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角谷リョウx宮木俊明「快眠が生み出すイノベーションーアンラーンから始まる『変化の自分ごと化』」(5)

角谷リョウx宮木俊明「快眠が生み出すイノベーションーアンラーンから始まる『変化の自分ごと化』」(4)の続きです



環境整備で睡眠力を補う

角谷 ステップ①の話をします。睡眠環境は、とくに歳いった人には意味あります。僕、前の本でも書いたんですけど、スタンフォードの睡眠研究所をつくったデメント博士っていう世界でいちばん有名な、すごい博士がいるんです。

そのデメント博士がある高級寝具メーカーに依頼されて、高級な寝具とふつうの寝具の比較実験をやったんです。そのふたつに加えて、コンクリートの床でも被験者を寝かせました。

そしたら、なんと結果はみっつとも同じ。博士はそれを発表したんですけど、あとから怒られたって本に書いてます。(当たり前ですよね。)
そして、後日、実験は間違いだったと訂正しました。実験を二〇代の人でやってしまったから。二〇代の人って、どこで寝ても、睡眠環境悪くても、深い睡眠がとれちゃったりするんですよ。リズム障害で夜型にはなるけど、睡眠の質を改善するっていう点では、寝具を変えても効果ないんですよ。

だけど、四〇代、五〇代ぐらいの、身体の柔軟性がなくなった人は、睡眠環境を整えることでぜんぜん変わってきます。

宮木 子どもも、本当にどこでも寝ますからね。若いうちは寝る能力が高いってことなんですね。

角谷 やっぱり身体のクッション能力だと思うんすよ。それと、やっぱり日中いろんなことにチャレンジしてるからもう本当に深い眠りが多いんです。だからどこで寝ても同じなんですよね。
だけど、年いくと、本当条件が揃わないといい睡眠がとれない。自分でいい環境をつくらないといけないんです。

本には、お手軽コース、本気コースのベストテンが書いてあるんですけど、今日はベスト3を紹介します。まずは光環境の改善です。

寝る一時間前に天井照明の明るさを落とす。お手軽な間接照明を購入する。蛍光灯を白色灯から暖色系に変える。
僕がめちゃめちゃおすすめしてるのが、調光調色が可能な照明です。昔、パナソニックが最初に出したとき一〇万円ぐらいしたんですよ。それがいま、一流メーカーで一万円ぐらい、アイリスオーヤマさんとかだと四〇〇〇から五〇〇〇円くらいで(いまいろいろなものが値上がりしてるんでわかんないんですけど)、それぐらいで買えちゃうんですよ。中国メーカーでよければ二〇〇〇円台で買える。
朝は白めの光で起きて、午後からちょっとオレンジにしてみたいなことをアプリで自動的にやってくれるものもあります。もう手間すらかけない。

宮木 自動でやってくれるの、いいですね。

角谷 自動で光が変わると、身体のリズムがそれでつくられるのでいいですよね。僕は、ルーティンで、風呂入った後には、色と光を落とすようにしていて、歯磨きと同じでリズムができればそんなに苦痛ではないと思います。

二位はマットレスの改善です。ダンボールやすのこを敷布団の下に敷くとか、薄いマットレスをもう一枚、いまのマットレスに重ねる。ちょっと厚めにするっていうことです。

横向いて寝たときに、床を感じるのを「床着き感」っていうんですけど、四〇代以上の方で床着き感を感じる場合、マットレスをちょっと分厚くするだけで、睡眠スコアが五から一〇ぐらい上がります。

(高級寝具メーカーの方がここにいないのを願うばかりなんですけど)アスリートの人は、ちょっと硬めのマットがいいんです。疲労の回復がぜんぜん違う。もうほぼ一〇〇%の選手が疲労感の低減を感じてるし、実際、血液検査でもそう出ます。

ただ、同じことが一般の人に言えるかって言ったら、それはぜんぜんなくて。アスリートとふつうの人では、疲労の種類が違うんですよ。筋肉疲労用に寝返りを打って血流を良くするっていうロジックで売ってるんですね。

お金かけなくてもいいけど、薄い布団とか薄いマットレスとかヘタったマットレスを使っている人は、数千円のマットレスでいいから買ったらいいんじゃないかなと思います。効果はだいぶあります。

けっこう年配の人って、硬めや薄めので寝てる人が多いんで、そういう人たちが工夫すればよくなるって話です。要はちょっとクッション性を上げるっていうことです。

角谷 そして、目覚ましの改善。携帯電話を枕元以外に置くだけでもぜんぜん効果あるし、あと、携帯じゃないものを目覚ましにすれば劇的に改善します。

スマホを目覚まし時計に使うので枕元に置いとく。だから見ちゃうっていうロジックだから、時計だったら夜寝る前にスマホを見なくて済む。それと、iPhoneの取説にも、充電した状態で頭の近くに置いてはいけませんっていうふうに書いてあるし。電磁波っていろんな議論があって、WHOでも害はないですよっていうのが一応基準なんだけど、でも、頭の近くで充電すると、発がん性がグループ2Bだったかな、発がん性の可能性があるグループの上から三番目ぐらいに入ってる。だから、WHOでも充電した状態の電磁波だけはアウトと言ってますね。

宮木 やっちゃってる……。

角谷 充電しなければいいんですけどね。もしくは、足元に置く。正直、タフ系の男性の人は違いがわからないって言うけど、女子とかちょっとナイーブな方は、やっぱり変わりますって言うんで。

宮木 僕はスマホのアプリを使って寝起きしてます。睡眠が浅くなったタイミングでアラームが鳴るんですが、これはどう思いますか?

角谷 プリアラームって言って、浅い睡眠のときに鳴らす機能がすごくいいと思います。実際、寝起きが悪いかどうかって浅い睡眠のときに起きるか、深い睡眠ときに起きるかの違いなんですよ。どんなに良い睡眠とってても、深いときにジリリッて鳴って起こされるとよくない。だから、それには適っているんだけど、浅い睡眠が当たるかどうかってのが微妙で、半々ぐらいと思ってください。

この時計使うといいタイミングで起こしてくれるなっていう人が半分いる、ということ。そういう人しかが続かないんだけどね。続けてるってことは、当たってるんでしょう。

宮木 もし同じ悩みの方がいらっしゃればと思うんですけど、途中で起きちゃうことがあるんですよ。もうちょっと寝たいのに。まだぜんぜん早いからもう一回寝ようと思うじゃないですか。

でも、"やつ"は気づくわけですよ。浅くなってきたなって鳴るんですよね。もう少し寝たいのに。で、めちゃくちゃむかつくという、バッドサイクルが実はございまして。

角谷 たぶん、時間枠の設定があるから、それを変えてみたらいいんじゃないですか。

宮木 まだ寝たいけど、起きなきゃいけない時間に近づいてきてるってことですね。

角谷 そう。だからアプリは悪くないと思う(笑)。まだ寝たいと思っても逆にそこで寝たほうがリズム崩れるって、判断してるんで、ありがとうと思ったほうがいいかもしれない。設定をもっと短くできるアプリもありますよ。

周りから避けられるリーダーになる?

角谷 ここに来られてる方は、リーダーだったり、先輩の方が多いんじゃないかなって思いますが、やはり、そういう方は、睡眠を良くしたほうがいいんじゃないかという話です。

僕らも、コンサルティング会社さんに入ることが多くて、コンサルタントの睡眠が良くなることで、状態が良くなってクライアントさんにもいい結果を出してもらえるということもあります。人になにかをしてあげる職業とか、影響する職業の人が睡眠改善すると、自分だけじゃなく周りにも大きく影響します。

角谷 睡眠が悪いと、相手から「交流したい」という評価が減ってしまうし、自分のことを悪く思ってるんじゃないかなと思っちゃったりするんです。やっぱりそういった、リーダーだったり、コンサルタントだったりは、他人に与える影響が大きいポジションなので、自覚しましょう、ということですね。

自分のために睡眠改善するんじゃなくて、クライアントさんとか、部下のために睡眠改善に取り組まれるといいんじゃないかなと思う。

宮木 前半にもそういうお話ありましたね。

角谷 いままで、自己犠牲で周りを幸せにするみたいな発想が、美学みたいなのがあるんだけど、逆に自分のコップが満たされて溢れないと他のコップには水注げないですよね。
でも、これって、微妙じゃないですか。これまで自己犠牲してきた人からすると、自分第一の人ってなんかいやだな、って思う人ってすごく多いと思うんすよ。
だけど、それが本当に相手のためになるんだとわかったら、睡眠改善プロセスで、紆余曲折ありながらも変わっていくと、ほかのことも、考え方も、変えることができる。睡眠改善をなにかの練習のひとつと思ってやってもらう感じです。

快眠で心と体の余裕をつくる

宮木 たとえば職場に行って、ちょっと話しかけてみようかなって思うことあるじゃないですか。これに限らず、いますぐやらなくてもいいこと、ってたくさんありますよね。部下にちょっと声かけてみるとか。そういうことって自分のコンディションがよければやるんだろうけど、悪いときってその行動ができなかったりしますよね。疲れるし、またにしようってな感じで後に回したり、逃げたり。やらなくていい言い訳を自分で増やしてしまってるのかなって思います。

でも、ちょっとした余計なことの積み重ねみたいなのが改善とか、引いてはイノベーションにつながっていくわけで、余計なことができるだけのコンディショニングをしておくことは、とかく変革を促したり、新しいことに取り組んでいけないというビジネスパーソンにとっては、すごく重要なんじゃないかなって思いましたね。

角谷 失敗が起きたときにイラッとするのか、チャレンジだなって思えるか、その差は心とか体に余裕があるかどうかですよね。やっぱり新しいことにチャレンジするとストレスかかります。でも、ストレスかかることって悪くないんですよ。

高ストレスを受けてそこから回復してる人がいちばん健康で長生きというデータがあります。低ストレスで物事にあんまり深く関わってない人って、一見健康そうに見えるんだけど、実はいちばん健康じゃない。

だからストレスは悪くないですよ。新しいチャレンジもぜんぜん悪くないし、だけど、そこから回復できてるかどうか。その鍵を握るのが、いちばん大きいのが睡眠なんで。これからイノベーション起こそうと思ったら睡眠を味方をつけたほうが得ですよ。タダだし。何度も言うけど(笑)

宮木 正解がないなか、試行錯誤をかなりの時間長く続けられるコンディションでないと、イノベーションなんて起こせないと思うんですよね。なにか新しいことにちょこちょこチャレンジしたりして、いわゆるライフスタイルを手に入れてみたところで、それのベースとなる睡眠を自分でコントロールできるようになっておかないと、途中で不本意ながらドロップしまうとか、やろうと思って続けたいと思ってるんだけど周りに嫌われたりとか、続けられる環境でなくなってしまうんだろうなって、いま伺ってて改めて思いました。

角谷 たとえばコロナが来るなんてだれも思ってなかったし、また業態によってもどうにもならないことってあると思うんですよ。でもチャンスはまた再び絶対やってくると思う。そのときまで、エネルギーを保てるか。失敗に何回耐えられるかみたいなことって、睡眠がキーワードになってくると思う。ぜひ、ライフスキルとして手に入れてもらいたい。

宮木 ピンチを乗り切るためにも、日頃からある程度余裕がある状況にしておきたいですね。ピンチが来たときにそれをチャンスに、新しい行動に結びけられることも往々にしてあるだろうなという気はしましたね。

角谷 そうだと思いますね。何回も言うけどお金かかんないですし。睡眠中にアイデアを練ることもできますし。人生にはいろんな期間があるので、働き続けなくてもいい判断もあるだろうし。寝ないでもがんばるときは短眠にして深い睡眠をとればいいし、創造したいんだったら長い睡眠をとればいいし、人生のフェーズとか状態で自分の最適な睡眠を選ぶことができればいいと思う。睡眠で自由が獲得できるんですよ。

(6)に続く


角谷リョウ
Lifree 共同創業者・開発/快眠コーチ

NTT docomo、サイバーエージェント、損保ジャパンなどの大手企業をはじめ、計120社、累計10万人の睡眠改善をサポートしてきた上級睡眠健康指導士、日本睡眠学会学会員、日本サウナ学会研究員。
ビジネスパーソンを中心にプロアスリートや大学・高校・中学・小学生、またお受験の睡眠サポートも行なっている。
認知行動療法や心理学をベースにした独自の睡眠改善メソッドによるサポートを行っており、1回のセッション+簡易フォローで不眠症レベルの受講者の約70%が「正常範囲」まで改善。4週間の睡眠改善プログラムにおいては90%以上が「正常範囲」まで改善している。
「人は、強制されても生活行動は変わらない」をモットーに、楽しく自ら自分を変えたくなるようなサポートを追求している。
著書は『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版)、『働く50代の快眠法則』(フォレスト出版)。
宮木俊明
コニカミノルタ株式会社 ビジネス開発グループリーダー
Growth Works Inc. CEO
Trained facilitator of LEGO® SERIOUS PLAY® method anddmaterial
6seconds Certified SEI EQ Assessor & Brain Profiler
親子の休日革命 代表

ミッション:社会に挑戦者を増やすために、挑戦者を支援するとともに、自らもイノベーションに挑戦し続ける

大学卒業後、葬儀会社勤務、音楽活動を経て、商社の法人営業として2011年から3年連続トップ営業を達成しつつ、社内業務変革(今で言うDX)でも成果を挙げた。
2014年に創薬研究支援スタートアップとしてディスカヴァリソース株式会社を設立し、代表取締役に就任。大手製薬企業に採用された国内初の研究支援サービスは現在も活用されている。
2019年に教育ITベンチャーにジョインし、No.2として法人事業部門を統括するとともに、自らコンサルタント・講師として、全国の人と組織と事業の成長支援に奔走。
2021年からはコニカミノルタ株式会社のビジネス開発グループリーダーに就任。新規事業開発・人材開発・組織開発の「三位一体開発」による既存事業部発のイノベーションとして、印刷業界全体のDXに挑戦中。
BMIAには2015年から所属し、ビジネスモデル・キャンバスやバリュープロポジション・キャンバスを活用した新規事業開発コンサルタントとして活動開始。
2016年に経済産業省が主催するグローバルイノベーター育成プログラム「始動2016」に採択。イノベーターとしてのスキルセットとマインドセットを磨き、最終選考を経てイスラエル派遣メンバーに選出された。
2017年よりライフワークとして誰一人として親子の時間を犠牲にせず親子の学びと成長を支援するワークショップ・プログラム「親子の休日革命」を推進中。
2019年、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏のソーシャルビジネス・デザイン・コンテスト「YYコンテスト2019」のグランドチャンピオン大会に出場し優勝。日本代表として世界大会への出場決定 (新型コロナの影響で延期中)
2020年にソーシャル・ビジネス・カンパニーGrowth Worksを創業。イノベーションを志向した教育・新規事業開発・人材開発・組織開発の講師・コンサルタント・ファシリテーターとして、研修やワークショップの提供を通じて人・組織・事業・地域社会の成長を支援中。
著書:
『ひらめきとアイデアがあふれ出す ビジネスフレームワーク実践ブック』
『仕事はかどり図鑑 今日からはじめる小さなDX』


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