見出し画像

3.11の夢

とんでもなく長い時間寝た。夢の中で私は離島に住んでいて、そこは海がとても綺麗な島でみんな支えあって生きていた。家族みたいに、温かくてちょっとお節介でみんな優しかった。そこで出会ったシングルマザーの女が死んだ。原因は自殺だった、4歳と2歳くらいの幼い姉妹を残して海の泡となった。島の住民はその女を悲しむ人々とその女を軽蔑する人々で分かれた。どうして気づけなかったんだかと泣く老婆に、こんな幼い姉妹を残して死ぬなんて許せないと涙を貯めながら話す若い女、ひどいことを言うなと怒鳴る男と子どもの気持ちも考えてあげてという女が口論になっていた。そんな光景を黒い服をきた小さな姉妹は手を握り呆然とその葬式を見ていた。次の日、島の長老の家に行き私はこういった。女の苦しみを理解できなかったと泣く人も小さい子どもを残して自分だけ死ぬなんて声を上げる人もみんな彼女の死をまだ受け入れられていない。この島はみんなで出来上がってる分1人の存在がかけてしまったいま、上手くまとまっていたものがボロボロと崩れ落ちている。色んな感情が出てきて当然で、誰も何も間違っていない、1人1人の声を受け止めるべきだと言った。話すことで整理される気持ちやわかる気持ちもきっとあるはずだから私がみんなの話を聞くと言った。否定も肯定もしない、ただ各々の彼女に対しての思いを聞くと言った瞬間、私は初めての涙を零した。その姿をみた長老は静かにうなづいていた。話が終わった私は長老の家を出ようドアを開けると、そこは昔私が通っていた小学校になっていた。横を見ると教室に座っている幼き頃の私がいた、私の髪の毛の1本を回され汚いとくすくす笑われ何も出来ずにうずくまる私、家にアイロンがないから私の家で洗濯した給食袋のエプロンシワがよって使いたくないと言われる私、おままごとで人間になれない私に、江戸川乱歩ごっこでも明智くんにも小林くんにもなれない私。その教室には走馬灯のように最悪の思い出が目まぐるしいほどに再生されている。耐えられなくなった私は、階段を降りようと手すりに手をかけると階段がぼろぼろと崩れ落ちてゆく。振り返り別の道を探そうとするも道はなく床もどんどんと面積が小さくなり私の足場はあと僅かになっている。逃げ場がなかった、このまま死ぬのかと思ったが、私はまだ死にたくなどなかった。あの姉妹を育てたいと本気で思っていた。理不尽な世界をまだ見るべきではない、あの子たちはまだ子供でいるべきだと声を上げたかった。後ろから幼き頃に救えなかった私がなにが出来るのかと言われてるような気がしたが私は振り返らなかった。下が崩れ落ち底が見えない階段、それが答えだとしても私は階段に足をかけた。1段、また1段とかける度に落ちていく階段、落ちて落ちて、降りて降りて降りて降りて降りて、真っ暗な闇に落ちた瞬間私の目が覚めた。浅い眠りの時、私は時々壮大な夢を見て没入する。その世界が全てだと思い込み、目覚めた時に大きな損失感で少し泣く。12年前、たくさんの人々が亡くなった。今日、不祥事を起こした社長が自殺した。感傷的になりやすい日は何も情報を入れたくない。こんな私はニュースキャスターになんて一生なれない。1つの1つの悲しみが重すぎて、なにも入れていない身体で嘔吐した。こんな私は書くことでしか消化出来ない。彼女達の存在を忘れないことでしか私は私を保っていられない。久々に西加奈子さんの「i」という小説を読み返そうと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?