軒並み会期を残しながらも中止されていた事もあって、即座に行っておこうと思って開催二日目にして行ってしまいました…

楠本まきさんに関しては以前もこのnoteに書きました。

1988年のデビューから、その作風は異端でありつつも耽美的でありました。

代表作、『KISSxxxx』の影響は非常に大きく、その世界観が特に90年代の化粧系、後にヴィジュアル系と呼ばれる事となるミュージシャンに大きな影響を与えました。

物語の表現方法も従来のドラマティックなお話とは違い、何気ない日常の中の出来事を描くという手法の第一人者でもあります。

次作、『Kの葬列』では、その登場人物や背景描写にゴシックな要素が色濃く、後の日本におけるゴシック文化の世界観を支える重大な要素にもなりました。

その後は漫画というジャンルにカテゴライズされながらも、詩的な表現とイラストで物語を展開させていくという表現をしていかれたりもしました。

この展覧会では代表作を主に展開されています。

生原稿をはじめ、作中に登場する小道具、当時の書店への予約表の草稿などが展示されています。

作中の衣装や道具の描写の細かさは当然の事、予約表の意匠にまでここまでこだわり抜いて制作されていた事には驚きました。

まるでアルフォンス・ミュシャの絵画を見ているような鮮やかさ。

色彩感覚も非常に優れておられるという事が分かりました。

作風はモノクロノームな印象が強いものの、そこへの差し色が抜群。

詩人、画家、グラフィックデザイナー…

その辺りの肩書を全て含めて漫画家と表現するのが適当なのでしょう。

そんな印象を持ちました。


そしてこの展覧会にはちょっとしたフォトスポットも用意されていました。

画像2

ちょっとピンボケしておりますが、『KISSxxxx』の主人公カノンこと加納亜樹良が所属するバンドDIE KÜSSEがライブをするライブハウスを模した階段を表現されていました。

そして、そのフライヤーの出来も非常に素晴らしい。

一枚一枚のデザインが物凄く洗練されていてこのフライヤーが欲しかった。

90年代のちょっと尖ったバンドが出ているライブハウスの雰囲気そのままでした。

画像4

画像5

画像6

画像7

そして、このフライヤー群の中には楠本まきさん作品だけではなく、上條淳士氏の作品、『TO-Y』に登場するGASPとPENICILLIN SHOCKのフライヤーも混ざっているという遊び心もありました。

また、これTUSKだろ?とか思う物もあって面白かったです。

90年代のライブハウスの空気をこうやって表現するというのは、本当に驚きましたね。

ちなみにこの京都国際マンガミュージアムは、小学校をリノベーションされている施設の為、壁と階段がまた古いライブハウスっぽいんですよね。


余り広いスペースでの展開ではなかったものの、非常に内容の濃いものでした。

楠本まきさんが作られた世界観の影響の大きさを改めて思い知らされました。

この人の文化的解釈が無ければ、自分が音楽を好きになった切っ掛けでもあるヴィジュアル系のブームも無かったんだろうと思いますし、ゴスもロリも違う物になっていたのではないかと思います。

改めて90年代の空気を味あわせて貰いました。

楠本まきさんの作品を知る方は是非行ってもらいたいと思います。

え?これ無料で見せて貰っていいの?

となるでしょう。

また、一階にも楠本まきさんの著作のコーナーが設置されています。

画像7

著作が一通り網羅されておりますので、読んだことのない作品も読み込めます。

もし、展覧会で気になる作品や未読の作品があるようでしたら、ここで作品を読んだ後にもう一度展覧会を見に行くという事も可能です。

物販も非常に充実しています

2021.06.11現在

展覧会記念グッズとして

『Kの葬列』ポストカード

展覧会のメインビジュアルポスター

版画2点

エッチング1点


著作として

楠本まき選集(Ⅳは欠品)

赤白つるばみ(上下裏)

ロンドンA-Z

楠本まき第一画集

が展開されております。

また、今回の展覧会に併せた関連書籍『線と言葉・楠本まきの仕事』の』予約販売もされております。

この書籍は、7/12までにミュージアムで予約すると特典としてDIE KÜSSEのフライヤー柄のポストカードが付いてくるそうです。

郵送、店頭受け取りが選べるようです。


展覧会詳細

『「線と言葉・楠本まきの仕事」展』

会場:京都国際マンガミュージアム

京都市営地下鉄東西線烏丸御池駅2番出口すぐ

休館日:毎週火曜、水曜(但し7/15-8/30は無休)

ここで少し情報を。

京都以外からお越しになられる方や、最寄駅まで市営地下鉄でお越しになられる方は、初乗り料金でも一日乗車券をお求めになることをお勧めいたします。

この一日乗車券の購入特典として、入場料が個人利用でも団体料金が適用されます。

初乗り料金往復だけでも少しお安くなるので、ついでにお目当ての場所がある方は一日乗車券をお買い求めになられた方がお得です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?