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after sun

”故郷を出るともうそこに居場所は無くなってしまうんだ” そういう彼の居場所はどこなの?苦しい過去を思い出すよりもきらきら眩しい過去を思い出す方が苦しいのは、どうしてなんだろうね。父親に暴力を振るわれ続けていたのあの子も、思い出すのは酒を飲んで調子がいい父親の姿だって言っていた。夜中の駅前でまともに歩けていない父親の腰に手を回して歩く小学生くらいの女の子。お前の分だと何本もジュースを買う父親、たくさんのジュースを抱えて困っている娘を見て笑っている友達隣で私はずっと泣きそうだった。ねぇ、私には辛い思いをして欲しくなかったなんてあの時言ったけど、あなたの闇はどうしたら救ってあげられる?みんなが寝静まった後に1人で泣いているあなたを見て私何も出来なくて悔しくて涙が止まらなかったの。あの頃の子ども故の窮屈さ、無力さ本当に息が詰まりそうだった。だけど、大人になってからも違う息苦しさで苦しめられている。大雨の夜、川の近くで最近観た映画のパンフレットを読んでいた。夜の水辺はとても落ち着くし、吸い込まれる感じがする。川の岩場を少し歩いて、家まで裸足で帰った。小さな水たまりを見つけたらばちゃばちゃ入ったり、でたらめなダンスを踊ったり、走ったりしていた。帰り道に聞いてた曲はQueenの「under pressure」あのシーンが本当に好きだった。お風呂に入ったあとだったのにびちょびちょに濡れて帰ってきて倒れるように寝てしまって、昼過ぎに身体のほてりで目を覚ました。スマホを見ると一年近く連絡をとっていなかった友人から「久しぶり、元気?」とメッセージが来ていた。「元気だよ」と指先だけの嘘ついて、昨日行った川に向かった。雨で勢いを増した川の流れ。昨日忘れたサンダルが近くで濡れていた。

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