【不思議体験】お地蔵様と犬
ミナミは子供の頃に飼っていた犬のことをふと思い出す。
ある日急に行方不明になってしまい、悲しみに暮れる。
大切な思い出を胸に秘めて手紙を書いた。
実際にあった出来事に多少フェイクを入れて書いていく。
◆登場人物紹介◆
・ミナミ(仮名)・・・子供の頃から眼鏡をかけている近眼の女性。
性格はかなりの天然で気が小さいところがある。
・キタコ(仮名)・・・ミナミの母親。
ミナミと同じく近眼で眼鏡をかけている。
性格はおっちょこちょいでかなりの慌てもの。
・ソラ(仮名)・・・ミナミが信頼している霊感のある知人。
神出鬼没で謎が多い。
ミナミ「お母さん、子供の頃に飼っていた犬のことは覚えてる?」
キタコ「そんなの忘れたわよ」
ミナミ「雑種で白くてりりしい顔立ちだった気がするんだよね」
キタコ「そんな犬飼ってたかしら・・・(首を傾げる)」
ミナミ「え~と・・・確か・・・途中で行方不明になったって聞かされたんだけど・・・」
キタコ「・・・・・・・・・・」
ミナミ「思い出した?」
キタコ「・・・・・あぁ、あのコか」
キタコ「ある日急に居なくなった白い犬ね、思い出したわ」
ミナミ「ちょっとばかり記憶にもやがかかってる気がするんだけど、確かお地蔵さんの元に行っちゃったって言われた気がするんだ」
キタコ「何を言ってるの?そんなこと言った覚えないんだけど(笑」
ミナミ(あれは私が小学生の頃だった・・・)
・・・犬が居なくなった日に意識を集中させる。
ーミナミの小学生時代まで遡るー
ミナミ「お父さん!お母さん!わんちゃんが、わんちゃんが居ないけどどうしたの!?」
キタコ「あのコはね、もうここには居ないんだよ」
ミナミ「どうして!?」
父親「ミナミ、よく聞きなさい」
ミナミ「でも、でも・・・」
父親「あのコはお地蔵様が連れて行ったんだ」
ミナミ「え!?」
父親「先ほどお地蔵様があのコのことが欲しいと言ってきた」
父親「だから、お地蔵様にお譲りしたんだ」
ミナミ「どうして・・・・・」
父親「お地蔵様のお願いを無視するわけにはいかないんだ」
ミナミ「だって・・・うちのわんちゃんだよ!」
父親「仕方なかったんだよ、お地蔵様相手では従うしかないんだよ」
ミナミ「ううう~・・・(泣」
キタコ「ミナミ、わんちゃんのことを思うんだったら、お手紙を書いてみてはどうかな?」
ミナミ「おてがみ?」
キタコ「そう、お地蔵様にわんちゃんのことよろしくお願いしますって手紙に書いて渡すんだよ」
ミナミ「どうやって渡すの?」
キタコ「お手紙書いたら私のところに持ってきてね」
ミナミ「・・・・・うん」
・・・震える手でキタコから便箋と封筒を受け取り、鉛筆を手に取ると自分の気持ちとお地蔵様へのお願い事を書いていった。
おじぞうさまへ
うちのわんちゃんをどうかよろしくおねがいします。
とてもいいこです。
しろくてかわいくてみんなにあいされてます。
これからはおじぞうさまのもとでしあわせにくらしていくことをねがっています。
ですから、だいじにしてあげてください。
みなみ
キタコは手紙を受け取ると鞄の中にしまった。
ミナミ「お母さん、お地蔵様にちゃんと渡してね」
キタコ「わかったよ」
父親「・・・・・・」
それからしばらく経ち、ミナミは小学校の同級生からある衝撃的な話を聞かされてしまう。
同級生A「ミナミさぁ、お前本気でお地蔵さんが犬を連れて行ったと思ってるのか?」
ミナミ「お父さんもお母さんも本当だって言ってたんだよ!」
ミナミ「嘘なんてついてないよ!」
同級生A「ありえね~馬鹿じゃないの(爆笑」
ミナミ「なんで笑うんだよ!(怒」
同級生A「うちの母ちゃんが言ってたんだけどさ~、お前んとこのあの犬は近所の子供に噛みついたから保健所行きになったんだよ」
ミナミ「違うもん!」
同級生A「嘘だと思うなら、家に帰ったら親に聞いてみろよ(笑」
ミナミ「A君なんて嫌いだよ!」
・・・ミナミは帰宅後すぐに両親に同級生から聞かされた話のことを伝える。
すると、父親は少し難しい顔をしながらぽつぽつと語り出した。
父親「実はな、お地蔵様が連れて行ったというのは嘘だった」
ミナミ「え・・・」
父親「だが、保健所に連れて行ったわけじゃない」
ミナミ「よ よかった・・・」
キタコ「近所の子に噛みついた後にご両親が文句を言いに来たのよ」
父親「子供に噛みつくような犬なんて危ないし野蛮だ、何とかしろ、と言われてしまった」
父親「怪我人が出てしまった以上は放っておくわけにもいかないからな」
キタコ「子供の安全と噛まれた子のご両親の気持ちを考えてね、いつ保健所に連れて行こうかお父さんと相談していたのよ」
父親「お兄ちゃんが最後に散歩させると言い出したから、散歩に行かせたんだが・・・散歩の途中で急に走り出して行方知れずとなった」
キタコ「もしかしたらお兄ちゃんが犬を守るためにわざと首輪を外した可能性はあるかもしれない」
父親「だが、それを証明するものは何もない」
父親「だから、犬を可愛がっていたお前を悲しませないために、お地蔵様が連れて行ったことにしたんだ」
ミナミ「そうだったんだ、保健所に連れて行かれなくてよかったよ」
キタコ「でもね、どこに逃げていったのか分からないままなのよ」
父親「動物の本能でどこかに連れて行かれると察知したのかもしれないな」
ミナミ「今頃どこで何をしているのかなぁ・・・」
父親「それは誰にも分からない、お地蔵様なら分かるかもしれないな・・・」
・・・ミナミはもう一度お地蔵様宛に手紙を書いた。
犬が無事でありますようにという願いを文字に込めて。
今度は直接お地蔵様のところへ行って手紙をお供えした。
・・・元の時間軸に戻る。
キタコ「あ~そういえば、手紙書いてたわね」
ミナミ「結局は最初に渡した手紙はどうしたの?」
キタコ「覚えてない」
ミナミ「やっぱり」
ミナミ「普通に考えたらそのうちポイしちゃうよね」
キタコ「どうしたのかまったく思い出せないのよね・・・」
・・・数日後。
ミナミ「・・・ということがあって、お地蔵様への手紙がどこに行ったのか分からないままなんですよ」
ソラ「ミナミさんの思いはちゃんと届いてるよ」
ミナミ「犬はどこかで誰かに保護されて飼われたんでしょうか?」
ソラ「そうだね・・・」
ミナミ「でも、どうして近所の子に噛みついちゃったんでしょうか」
ソラ「お腹が空いていたり、機嫌が悪い時もある」
ソラ「そういう時にちょっかいをかければ思わぬ反撃に遭うことはある」
ソラ「だから、動物と接する時には慎重にしなければならない」
ミナミ「そうですね・・・、噛みつかれた子はたまたまタイミングが悪かったのかもしれませんね」
ソラ「うん」
ミナミ「ソラさん、いつも話を聞いてくれてありがとう」
ソラ「いつでも聞くからね」
ミナミ「ありがとう」
・・・ミナミは過去の犬の話を聞いて貰って満足し、ソラと別れた。
ソラ「・・・・・」
ソラ「う~ん・・・」
・・・どうやら、ソラには何か視えたようだが、ミナミには言えなかったようだった。
ソラ(噛まれた子・・・その子の言動にも少し問題があった)
ソラ(わんちゃんはとても大人しい犬だったのに)
ソラ(大人しいのをいい事にちょっかいをかけすぎた)
ソラ(近くに居た他の人達が止めても言う事を聞かずに調子に乗りすぎたことが原因で)
ソラ(わんちゃんを怒らせてしまった)
ソラ(噛まれた原因はそこにある)
ソラ(人間だからと調子に乗ってはいけない)
ソラ(動物も人間と同じく命ある存在)
ソラ(動物は人間を癒すために生まれてきたから、大切にしないといけないのだから・・・)
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