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今年の個展

 本当に、8月の雨は長くまた台風が来ていると聞く。空は曇りがちで7月の終わりから8月初旬にかけての眩しさをすっかり忘れてしまった。そうこうするうちに10月9日からの個展までひと月と少し。コロナあり、オリンピックあり、自然の世界では大変動ありで、なんだか今までの暦がそのまますとんと、日々とそぐわないような妙な感覚が続いている。

 そんなこともあって、今年の個展は、ここ数年間に描いたものを同等に扱って展示しようと思う。私は絵を描く時の素材や大きさ、材料はその時々で決まりなく作っている。SNSに毎日投稿している小さな紙の絵が8年分ほど溜まっているが、そこからも新旧にとらわれず、無作為にピックアップして、カンヴァスや他の素材のもののなかに紛れ込ませてみようと思う。どれもこれも、「絵の仲間」なのである。絵画という魔物はひと種類ではない。画像を見るようになってから、私たちの視覚の延長上で「絵の仲間」は生まれるようになった。

  4年前に「Picture (and its friends」というタイトルで、そのような展示を試みた。今回もその延長上にあるのだが、前回は全て新作にこだわったところ、今回はその枠を外すことにした。家にいることが多くなると、自然と過去のものを整理したりと、あっちへこっちへ時間が行き来する。そのような日常の中で生活しているので、そのまま私信を送るような雰囲気の展覧会になればと目論んでいる。

 今の世の中で意味を持つ、新しい作品を作らねばならぬと心はやり、老いても醜態を晒しつつ、多少の引きを持って自作と向き合いたいと思っている。そう、もうそれほど拘らずに制作については猫のように気ままで自由になってもいいのだと。

2021年8月23日

松井智惠

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