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【毎週ショートショートnote】「フシギ」「ドライバー」

ドライバーを求めて訪れた工具店。
「何を探しているのかね」
「ドライバーありますか。持ち手の先を取り替えるタイプの」
「あるよ。これとかどうだい」
出てきたのは想像通りのドライバーセット。しかしよく見ると一本だけ、プラスでもマイナスでもない形容し難いドライバーが混ざっている。
「これは何ですか?」
「これはゼロドライバー」
「初めて聞きました。どんなネジが回せるんですか?」
「プラスでもマイナスでもないものはだいたい何でも回せるよ」
店主はゼロドライバーと呼ばれたそれを持ち手に嵌めてクルクルと回す仕草をした。
釘抜きみたいなものだろうか。
「釘抜とは違うんだよなぁ。うまくは言えないけど使い方のコツを覚えれば何だって、人の心だってネジを外して開けられる。するとその人の心が読めるんだ。フシギだろう?」
いやいや何を言っているんだこの人は。
「いやいや何を言っているんだこの人は、と。どうする?」
ヤバいな。すでに僕の心のネジが外されているぞ。
(410字)


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前回のお題「チャリンチャリン」「太郎」

次回のお題「初めての」「鬼」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
フシギ:不思議、七不思議、
ドライバー:プラス、マイナス、運転手、変身ベルト

アイディアの組み合わせ
何でも回せるドライバー:プラスでもマイナスでもないドライバー。ゼロ。ネジを回して開けるか留めるか。開ける。心を開けると心を読める。会話劇中心。気がつくと地の文との会話に。

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