さよならPKサンダー
小学校4、5年生だっただろうか。
その時の私たちは、大きめの公園の近くにあるK君の家に集まって遊ぶのがやや習慣化されていた。
男子6人とか7人とかがK君の家に集まって、ある人はDSを、ある人はWiiを、またある人はパソコンでHIKAKINの青鬼実況を見て時間を潰し、飽きたらみんなで公園に行きサッカーをする。
ギャングエイジ真っ只中の私たちにとって、当時12巻くらいまで発売されていた進撃の巨人や、ありとあらゆるゲームが置いてあるK君の家はまさに聖域だった。
そのK君の家に初めて遊びに行ったある日、私は1本のゲームと出会ってしまった。
それが『大乱闘スマッシュブラザーズ X』である。
これまでWiiを持っていなかった私は、友人の家で遊ぶにしても『みんなのリズム天国』や『マリオカート』『Newスーパーマリオブラザーズ』その他『Wiiパーティ』や『Wiiスポーツ』等のMiiが登場するゲームしか遊んだことがなかった。
先に居た友人たちがスマブラで遊んでいる様子を見て真っ先に(楽しそう!)と思ったが、それと同時に(操作難しそう!!)と思った。
今まで私が遊んでいたWiiのソフトはどれもリモコンを振るだけとかボタンをリズム良く押すだけで完結していたのに対して、スマブラはWiiリモコンを横に持って手元をカチャカチャして操作している。いかにも難しそうだ。
でも、、、やってみたい!!
私はK君に「これやった事ないけど、やってみたい!」と素直に気持ちを打ち明け、次のゲームをやらせてもらうことになった。
いよいよリモコンを握る。
キャラ選択画面だ。
初めて選んだキャラはピットだった。先程見た試合で、空を飛び続けるピットの姿を見て、(無敵じゃん!)と思ったからだった。
いよいよ初陣。操作方法も分からない中、いきなり四人対戦にぶち込まれた。
操作を教えて貰いながらも、皆は私を攻撃する手を止めない。
とりあえず①ボタンと十字ボタンのどれかで必殺技を使い分けられるということだけを理解した私は、ひたすら①+上で空を飛び続けていた。
①+上必殺技は、どのキャラクターも高くジャンプしたり空を飛んだりする技で、特に場外に出た時の復帰に使うことが多い技だ。
この時のピットの①+上は青い光をまといながら長時間空を飛び続けるというもので、攻撃こそできないものの、マリオやクッパなどのただの高いジャンプ攻撃に比べたら、恐ろしいほどの復帰力を誇る技だった。
しかし空をフワフワ飛び続けていた俺を、クラスメイトのTは執拗に狙ってきた。
Tはその時ネスを使っていた。
Tはふざけながら「PKサンダー!!PKサンダー!!」と、中途半端に発音が良い風に叫びながら、空中にいる私(ピット)にPKサンダーをぶつけてきた。
地面に落ちた私にすかさずTは「PKファイヤー!!」と叫び、焼かれ飛ばされ呆気なくリタイア。
なんだよあの技、なんで俺の事追っかけてくるんだよ。と、その時私はPKサンダーを忌み嫌った。
しかしTともう一人が残ったという場面で、私はPKサンダーの可能性に魅了された。
場外に飛ばされたネスは、ふわりと1度ジャンプをして復帰を試みる。それでも崖までは届かず、このままだと落ちて負けてしまう、、、。
そんな時、Tはニヤリと「PKサンダー!」と言って、自分自身にPKサンダーをぶつけたのだ!!!
スマブラをやったことがある方なら分かるように、PKサンダーはネスの上必殺技であり、相手にサンダーをぶつけられる他、自分にサンダーをぶつけることで復帰技としても使えるのだ。
こっ、、、この技!!!
楽しそう!!!
というわけで、2試合目は私もネスを使った。
俺もPKサンダーぶっぱなして勝つぞー!と、スタート画面まではウキウキだった。
(ちなみにこの時の私は通常技よりも必殺技の方が強いと思ってたから②は押さないとか、そもそもスマッシュ攻撃のやり方とか、シールドの張り方、緊急回避のやり方も知らず、ただ必殺技だけで戦っていた。)
いきなりの接戦。接戦?
私は終点の端を陣取り、ステージ内側に向かってPKファイヤー(①+横)をひたすら連打していた。PKフラッシュ(①のみ)はなんか着弾まで時間かかるし、下必殺技はよく分からんバリアみたいな技だから使わなかった。
案の定そんな私が最後まで残るはずもなく、いきなり狙われては簡単に場外に飛ばされてしまった。
しかし私は慌てない。なぜなら、PKサンダーで簡単に復帰できるから!!
私はフンと鼻を鳴らし、どれどれ、、、お手並み拝見といこうか、、、と①+上を押した。
画面内でネスが「PKサンダー!!」と言い放つと、打ち上げ花火のようなサンダーが真上にチロチロチロと打ち上げられ、何事も無かったかのようにネスは真顔で落ちていった。
、、、はぇ?
私は目を疑った。
あれ?さっきのウニウニ動くサンダーは!?
なんで真上に登っただけなん!?
へっ!?!?
私はまたも最初にリタイアした。
後で知ったのだが、このPKサンダーは、①+上を押した後に、十字ボタンでサンダーを自分でウニウニ動かす必要があったのだ。
だから自分に当てて復帰をしたければ、PKサンダーを放った後に、十字ボタンを円を描くようにぐるっと回す必要があったのだ。
当時の私はそれを知らず、ましてや1戦目のピットの無限浮遊があったから、上必殺技でも空飛ばないことあるんだー、、、と無の心で続きの画面を眺めていた。
そういえばTはリモコン縦持ちでヌンチャクもつけてたな。
さぞかしサンダーを動かしやすかっただろうなぁ!!!
あのころのネス、ごめんよ。
こうして人は成長するんだなと思った。
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