【毎週ショートショートnote】「穴の中の」「君に贈る」
地上だけに住むには増え過ぎた。
人々は地底にも街を作って暮らさなければならなくなった。
日の当たらない場所に押し込まれたのは身分の低い人達だ。最初は反乱も起こったものだが、地上と地底を断絶することで争いは強制的になくなった。もう地上人と地底人が交わることはない。
地上と地底を繋ぐのは物資を送る「穴」だけだ。地上人は地底人を哀れに思い「贈り物」と称して施しを与えている。「贈り物」を運ぶのは地底人出身の運び屋で、地上人と会話することができる唯一の存在。
「今日の贈り物だ。汚い地底人め。地上人に感謝しながら生き延びるんだな」
「ありがたき幸せ。地上人様々でございます」
毎日のように罵倒されながら「贈り物」を地上で受け取り地底に運ぶ。気分は悪いが大切な仕事だ。運び屋は地底につくと時代遅れの「贈り物」をゴミ箱に捨てた。
地上人はまだ知らないのだ。知られてはいけない。地底人の文明が大いに発展し、地上より随分と快適に暮らしていることを。
(410字)
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前回のお題「男子」「宝石」
次回のお題「クリスマス」「カラス」
以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。
アイディアの羅列
穴の中の:場所を繋ぐ、時間を繋ぐ、掘る、大穴、トンネル、マンホール、モグラ、穴があったら入りたい、穴場、
君に贈る:プレゼント、言葉、
アイディアの組み合わせ
地上人と地底人:トンネルで繋がる別世界。穴の外と穴の中では穴の外の方が身分と自由度が高そうというバイアスを打ち破りたい。
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