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”主体的・対話的な学び”から”深い学び”への挑戦

演劇的手法の効用

 ぼくの授業では、原則、毎回の授業の中で「演劇的手法(ドラマワーク)」を利用しています。このような手法を用いるのには、もちろん理由があります。そこには、大きな大きな教育的意義があると信じているからです。学びの深まり、学びへ向かう姿勢の改善…については下にある「生徒の感想」から読み取れると思います。さらに、実際に、その効果は大学合格にもはっきりと出てきています。そこの「意義」についての詳細は後ほど述べるとしまして、まずは一つ「ホット・シーティング」の用い方についてお話ししましょう。

「ホット・シーティング」

 演劇的手法にはさまざまな技法があります。そのなかで、ぼくが通常の授業時に使っているのがこの「ホット・シーティング」と呼ばれる方法です。

 ホット・シーティングは、一人(最近はアレンジして複数人のことも)が「何かに成りきって」前の“ホット・シート”と呼ばれる席に座って、他の生徒の質問に答えるという方法です。前に座る人は事前に決まっていて、次の時間に何になるのか(何が登場するのか)が知らされていることになっています。そして、他の生徒たちは質問を準備しておくのです。

 もちろん、このワークは授業の一環として行われるのですから、原則その前の時間で学んだ内容の中から何(誰)かを選んで、その何(誰)かに“成りきる”という形をとります。この“成りきる”ということが「教科を超えた学び」(「コミュニケーションの力」「プレゼンテーションの力」「人前で一歩前に出る力」など)を身につける機会となります。それを、学校の中で最も時間を割いていて、かつ生徒が最も意識する”評価“に係る教科科目の「授業」時間の中で行うのです。

“疑問”から“確信”へ

 初めは、この方法が何なのか、どんな意味があるのか、どんな教育効果があるのか、についてわからなくて、あるいは理解できなくて、疑問をもっていた生徒もいたと思われます。1回目は、(教師である)ぼく自身が、ホット・シートに座って回答する役をしました。そして次からは、生徒の中から誰かがホット・シートに座る役(ある意味の主役)を担当することとなります。そうやって、まずは教師である自分が“きちんと”“まじめに”“しっかりと”行うことが重要です。

 一度、乗り始めると、どんどん役作りもできて来て、それとともに、学び(確認及び復習)の内容も確実に良くまとまるとともにレベルが上がってきます。そこのところは、生徒の感想をみてください。

 それでは、きょうはここまでにさせていただきます。

演劇的手法(特に、ホット・シーティング)に対する生徒の感想・意見

☆今年の生物は、他の授業とは違った全く新しい形態の授業で新鮮だった。特に授業冒頭のホット・シーティングだ。最初は正直よくわからないシステムだと思っていたが、だんだん演じている役に、担当の人それぞれの味というか、雰囲気のようなものがあることに気が付いた。生物の知識や学びが、そこでの情景や思い出と共に、より記憶の深みに刻み込まれたような感じだった。他の授業とは違う、そのような学びも私には面白く感じられた。

☆テストではノートの持ち込みが可能だったため、ノートまとめやホット・シーティングのときに、より理解を深めようとすることができた。

☆ホット・シーティングでは教科書を超えた深い学びができた。いろいろな人の話を聞くことができてコラーゲンや電気うなぎなど自分が知らない内容のときは特に良い経験になった。自分でやるときも一つのことについて詳しく調べるとこんなに深い内容を探れるということを実感した。私はアミノ酸になったが普段の生活でアミノ酸に興味をもつことができた。今まで教科書には全てのことが書いてあるように思っていたが、授業を通して、考えればたくさんの疑問が生まれるんだなと思った。その疑問を大切にしていきたいと思う。

☆生物基礎は生徒主体の授業になっていると思いました。特に、ホット・シーティングは発表者だけでなく視聴者も教科書に載っていないような知識・考え方を頭に入れることができるので、面白かったです。また、授業前半に疑問点をグループでまとめる作業は、自分では気づかない疑問を他の人が挙げていたりすることがあり、他の人の視点を知ることができる良いきっかけだったと考えます。

☆ホット・シーティングをしたり話し合いが多かったりと、これまで受けてきた授業とは異なって最初は戸惑ったが、今は内容をより深く理解できる授業でとても良いと思っている。

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