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路上生活とは何か?

はじめに -新型コロナウイルスが雇用に与えた影響-

新型コロナウイルスが流行し、感染拡大を防ぐために人的交流の制限が起きました。2020年に全国で休廃業・解散した企業は49,698件(前年比14.6%増)であり、2000年の調査開始以降最多を記録しています1)。

その結果、多くの人々の雇用に影響を及ぼすこととなりました。特に、若年者やシングルマザー(ファザー)などを中心とした非正規雇用で働いていた方々の雇用が失われました。そのため、多くの生活困窮者が増加する結果となりました。

雇用を失った人々の中には、生活再建の目処が立たない人もいます。そのため、賃貸物件を解約し、路上生活を送らざるを得ない人が続出しました。

今回は、"路上生活とは何か?"について考えていきたいと思います。

路上生活の定義 -国による定義の違い-

国によって路上生活の定義が異なります。アメリカの定義では、「路上生活をしているだけでなく、特定の家を所有せず、避難所や宿泊所にいる人」を指しています。日本の定義では、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」とされています2)。このように日本の路上生活の定義では外で居住している人のみを対象としています。

実際に公園、高速道路の高架、橋の下など様々な場所で過ごしている方がいます。

しかし、現代はインターネットカフェ(ネットカフェ難民)やファミリーレストランで寝泊りしている人達の多いです。そのため、彼らの生活形態も路上生活の一種ではないかと考えています。

路上生活者数の推移

厚生労働省は2003年より、「ホームレスの実態に関する全国調査」を開始し、目視調査により路上生活者数の調査を開始しました。同調査によると、徐々に路上生活者数は減少しています3)。

路上生活者が減少した理由としては、様々な自立支援プログラムの影響が強いと考えられます。

図1.全国のホームレス人数推移

都道府県別にみると、東京都23区800人、大阪市905人、横浜市305人で前路上生活者の半数を占めています3)。このことから、大都市圏で生活する路上生活者が多いということが分かります。

図2. R3 全国のホームレス分布状況


しかしながら、同調査はある一時点の調査であり、例えば昼に日雇いの仕事に行って、夜帰ってくる人などの数が含まれていない可能性があります。そのため、調査から漏れている人がいるということを忘れてはなりません。

また、ネットカフェ難民なども本調査の対象から外れていることも課題です。

路上生活者の特徴

性別

性別でみると、男性が9割以上を占めています(図3)3)。女性の路上生活者が少ないのは支援策に男女差があり、都道府県に設置されている婦人保護施設やシェルターに入っているためだと考えられます。

図3.H28 路上生活者の性別割合

年齢

年齢別でみると、60歳以上の方が半数以上を占めています(図4)3)。路上生活の長期化により、かつて若者であった方々が高齢化したためであると考えられます(図5)。

実際、現場で路上生活者支援をしていると、多くの方が高齢者であると感じます。このことから、路上生活と高齢化の間に関係あることが示唆されます。

図4.H28 路上生活者の年齢分布
図5. H28 今回の路上生活の期間

まとめ

統計データをみると路上生活者数は減少しています。そのことは、単純に良いことだと捉えることができます。

しかし、日本においては路上生活の定義により、路上生活と見なされていない人々の存在を忘れてはいけません

次回は、路上生活に至る理由や要因について考えていきたいと思います。

参考文献

1)東京商工リサーチ.2020年休廃業・解散企業動向調査.https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210118_01.html

2)厚生労働省.ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法https://www.mhlw.go.jp/content/000485228.pdf

3)厚生労働省.ホームレスの実態に関する全国調査.https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12003000-Shakaiengokyoku-Shakai-Chiikifukushika/02_homeless28_kekkasyousai.pdf





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