初恋という狂気の日々 第五十八章〜最終章

第五十八章 終わりの始まり

卒業式が終わり、数日が経過した頃合いだった。

春休みになってからは、私は毎日 一日中 絢辻さんとの会話を楽しんでいた。
会話の内容としては、中学生時代の思い出話や春休みにどこに行こうか といったものだ。

私はいつもこの時間が幸せで、いかに長く話せるかをひたすら考え、この会話が永遠に続いてほしいと願い続けていた。



しかしながら その夢は無惨にも散るのである








その日は卒業式から3日くらい経って、いつも通り LINEをしている時だった。
私は操作ミスで 絢辻さんとの会話内容のスクショを絢辻さん本人に誤送信してしまった。

 私は慌てて 取り消すが、絢辻さんは見逃さなかった 
絢辻さんがすかさず質問する 「ねぇ アンタ なんで私との会話をスクショしてるわけ?」

私は包み隠すコトなく答えた「それは……君との会話を後から見かえしてニヤニヤしたいから…
気持ち悪いのはわかってます 本当にごめんなさい」

 彼女の尋問は続く「それで?……アンタ 誰かにソレ見せたり 話したりしたことあるわけ?」

私は正直に話す「はい……信頼できる極一部に惚気話として……ごめんなさい」






それを聞くと彼女は一言 「人の会話を勝手に拡散するなんて人として最低ね」










そして絢辻さんは私をブロック 返信が返ってくることは無くなった。

私は一睡もできず 一晩を過ごすことになった。


最終章 初恋という狂気の日々

次の日 私は己の愚かさと、自分自身の性根腐り度合いを心の底から恨んだ。
もっとも 絢辻さんの主張は至極真っ当である。私はそんなこともわからず 今まで人と関わってきてしまったのか、と配慮の出来なさに絶望するしかない。

しかしながら 私は愚かにも ❝正式に謝罪をしていないので、最低でもお詫びの品と誠意を示す謝罪文を送るべきである❞ と勝手に考えてしまった。

私はお詫びの品を直ぐに用意し終えると、必死に頭の中で誠意を示す文を書き連ねた。
内容としては 「この度 私が貴女に対して、プライバシーへの配慮と思いやりの心の欠如により 貴女の心や精神 体調に対して深く傷をつけた件を心より深くお詫びいたします」 といった具合に記載した記憶がある。 ※実際にはもっと長文でわかりにくく拙い文

私は書き終えると、ポストに投函した。
正直に当時の内心を言うなら ❨こんな馬鹿みたいな文章で許してくれたらな………でも無理だよな ただ正式に謝罪は絶対しないといけないからな……❩ といった感じで実に身勝手極まりない考えだった。

 私はひたすら 申し訳ない気持ちと己の愚かさを恨むばかりの日々であった。

そうして数日が経ったある日のこと ポストに「ガシャン」と音がする



私はなんだろう と気になり中身を確認する。





 

中に入っていたのは、 私が先日送った
お詫びの品と謝罪文であった。

 その謝罪文の裏には 書き殴られた文字

「高校での活躍も期待してます」

と書かれていた。
私は悟った。 あぁ…終わった のだと

その瞬間 全てが無に感じる様になった。今まで全ての基軸がなくなり、何を目処に判断をすれば良いのか、何を基準に行動するべきか 全くわからない。
私は呆然と真顔で立ちすくみながら、涙を流し出す。もはや泣き声を出す気力すら無い。

私の頭の中で ❨全てが終わった。 生きる意味が無くなった。何の為にこれから生きるのか?❩ ずっと自問自答のループが始まる。

いつしか ❨全てが終わったのだから、生きる意味など全くない。そもそもこれから生きる必要が無い
いやむしろ彼女の為に消えるべきなのである。死を持って罪を償うのが、最後の務めであるのだ。そうすれば彼女は幸せになれる。 あの人の為に自害するなんて素晴らしい最期じゃないか❩ そんな考えに凝り固まっていった。

私は着々と準備をする

その間 友人からの誘いやLINEも ひいては人との関わり全てを拒絶する様な態度をしていたらしい

そして絢辻さん宛の遺書を用意し、明日辺りに……と思った矢先だった。

私の親が異変を察知したのか、急に様子を伺いはじめた。 私は最初 話すのを拒んでいたが、、、少し落ち着きを取り戻した後に 正直にこの数日の経緯を話した

私は正直に話したし 今度こそ実行するかと決意を新たにしたが、話を聞いた母からの衝撃的な発言でそれどころではなくなった

「良かったじゃない 縁が切れて」

私は思わず えっ? と放心状態 

母は淡々と持論を述べ始める。「いや 謝罪文をワザワザ返却するって相当 非常識な人だと思うけど……
確かに アンタは配慮もデリカシーもロクに無かったから、嫌われて仕方ない だけど 無視ではなくワザワザ送り返す辺り ❝最後にアンタを嫌な気持ちにさせて終わらせてやろう❞って意思が見え隠れしない?

私は反論する「それは……❝そこまで許せないレベルに来ていますよ❞って意思表示であって……大体 そこまで嫌われる様な行動をした自分が全てイケないわけだから、嫌がらせも何もないでしょ」

母は呆れだす「だから ソレをワザワザ意思表示してるっていうのは ワザと嫌だって伝えてるわけ
嫌なら無視をするのが大人の対応 そもそも本心から嫌いになった人は全部無視して速攻 処分するはず
その癖に❝高校での活躍も期待してます❞なんて思ってもいない文を添え付ける辺り 確信犯としか思えないけど………」

 私はカッとなり怒り口調で「いやそれは、彼女なりの優しさなんだよ 傷付けない様な配慮として…」

母は笑い出す「馬鹿だね 就職で不採用の時に人事が❝これからの御活躍も期待しております❞ってお祈りメールを送るのと同じ作業感覚だよ
大体アンタは嫌いな人間から年賀状が送られてきても送り返すって発想になるか?」

私は「ならないな……」と小さく呟く

母は勝ち誇った様に 「でしょ だから アンタは飼い犬としての役割が終わっただけ そもそも母親からしてみたら、❝あんな癖のある子を好きになるなんてやめてほしい❞って思っていたよ」

 私は唐突の暴露話に開いた口が塞がらない

母は続ける 「だってさぁ……あの子 心の底から仲良さげな同性の友達いなさそうじゃない…… 同性の友達がいない女子ってちょっとねぇ… だから逆を言えば、都合の良いアンタにしか相談したり八つ当たりが出来なかったんでしょ」

私は内心で❨たしかにあの人 女子同士で話す人は少数ながらいたけど、腹割って仲良しというよりは お互いに愛想が良いって感じで……悩み事とかを話してる感じはしなかったな…❩と納得してしまった。

母の絢辻さんに対する評価はまだ終わらない「だいたいね アンタが昔 毛嫌いしていた 温厚さんをアンタが実際に関わり出して、評価が一変して物凄く高評価になった途端 逆に彼女(絢辻さん)の温厚さんに対する評価が下がったことが物語っているでしょ」
私が不思議そうなリアクションを取ると
母は説明した「要するに 自分に対する忠誠心が揺らぐかもしれないから不安になっていたから、こっち側にいて欲しいってこと」

私は「そんな思惑はない」 と否定する

母のぶっちゃけは止まらない 「大体ね、アンタ
昔から美人ちゃんとか温厚さんとかと仲良いんだからさ、そっちの方を好きになりなさいよ。
あの二人なら可愛いし優しいんだから はっきり言って 最初 絢辻さんが好きって聞いた時 癖強いの選んでセンスがねぇとしか思わなかったし、嫌な予感がして予想通り的中 はっきり言って神格化して、崇拝して言いなりになる時点で狂ってるし、女を選ぶセンスが全く無い」

私はどうリアクションを取れば良いのかわからなかった。

絶望感に打ちひしがれていたと思ったら いきなり母から好きな人のネガキャンをされ 頭がパンク寸前になりそうだった。
私は もう全てを投げ出したくなり 五日間位ずっと部屋で寝込む様になった。

その間 ❨私が言えればあの人は喜ぶ………いやでも あの人に私は利用されていただけなのか?
いやそもそも 神の様な存在に利用されていたこと自体が幸せなのではないだろうか? しかしその利用価値すら無くなったというコトは生きるに値しないということではないか、、、やはり彼女の為に責任を取って消えるべきだから〜〜〜❩

こんな感じで ずっとぶつくさ独り言を呟きながら、頭の中で私は消えるべきなのであるという思考回路がずっと頭の中をグルグル駆け巡っていた。

 そうして私は いつしか
❝今までの絢辻さんとの楽しかった思い出は全て私自身が描いた妄想に過ぎなかったのか? 私にとって絢辻さんは『青春の幻影』だったのだろう……そもそも私はあの人を好きになる資格すら無かった。
だからこそ あの出来事があろうが無かろうが結果は変わらなかったはずだ……❞ と結論付ける様になった

それ以来 私は好きな人がいない

高校では好きな人はもちろん 気になる異性ですら皆無に等しくなり、今もそんな感じだ。

私はもう絢辻詞さんの様な人にしか 恋愛感情が沸かない様な価値観になってしまったのかもしれない

それはつまり 好きな人を崇拝し言いなりになる日常をまた繰り返したい 欲望の裏付けとも言える。

 なので 初恋という狂気の日々を また繰り返したいからこそ、未だに新しい好きな人が出来ず、ずっと引きずって拗らせてしまっているのだと思う。

 初恋という狂気の日々 完結


あとがき

 

いかがだったでしょうか?
まず最初に、私の下らない思い出話に付き合ってくださったことに感謝を申し上げます。
読み終えた方はコメントや感想等を送っていただけると嬉しいです

ちなみに絢辻さんとの関わりはコレ以降全く無い LINEはブロックをされているし、共通の友人(温厚さんや美人さんら)も皆 絢辻さんと全く関わりが無いと言っており、 現在どうしているかは全く知らないという。 ただ私が願うことは、絢辻詞さんが幸せでいて欲しいばかりだ。
 本音を言えば、また友人として関わりたい気持ちはある。だけどもその欲望は非現実的であるし、私にそんな資格が無いこともきちんと理解してる。 ただ もし今度会えるとしたら、きちんと面と向かって土下座をしたい。
改めて書いてみて、私みたいな凡人以下の人間が、成績はオール5で偏差値70以上の絢辻さんに対して恋愛感情を向ける心理自体が身の程知らずの愚か者であると再認識する。
私は夢か幻でも見ていたのだろうか、そもそも あそこまで仲良くなれた(※自分の思い込みかもしれない)時点で奇跡と言えるだろう。なので彼女には勝手に好きになって迷惑だったと思うので、そちらの面で申し訳ない気持ちもある。
罪悪感でいうと先程書いた通り、ちゃんと謝りたい気持ちはある。けれども 『謝罪をする』という行動自体が『自己満足』であり 彼女にとって何の為にもなっていない、、、自分の行動と言動に責任が取れないならば、そもそも黙って消えるべきである という考えも同時に思い浮かぶ時がある。
正直言って 中三が私にとって人生の全盛期であり、それ以降の日常は全てジリ貧の消化試合なのではないか、それならばいっそ ❝あの時 絢辻さんの為に消えておけば良かった…❞とは頻繁に考えてしまう
まぁ実際そんなコトになって欲しくないから、最低限の努力はするべきなんだろうけど……

まぁそんなこんなで書き終えるコトが出来て良かったです。

 要望があれば、高校生以降の後日談的な内容も書くかもしれません。


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