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#106 「わたしはゴールを決められるのは嫌いだが、わたしのキャリアの中で相手に決められてうれしかったのは今日が初めてだ。」by Alberto Zaccheroni

今年は東日本大震災からちょうど10年。


メディアでは特集が組まれ、被災者の方々はそれぞれの想いを胸抱き、一方で被災を免れた人々もそれぞれに思いを馳せ……10年目の3月11日は過ぎましたが、今年はまだそれらを胸に抱く機会は多いと思います。


以前にも一度noteに書いたネタではあるんですが、この機会なので改めて書かせてください。


今日は2021年3月29日。

時は遡り2011年3月29日。

大阪長居スタジアムにてアルベルト・ザッケローニ監督率いる、アジアカップ2011を制したばかりの日本代表がベガルタ仙台をモチーフにしたユニフォームを着用するJリーグ選抜TEAM AS ONEとの東日本大震災復興支援試合に挑みました。

元々はこの日、ニュージーランドと東京の国立競技場で試合の予定だったはずなんですよ。
でもあの時の日本は海外から見れば原発問題とかの不安はあったでしょうし、そもそも東京も東北ほどではなくとも被災地域の一つで、インフラ状況に大きな影響が出ていました。そして東日本大震災の少し前にニュージーランドにも大地震が来ていて、ニュージーランド自体がそれどころじゃなかった。その結果この試合が中止になり、代わりに同じ日にインフラなどの問題がない関西での試合になったんです。

2〜3日前?くらいのキンチョウスタジアム(現:ヨドコウ桜スタジアム)で行われた公開練習にはサッカー部の同級生と部活終わりにダッシュで準備して観に行ったのを今でも覚えています。


当時の私は中学1年が終わって、これから中学2年になろうという時。
多くの人間が心に残る試合ってあると思うんですよ。一番心に残る試合は何?って聞かれると、自分が応援しているガンバやサンガの試合など色々ある。でもあの日あの時、あのスタジアムの中にいた事をあれほど感謝した試合というのは他にないです。あんな試合はもう2度と見れないし、そもそも2度とあのような試合が行われる状況になって欲しくない。例えばガンバやサンガが優勝したら、それはもちろん私にとって特別な試合になりますが、この試合の特異だったところは「全ての人にとって特別な試合だった」と……。


要するに、見ている人にとってどっちが勝ったってよかったんですよ、あの試合って。サッカーのみならずスポーツは結果がモノを言う世界で、応援するチームがある人は特にその結果をめぐって一喜一憂する。チームは結果を求めて動き、ファンも結果を求めて90分を見届ける……スポーツは結果が第一にあって、結果の為に全てが動く訳です。
でもあの試合に限っては結果は飾りに過ぎませんでした。選手は当然勝つ為に試合をするとしても、少なくとも見る側にとっては。そういう前提があってこそのカズのゴールシーンな訳ですよ。


抜け出した三浦知良が追走する森脇良太を振り切り、GK東口順昭との1対1を制して冷静にシュートをゴールに流し込んだ時……スタジアムの360度ですよ、全員ですよ。全員が立ち上がって歓声を上げたんです。どんなに小さな試合でも勝者と敗者が生まれるスポーツという世界の中で、多分あんな瞬間一生見れないですよ…。やっぱり……だからカズはキングカズなんだなと。

あの日あの時あの瞬間、長居スタジアムメインスタンドの端っこで、自分のいるサイドで踊るキングカズの姿は今でも頭の中に焼き付いています。思い出そうと思えば今でも映像としてもスローモーションとしても描き出せる…そんな瞬間に出会う事が人生で何度あるかと思うと、込み上げてくるものはやっぱり大きいし、そんな空間の一部に自分も…360度の一角を成せていた事は人生の財産です。


試合後にアルベルト・ザッケローニ監督が語った言葉……あれがあの試合の全てだったと思います。


わたしはゴールを決められるのは嫌いだが
わたしのキャリアの中で相手に決められてうれしかったのは今日が初めてだ

by アルベルト・ザッケローニ(元日本代表監督)





この試合のチケットを意地と根性で獲得してくれた母には本当に感謝しています。感謝しています………が、なんでこの日のデジカメのSDカード失くしちゃったの…!!


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