大図書館の道化師
なんだなんだと思われそうなタイトルの記事ですが、
・「古代人と夢」 西郷 信綱(著)平凡社
を読んで感じるところがありましたので、書かせて頂こうと思います。
本著は古代人(古代日本人)が如何に夢というものに関わって来たかを神話や和歌、古典作品などを通して明らかにしていく内容となっています。夢という抽象度の高い事象を扱っての書籍ですので、文体は非常に読みやすいのですが、内容自体が平易解明なものかと言われるとそうは言えない様に思います。
ところで、夢というものに対して皆様はどのような印象を持たれるでしょうか?
本書でも指摘されているのですが、夢とは夜の世界であったり、異界と体感されるものであったり、或いは啓示を与えるものであったりすると捉える方が多数いらっしゃるかと思います。概して言えば現実世界の裏側、西洋風に表現すると無意識の領界や集合的無意識の顕現といったところかと僕は解釈しています。何となく夢という事象には不気味な印象がありますね。
ちなみに、「古代人と夢」では現代人より夢の与える影響が強かった時代をテーマとされているので、解りにくいけど体感してしまう、そんな不思議な世界観が展開されています。
さて、読書を通じたエッセイとして記事のタイトルにあたる夢の話をしたいと思います。僕は比較的夢を覚えている方で、不思議な夢を見ることが多く、夢からの掲示などのインパクトを強く受けるタイプです。
そうした多数の不思議な夢の中でもとりわけ印象に残っている夢があります。
今よりも強迫的に本を読んでいた頃の話なのですが(自分の専門分野の研究書を読みまくり、疲れたら別の分野の研究書を読み、気分転換に小説を読む、寝ているときは本を読んでいる夢を見るという文字通りずっと読んでいる状態でした)、そんなある日、本を読みながら思わず眠っしまっていたようです。
その夢の中で僕は母校の大学の書庫にいるのですが、本棚から一冊本を取り出そうとしました。すると、本棚の奥に通路が続いていて、突然僕の身体が宙に浮かび、その通路の中を無心で進んでいくのですね。本棚を抜けると、地下に向かう階段と無数の本棚だけの空間がどこまでも無限に続く中に僕は浮かんでいました。最深部を目指して僕は高速で進んでいきます。大図書館としか表現できないような真っ暗な図書の空間です。そして、かなり奥の方まで来たときに僕は停止し、ある本に手を伸ばそうとしました。
すると突然モノクロのピエロが現れて、笑みを浮かべながら首を振ります。気付くと、ピエロの後ろには扉がありました。僕は本を手に取るのをやめ、扉の方に進もうとしました。ピエロは踊るように宙に浮かんでいましたが、満面の笑みを浮かべています。そして、静かに指でバツ印を示しました。
その瞬間、光にバチンと弾かれたように目が覚めました。あのとき、ピエロの制止を聞かず、本を手にしていたら、或いは扉を開いて更に大図書館の奥に進んでいたら……僕は今頃どうなっていたのでしょうか。ピエロは触れてはいけない知識の番人なのだろうと思っています。その大図書館に格納されている情報にアクセスする資格が当時の僕には無かったのか、それともそもそも人間が触ってはいけないものだったのか……。
今まででトップクラスで不思議な夢でした。あれは一体何だったんだ?
僕らが生きていると必ず眠ります。ですが、不思議な世界はすぐ隣にいつもいます。影のようにいつも。昼の世界は夜の世界への導入線です。必ず毎晩僕らは夜の世界を迎える。だから僕らはトンネルを抜けるように朝日を好むのかもしれませんね。
長くなりましたが、今日はこの辺りで締めたいとお舞います。それでは、皆様、またおあいしましょう。
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