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1212オオサンショウウオ

焦らない 焦らない 焦らない もう 焦らない もう オオサンショウウオ
上條素山/2020年12月号『かりん』より

初読で爆笑してしまったし、今も笑ってる。

内訳は
焦らない(5)×4=20
もう(2)×2=4
オオサンショウウオ(7)×1=7
合計31文字

文字数的な勘が鈍いので、何文字かオーバーしてると思ってたのだけれど、3フレーズなのに文字数がピッタリで驚いた。

それに、途中が異なるだけで初句と結句は定形通り5と7なので、なんだかんだ始まり心地も終わり心地も良い。

もしこの歌が定型に則って

焦らない 焦らない もう 焦らない 焦らない もう オオサンショウウオ

だったら、こんなに面白がらなかっただろう。

“焦らない”と“もう”と“オオサンショウウオ”のみの構成に目が惹かれて読む。上の例のような形でも、凄いことやるな、と思って面白がっちゃうけど、確かに上條さんが提出した形式のほうが優れてると思う原因は、定型じゃないことに焦りを感じ取ることが出来るからだ(焦り要素1)。

焦り要素1
定型じゃない
焦り要素2
‪_人 人人人人人人人人人人 人_‬
‪> 突然のオオサンショウウオ <‬
‪ ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄‬

焦り要素2、突然のオオサンショウウオに我々は戸惑いを隠せなかった。

焦っていると動きまくったり奇声を上げたりみんなする(?)と思うのだけれど、その中の1つに“目に入ったものの名前を反射的に口に出す”がある。

私もよくドーパミン過多で多動してる時に突然「ア”ァ”ァ”ァ”ア”ァ”ネ”コ”チ”ャ”ン”」と叫ぶが、あくまでも目に入ったものの名前だ。

この主体は天然記念物を(おそらく)目にしてる。もし目に入ったオオサンショウウオがあるなら、どんなオオサンショウウオなのか写真がほしい。そしてどういう状況だったのか知りたい。

そしてここまで書いて気付いたぞ!
主体は焦っている状況でオオサンショウウオのストラップやら写真やらを目に入れて“もう オオサンショウウオ”と発したのではなく、オオサンショウウオが出現したから焦ってるのかも知れない!!!!!

確かに突然でかいぬぱぬぱが現れたら焦るな。なんとなく納得した。

オオサンショウウオを短歌にしようという発想も良いし、この短歌の空回り感も含めて好きだった。

またこんな短歌に出会いたい。