(チラ裏レビュー)「セッション」 (映画 2014年)

※)これは”チラ裏”レビューです。あまり十分な推敲もしておらず、本来はチラシの裏にでも書いて捨てるレベルの駄文ですが、ここに書いて捨てさせていただいております。この先は期待値をぐっと下げて、寛容な気持ちでお読みください。ではどうぞ。

作品名:「セッション」 (映画 2014年)
リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/B016B9JV58
評価:★5(★★★★★)

やばい映画を観た。鑑賞中はたぶんずっと心拍数が上がってて、特にラストのクライマックスシーンは興奮した。鑑賞するたびに感動して泣いてしまう映画は他にもあるが、鑑賞中これほど心拍数が上がった映画は他にない。

「一番好きな映画は何?」と聞かれるたび、いつも何を自分のナンバー1映画にするか迷っていたのだけど、これからは迷わずこの映画の名を答える。

そのくらいズバ抜けている、いや他の映画とは根本的に方向性が異なる。普通、どんな映画も結局は他の人間との”調和”を描くものだが、この映画には他の人間との”調和”は一切ない。ラストシーンで主人公と鬼教官の”セッション”は調和したかもしれないが、少なくとも2人の感情は最後のシーンでも”調和”していない。たぶんお互いに「クソ野郎」と思っている笑。

では、一部の人に「胸糞映画」「酷いパワハラ」「★1(★☆☆☆☆)も付けたくない」などと評されるこの”酷い”映画の一体何が私をこれほど感動させたのか。それは、アンドリューが音楽に向けるひたむきさだ。特に「1.空気を読まずに自分の情熱に正直」「2.どんな理不尽な目に遭っても他責思考にならない」このふたつのアンドリューの姿勢が私の心を強く揺さぶった。

まず、「1.空気を読まずに自分の情熱に正直」について。

主人公のアンドリューはどんな時でも空気を読まずに自分を貫く。ライバルのタナーの楽譜を故意ではないが紛失してしまって自分に主奏者のチャンスが巡ってきた時、頭の中から「申し訳ない」という気持ちが完全に吹っ飛んで鬼教官に自己アピールをしているし、もう一人のライバルのコノリーに対しても、自分の演奏がコノリーよりもずっと優れていることを本人の目の前で何の遠慮もなしに主張する。

最近はSNSで恐ろしい炎上現象が身近に見られるようになったためか、みんなポリコレ・コンプラ第一で”炎上”しないように自分を抑え、社会に調和することに必死だ。一方で自分の中の情熱は自分の奥底に無理やり抑圧し、自分でもその情熱を忘れてしまう。そうしてみんな只の”空気読むマシーン”になる。なお、自分の情熱を抑圧したストレスは、ルール違反を犯した人を攻撃することで発散するから、この永久機関がますます回る…。そんなディストピアな世界に住んでいるから、どんな時でも空気を読まずに自分の情熱に正直なアンドリューの姿は、私の心を激しく揺り動かす。

アンドリューはガールフレンドのニコルに対してもエゴ丸出しだ。そしてそれを隠すこともしない。ニコルに対して別れを切り出す次の会話なんか最高だ。

>アンドリュー「僕の将来のためだ。会わない方がいい。何度も考えたけどそれがベストだ。ドラムを追求するにはもっと時間が必要なんだ、君と会う余裕なんてない。会っても頭の中はドラムやジャズや譜面で一杯だから君は不満で『ドラムに費やす時間を減らせ』と責める。でもムリだ。逆にうっとうしくて怒鳴り立てる。結局ケンカして罵り合うことに。だからそうなる前にきれいに別れた方がいい。…僕は偉大になりたい、偉大な音楽家に」
>ニコル「それを私が邪魔すると?」
>ア「ああ」
>ニ「確信してるわけ?私が邪魔するって?」
>ア「そうだ」
>ニ「もう会えないのね?会えても私はチャラい娘、ケンカするだけ。目標へと進むあなたの足手まとい。立派な目標を追う人は私と過ごすヒマなんてない」
>ア「その通りだ」
>ニ「何様のつもり!?(激怒)」

同じことを言うにしてももうちょっとあいまいな言い方にすれば彼女を怒らせずに済んだだろう。それが俗に言う”倫理的”ってやつだ。しかしアンドリューはそれをしない。この誠実さ、最高にカッコいい…!

次に「2.どんな理不尽な目に遭っても他責思考にならない」について。

アンドリューはどんな理不尽な目に遭っても、その状況を嘆いたりしない。自らのエネルギーの全てをその状況を打開するために使う。

普通、あの自動車事故に遭ったときにゲームオーバーだし、JVCコンサートで鬼教官にハメられて自分の知らない曲目が始まった瞬間に2回目のゲームオーバーだし、その演奏が終わって観客と仲間からの冷たい視線がきた時に3回目のゲームオーバーだ。しかしアンドリューの心はそれでも折れない!!!笑。そして鬼教官への逆襲が始まる!!!笑。この3つの場面で私はこの展開が全く読めなかったのでマジで度肝を抜かれたし、ラストのカタルシスがヤバかった!!!アンドリューは本当に格好良すぎる!!!狂ってるけど!!!笑。

【補足】
・Amazonプライムビデオで自宅で鑑賞した
・吹替版も存在するが、「フルメタルジャケット」レベルの罵詈雑言が飛び交う映画なので字幕版で鑑賞して正解だったと感じる
・賛否両論に激しく分かれる作品なので、映画レビューサイトで低評価レビューを見るのが楽しい笑

【監督・脚本】デイミアン・チャゼル

【キャスト】
・アンドリュー・ニーマン:マイルズ・テラー
・テレンス・フレッチャー:J・K・シモンズ

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