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Monet150

今年は印象派の誕生から150年の節目の年。ということでモネだけで構成された展示を見られる『連作の情景』に二月半ば、再び中之島美術館へと足を運んだ。

スイレンで有名だが、フランスの画家クロード・モネは印象派を代表する光と色彩の巨匠である。

若きモネはクールベやバルビゾン派という写実主義から強い影響を受け画家として歩み始めた。しかし自然に魅了されていた彼は光の移ろいや色彩がどう見えるかを捉えるには写実主義では限界があると気付く。

そこで絵の具を混色せず純粋な色で描くことでスナップショット写真のような生き生きとした画を描こうと試みた。この時の友にルノワール、ピサロ、モリゾ、シスレーなどがいる。

しかしこの若き画家たちの試みた直接的で色彩豊かな描き方に衝撃を受けたフランスの公的美術機関はサロンでの入選を見送り続け、1874年に彼ら自身の展覧会を組織したことにより「印象派」と名付いた。

画を前にしてみると分かるが、まるで一枚の写真を眺めているようである。

そこにはフランスやオランダの光景がありありと広がっている。色づいた木々、波打つ水面、反射する光など、まるでレンズ越しに覗いたかのようだ。

しかしより細部に寄って拝見すれば、カンヴァスにはとめどなく様々な色が隣同士にひしめき合って並んでいることに気づく。私は何度もゲシュタルト崩壊を起こした。見ている者の認識を促すという表現法を目の当たりにし、人体の不思議を思った。

連作にあたって、モネはエドワード・マイブリッジの3年に渡る10万点の写真を以ての運動の研究をヒントにしたのではないかと図録に記されていた。確かに、人がコマ撮りされた写真を沢山並べていくと一つの運動がそこに表現される。

モネはジヴェルニーの積みわらをモティーフに異なる天候や時間、それによる光の具合などを何枚も描いた。個人的には大きな積みわらを背に二人の人物(おそらく妻と息子)が隣り合わせに腰掛けているシーンを描いたものが好きだ。

ジヴェルニーという土地はモネの着想源となった。高額な値段で画が売れるようになり、それなりに贅沢も楽しんだモネは自宅に構えた池に蓮を植え、それを後半生にわたり描いた。視力の衰えと共に対象の輪郭が曖昧になるが、それはまた光や色を強調して写した。

モネは睡蓮のみならず柳や藤、薔薇なども描いている。花に集中したもの、夕刻や朝日を想像させるもの、葉や花が緑や紫をもってどこか妖しく艶めいて描かれたものなど同じ睡蓮でも様々だ。とりわけ沢山の緑を使って描かれた一枚に私は魅了された。絵もさることながら額縁も立派で、モネの絵にこの額を当てる…という作業はやはり大変なものだろうと想像し対応されたどなたかを思い、心で平伏した。

図録や栞、ポストカードなどを購入して美術館を出た後も、心躍り浮足立ったままだった。近くのカフェで鎮まろうと並んだのだが、あの近辺の洒落た喫茶店は常に先客で溢れかえっており、どこかいいところはないものか…と足を運ぶたびに別の珈琲屋を探している自分がいる。



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