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脱ヴィジュアル系のパイオニアCRAZE

ヴィジュアル系(V系)には化粧系と呼ばれた時代を経て、ヴィジュアル系という言葉になった歴史があります。

LUNA SEAの『ROSIER』が発売され、この『ヴィジュアル系』という言葉が世間に定着し始める1994年、後に『元ヴィジュアル系』と呼ばれるようなバンドの元祖であり、非常に大きな影響を後世に残したバンドが結成されます。

それがCRAZEです。

CRAZEは当時BODYを解散した瀧川一郎と菊池哲(D’ERLANGER)を中心に、飯田清一(ZI:KILL)、藤崎賢一(JUSTY-NASTY)が結成したバンド。

このバンドを語るにはBODYというバンドを語らなくてはなりません。

BODYは1992年に結成されたが、何と表立った活動は1994年からで半年にも満たない期間で、武道館ライブを達成したという異色のスーパーバンドでした。

元々D’ERLANGERとして圧倒的な人気を誇っていた二人が組むというだけで大きな話題を集め、楽曲も瀧川一郎氏のメロディセンスが遺憾なく発揮された楽曲で、忽ち当時のキッズを夢中にさせました。

このヴィジュアルですよ?格好良すぎませんか?

当時、ビッグバンドであったX JAPANが海外進出を発表し、国内での表立った活動が停止している状況なのに加えて、盟友であったkyoさんが率いていたDIE IN CRIESも活動休止期間に入るという時期で、メジャーシーンにスーパーバンドというものが不在の状況でした。

そんな中、このスタイリッシュなルックスの大人気ギタリストが活動再開というのは、当時は大いに色めき立ったでしょう。

しかし、そんな周囲の期待とは裏腹にBODYは解散しました。

BODYの功績は瀧川一郎、菊池哲の両名がD’ERLANGERとはまた違うメロディアスなビートロックも出来る一面を見せた事は非常に大きく、このCRAZEの結成は非常に大きな話題となりました。

また、当時のバンドキッズから見ると夢のようなメンバー構成で、まさにスペシャルバンドと言うに相応しい編成でした。

そんなCRAZEとして最初にリリースされた楽曲が『NAKED BLUE』でした。

BODYよりもハードなのに、ポップなメロディは瀧川一郎の最新作として相応しいものでした。

まさにBODYのビートを更にハードに仕立て上げた瀧川一郎の作る音のここまでの大きな到達点と言ってもいい楽曲であると思います。

当時の世界的な動きと自分の感性を混合する感性は非常に素晴らしかった。

今聴いてもメチャクチャ格好良いなヲイ。

ここから非常にハードロックな展開をして行くのですが、それに応じてライブでのパフォーマンスも非常に激しいものになっていきます。

まるでNIRVANAを思わせるようなセットや機材の破壊を行ったり、客席へのダイブなどを敢行。

それに呼応する様にファンも前列に押し寄せるという非常に混沌とした空間を作り上げていきました。

このノリは、当時のファンには非常に刺激的なものだったと思われます。

これまでのメンバーが所属していたバンドとは明らかに違う激しく荒々しい一面は、既存のファンだけでなく、ハードロックのファンにも注目されました。

特に多くの男性ファンを獲得したのは想像に難くありません。

CRAZEは活動を加速させて行く上でファンもどんどん増えていきました。

しかし、順風満帆に見えた活動でしたが1997年の年末に、ヴォーカリストである藤崎賢一がバンドを脱退します。

ここから音が益々ハードロック寄りになっていく事から、恐らく当時の藤崎賢一氏の追求する音とは異なってきていたのでしょう。

バンドの顔であるヴォーカリストの脱退はバンドにとって大きな衝撃でした。

ここからCRAZEは何と解散する2005年迄の8年間に3回もヴォーカリストが交代するという未曾有の事態に襲われます。

音もロックの中でもハードコアの要素が強くなり、合う声というのが変化して行く事で理想的な声というものを求め続けたたいう事でしょう。

楽器の音は変えられても、人の声はそう簡単に変えられるものではないですからね。

そんな中で、CRAZEの最後のヴォーカリストの座に着いたのがTUSKでした。

最後のヴォーカリストが元ZI:KILLだったという事で何と、瀧川一郎氏を除く全員が元ZI:KILLという事態になったのは面白かったです。

Vo.がTUSKというのは当初のCRAZEの構想だったというのだから、念願の初期構想の実現だったという事なんでしょう。

しかし、このメンバーでの活動も長くは続かず、CRAZEは解散を迎えます。

原因はTUSKさんの脱退だった訳ですから、結局はヴォーカリストに悩んだバンドだったのだなと思います。

ただ、この最終形態である解散前メンバーのステージングはメチャクチャ格好良いです!

もうすっかり無骨なロックバンドの佇まい。

このCRAZEを見たファンはメンバーの前のバンドの映像見てびっくりしたんじゃないでしょうか?

その逆の衝撃も凄そうですけど。

そう考えるとCRAZEは脱ヴィジュアル系のパイオニアでもあると言えます。

ヴィジュアル系という文化が定着してしまった現代では、ヴィジュアル系バンドが解散した後もメンバーは新たなバンドはヴィジュアル系でまた始めるというのが多い。

それは、表現したい世界観がそこだという事もあるでしょうが、結局の所そのやり方をファンが求め、それに応じる事で順調なスタートを切ろうという打算が垣間見れます。

しかし、そのイメージを真っ向から打ち破っていったこのCRAZEという存在はとんでもないのだと今では思います。

だってモードなスーツから始まって最後にはTシャツとジーンズですからね。

これがバンドの音の変化を如実に表現しているし、突き詰めきっている姿勢も垣間見れます。

この姿勢に僕は現在のDIR EN GREYを重ね合わせました。

DIRの場合はどんどん自分達の表現したい世界観を具現化して行った結果とも言えますが。

めっちゃ格好いいので、知らない人は是非聴いてみてほしいです。

今のD’ERLANGERのCIPHERを知る人はまた驚くと思います。

そして、その時の曲をD’ERLANGERでカバーしても格好いいんだから、CIPHERさんという人の作る音のブレなさというのは凄い。

そして、そのCIPHERさんに復活から10年以上も文句を言わせないkyoさんというヴォーカリストの強さも凄い。

オマケCRAZE結成前のセッションバンドSPYの再演。

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