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人生という味のエスプレッソ

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30年前のちょうど今くらいの季節だろうか...
イギリスのケンブリッジはまだ凍えるほど寒く、厚手のジャケットのジッパーを首まであげ、17歳の僕は28歳のイタリア人のサンドロが運転するバイクの背中に乗っていた。

サンドロ: "Get in my back brother" (兄弟、後ろにのりな)
Ken:"Where are we going?"(どこにいくの?)
サンドロ:"Don't worry you will be fine"(大丈夫だから気にするな)

そして10分くらいだろうか着いたのはイタリアンバーだった。
店に着くなりカウンターで彼はバーテンダーとイタリア語で親しげに話しながらこう言った。

サンドロ:"Due espresso"(エスプレッソ2つ)

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イタリアンバーで友人のサンドロがエスプレッソを2つ頼むところから遡ること2時間、僕は1ヶ月くらい想いを寄せていた21歳のイタリア人女性アレッサンドラが、たった1週間前に転入してきた19歳のドイツ人クリスチャンと口づけを交わすところを目撃してショックを受けていた。

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たった173cm程度の17歳の日本人の体系と190以上はありそうなドイツ人では大人と子供ぐらいの差があるわけで、かなりショックを受けて教室で撃沈していたのだが、それを見かねたもっと大人の28歳のサンドロが気を利かせて外に連れ出してくれたという訳だ。

サンドロ:"Due espresso"(エスプレッソ2つ)
サンドロ:"Ecco brother"(ほらよ兄弟)
Ken:"Grazie Sandro!"(ありがとサンドロ)

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目の前に出された小さなエスプレッソのカップをそのまま飲み干そうと手に取ったらサンドロが止めながらこう言った。

サンドロ:"Non Non brother"
Ken:???
サンドロ:"Put in the sugar"(お砂糖を入れるんだ)
Ken:"Like this?"(こんな感じ?)
と言いながらティースプーン1杯を入れると...
サンドロ:"More!"(もっとだ!)
Ken:!?
ティースプーン1杯を追加..
サンドロ:"More brother!"(もっとだよ兄弟)
と言った後に続けてこう言った。
サンドロ:"In Italy we say life is bitter like espresso. It's like you today brother. So you put a lot of sugar in your espresso and drink up so you can have a good day today!"

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つまりこう言う事だ。
「イタリアでは人生はエスプレッソの如く苦いって言うんだ。今日の兄弟はまさにそういう感じだよ。だからエスプレッソに沢山のお砂糖をいれてそれを飲み干すのさ。そうすりゃ今日は良い一日にできるから!」

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あれから30年彼との再会は果たせて居ないが、2012年にFacebookで繋がることができた。彼は今はイタリアでワインバーを経営しているそうだ。
いつか機会があったら彼のワインバーにいってこう言いたい。

"Due espresso anche molti zuccheri per favore!" (エスプレッソ2つと沢山の砂糖も一緒にお願いします!)



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