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練武知真 第12話『身の置き場所を変えることを学ぶ武術』

格闘において「歩法」すなわちフットワークが大切なことは誰もが知るところです。

自分の本体を安全な場所へ移動し、

自分に有利で、相手に不利な位置取りをすることは、

個人間の戦闘でも、集団間の戦闘でも勝敗を左右する重要な要素となります。

武術において、いつまでも同じポジションにいる事は、自らを危険にさらす事になるのです。

特定の場所に固執せず、状況に応じて、常に自分にとって有利な場所へと「身の置き場所」を変えることは、武術にとっては至極当然なことなのです。

 

それは社会生活においても、自分を守る為に必要な考え方であるような気がします。

 

例えば、仕事において。

勤めていた会社が自分にどうしても合わない場合、

あるいは

社内の状況が変化して、自分に合わなくなってしまった場合を考えてみて下さい。

 

逆境に耐え、ある程度頑張ってみるのも大切です。

それによって自分が成長する良い機会になるかも知れません。

また頑張っているうちに社内の環境が変わるかも知れません。

 

ちょっと合わなくなったからといって、すぐに辞めていては、いつまで経っても安定した仕事に就くことはできません。

自分の希望を完全に叶えてくれる仕事というのは、現実社会ではほとんど皆無です。

 

しかし・・・しかしです。

自分の心身に深刻なダメージが生じるような環境からは「移動する」というのも、重要な選択肢の一つなのです。

もし移動せず、心身を壊してしまっても、会社は何のフォローもしてくれません。

制度的に少しは補償があったとしても、

その先も生きていかなければならない自分の人生を終生に渡って面倒をみてくれる訳はないのです。

 

会社を辞めた後も、生きるために仕事をしなければなりませんが、心身を壊してしまったら、それもままならなくなります。

自分の今後の人生を考えてみても、決して心身を深く病んでしまってはいけないのです。

 

また老後や将来への不安もあるでしょうが、今現在の時間も、自分の大切な人生の時間です。

老後への備えは必要ですが、若くて、健康で、活力ある『今』の自分だからこそできる事もたくさんあると私は思っています。

それらは老後に回収できるとは限らないのです。

 

その為にも、

「自身が精神的にも肉体的にも健康でいられる状況」

というものを大切に考えなくてはなりません。

 

ある程度の忍耐をもって取り組みながらも、

自分の心身が危機に陥るラインを冷静に見極め、

そのラインを越えそうなら、その環境から離れる。

身の置き所を変える。

 

それは「自分を危機から守る」という意味において武術と共通することです。

 

自分にとって危険なまでに不利な場には執着せず、

新しい場で利を求める。

 

その決断をすることもまた、武術と日常の双方において重要なことです。

自分が生きる為に。

 

 

2024年5月1日 小幡 良祐

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