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財布を忘れた瞬間に存在の証明が出来なくなる恐怖

私は財布をしょっちゅう忘れる。
財布だけをしょっちゅう忘れる。

よく家に忘れるから、ずっと身に付けたくなるお気に入りの財布を手に入れようと、誕生日に欲しかった財布を親から貰ったのに、その財布を家に忘れる。

出かけた先で物を無くすということはほとんどないが、出かけてから家に物を忘れるということが多い。

その中でも財布だけを忘れる理由は、その使用頻度の少なさにある。

時代はキャッシュレス。
大学生になり、クレジットカードを作ってからというもの、あらゆる決済をスマホ1つで済ませているのだ。

だから家にスマホを忘れることは無い。
通学定期も、お金も、連絡手段も、全てその箱にあるのだから。

そのため私は財布を使う機会が無い。
家を出る時一応ポケットに財布を入れるけど、それをポケットから取り出した試しがない。そう思ってるから忘れる。

そのせいか、人生で何度か訪れる身分証の提示で詰むことがある。

「身分証の提示を…」と店員さんに言われるその瞬間に初めて、(あ、俺今日財布持ってねぇ、、、)と気づくことがある。



そんな私は今日も財布を忘れた。

大学へ向かう電車の中で見ていた映画の、主人公が財布の入ったカバンをひったくられて悔しがっているシーンのおかげで、私も財布を持ってないことに気づいた。

今日は大学で書類を受け取る必要があったため、学生証を持っていなければならないのだった。
学生証はもちろん家の財布の中にある。

やっべーー、、わすれたーー。

今から家に帰ることなんてできず、授業をサボることも出来ない。

あるわけが無いと分かっていながらも私は、現実から逃れるように、前に背負っているカバンをパカパカ開けては財布を探していた。あるはずがなかった。

大学について友人に「あれって受け取るの学生証いる!?」と聞いたところ「最悪なくてもいける」と言っていたため、結局この一件はただの杞憂に終わった。



この一件が落ち着いた頃にふと、財布を忘れることのリスクはお金が払えないことじゃなくて、自分の存在が証明できなくなることなんだなと思った。

その日財布を忘れた私はまさに自分を証明する術がなかった。

カバンの中にはパソコンとiPadがあり、手元にはスマホ。
こんなにもハイテクな道具に囲まれているのに、自分の所在はおろか、年齢すら確定させてくれるものが無いと気づいた。

やべーーって思った。
こえーーって思った。

ほんとにただそれだけだった。



ちなみに今持ってる身分証は、免許証、マイナンバーカード、学生証、保険証くらいだから、それぞれを色んなカバンに詰め込んだりしようかなとか思ったり思わなかったり。

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