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ウィーザーマラソン ランキングと総評

これからお休みの方も、お目覚めの方も、そしてこの記事を偶然目にしてしまったそこのあなたも。

さて、やって参りました、毎度お馴染み流浪の番組、アルバムマラソン企画でございます。

どうも。 私、音楽大好きっ子です。


レッド・ツェッペリン、XTC、デフトーンズに引き続き今回のターゲットは、



Weezer

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ウィーザーです。

アメリカはコネチカット出身のリヴァース・クオモを中心に結成された4人組ロックバンドで、現在のラインナップはギター・ボーカルのリヴァースに、ギターのブライアン・ベル、ベースはスコット・シュライナー、ドラムはパトリック・ウィルソン。作詞・作曲は主にリヴァースが主導し、1994年のデビューから今までアメリカを代表するロックバンドとして第一線で高い人気と評価を獲得しています。

という超ビッグネーム。リヴァースは熱心な親日家としても知られ、多くの来日公演、日本の音楽にも精通しているだけでなく、彼の奥さんも日本人女性の方なので、リヴァース本人も日本語の曲をカバーするなど日本語も堪能、作品にも日本からの要素を多く取り入れているというガチっぷり。もちろん日本国内でもウィーザーの人気は高いです。


というわけで、そんなウィーザーのディスコグラフィーを聴いていって、個人的に順位をつけてみました。アルバムは全14枚。1枚づつ下位から作品についてのちょっとした解説と感想をダラダラと述べていこうかな、と思てますけども。はい。


アルバムの順位が気になる方はすぐ下の目次を閉じてから見てみてくださいね。

ほな、いきまっせ〜〜〜〜〜!!


14位:Raditude (7th / 2009)
https://open.spotify.com/album/6IoVSJTqEw9HLVKkDuEthz?si=0fryOMNmQbi_6gPGH_kuBQ&dl_branch=1

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 多分、このアルバムを聴いたことのあるウィーザーファンの方は、ああ、これだろうな、という顔をされてると思います。一聴してわかる駄作度合いです。むしろ僕は嫌いじゃあないんですけどもね〜。名誉の最下位です。
 じゃあ、このアルバムの何がそんなにいけなかったか。そもそも、ウィーザーのアルバムの人気順でいくと、この作品と前後2作は不人気で、ウィーザーの暗黒期にあたる時期になります。とはいえ、作品の売り上げ自体は悪くなく、彼らが終わったバンドと見放されていたわけではありませんでした。実際、暗黒期を脱出して第2次黄金期を迎えるので、一時的に駄作を量産した時期というだけなんですね。
 前振りが長くなってしまいましたが、この作品はとにかく、今までのウィーザーの路線を大きく離れて、色んな要素を脈絡なく散漫に放り込みすぎた闇鍋アルバムなんです。リアーナから借りてきたような00sのポップなR&Bのビートがあったり、客演にリル・ウェインを招集したり、黒歴史扱いを受けてるヘンテコなインドロックなどを披露。普通のロックナンバーもそれらのクセの強い要素のせいで影を薄めてしまっています。
 良いものを期待して聴くと肩透かしですけど、逆にここまで振り切っていて、そしてそれをウィーザーがやっているだけに、「安っぽい良さ」というのも生まれてくるんですね。だから、この素っ頓狂さもパーティーアルバムとしてはそれなりに楽しめるアルバムです。こういう作品が1枚でもあるっていうことが、他のロックバンドとの大きな差でもあったりもするので。愛すべき駄作だと思いますね。


13位:Hurley (8th / 2010)
https://open.spotify.com/album/1vhQIBznzVjSCQw26WlMsB?si=WUYxTTGNSfeLMWx8kz6oWw&dl_branch=1

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 続いてのアルバムも、Raditudeの次作で、一般的に低迷期扱いの時期の作品になります。今作も悪くはないんですけど、如何せん地味な印象でしたね。このアルバムは外部のミュージシャンを呼んでレコーディングに参加させたりもしたオープンマインドなアルバムで、ライアン・アダムスや復活後のエアロスミスなどを手掛けたデズモンド・チャイルド、まだ駆け出しの頃のブレイク・ミルズなどを起用していたりします。聴いててそうなんだとは全然感じなかったんですけどね〜。
 ウィーザーってバンドはやっぱりメロディの強いバンドなんですけど、この低迷期の時期の作品に共通してあるのは、そのメロディ特化の作曲に待ったをかけている感じがします。詳しく後述しますけど、Raditudeの前作でも自身の武器であるメロディとは違うところからの新しいアプローチを模索しようとして低迷期に差し掛かったんじゃないかと思うんですね。
 今作はどちらかというと従来のウィーザー的グッドメロディに回帰しようとしてるアルバムではあるんですけど、まだ完全復活とはいかず、悪く言ってしまうと中途半端なクオリティになっている気がします。特徴的なサウンドや音楽性の変化も乏しく、他のアルバムと比較すると魅力は少し落ちるかな、と感じました。
 それでもロックサウンドは結構パワフルなミックスで、「Time Flies」なんかは今っぽさを感じたりもしました。聴きどころはあるアルバムだと思います。


12位:Weezer (Black Album) (12th / 2019)
https://open.spotify.com/album/49cHEhh4pSeWvV0HW3OYo6?si=07cURExGSuSV6wuO2-puwQ&dl_branch=1

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 ウィーザーはタイトルが「ウィーザー」(もしくは無題)のアルバムを複数発表しています。そのそれぞれに特徴的なワントーンのカラーリングがされていて、主にアルバムを呼ぶときはそのアートワークのカラーで呼び分けます。今作はブラックアルバムです。
 先述したRaditudeを闇鍋アルバムだとするなら、今作が...
 ごめんなさい、別に何鍋でもないですね。...より美味しく調理したアルバムが今作です。具材は闇鍋だけど案外うまいこといってる、成功闇鍋アルバムですね。実際にRaditudeと同じ要素が入ってるわけではないんですけど、おもしろい雑多な音楽性がウィーザー節メロディでうまくウィーザーの鍋で煮詰まっているところはさすがですね。鍋の話はもういいですかね。
 ボサ・ノヴァ的リズムやサーフミュージックとスカ、トラップ以降のビート主体のロックもしっかりウィーザー仕込み。「Can't Knock The Hustle」にはムード歌謡的なエッセンスも感じました。
 でもこのアルバムも地味っちゃ地味なんですよ。映える曲が少なくて、あってもちょっと捻った曲って感じになっちゃうので、僕の好みで行くとそこまで好きな部類ではないですね。ので、この順位。


11位:Pacific Daydream (11th / 2017)
https://open.spotify.com/album/3EwfQtjvyRAXsPWAKO5FDP?si=8xJ_CMepTbGY34WM8QVBCQ&dl_branch=1

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 ウィーザーが新作アルバムを出す!という情報を聞いて、先行シングルからアルバムが出るまでを初めてしっかりリアルタイムで確認したアルバムがこのPacific Daydreamで、個人的な思い入れは非常に強いし、実際良いアルバムだと思ってるのにこの順位なのはどう考えてもおかしい。何かの間違いだと思うけど、今日はこの順位で行きます。もういまさらなので。このアルバムより上位は正直全部良いアルバムです。割と甘口批評ですね。
 舞台は海の設定。爽やかで心地いい曲が並びます。その名の通りビーチ・ボーイズへの愛を歌った「Beach Boys」や「QB Blitz」などお気に入りの曲も多いです。「ビーチで踊ろうぜ!!」って感じよりかはもっとゆったりとしたバカンスのような落ち着いた印象が通底しています。キャリア全体で見ても最も大人しいアルバムかもしれません。ロックサウンドもかなり抑えられていて、底抜けにポップです。Paramoreが「After Laughter」を出したのと同年の作品と聴くとわかりやすい方もいらっしゃるかも。そういった時代感にもしっかりマッチする良作です。


10位:Van Weezer (14th / 2021)
https://open.spotify.com/album/4QIZtPbEAQTu1smtYyDHXz?si=JvlDMw3iSkWWLbA29GdA9Q&dl_branch=1

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 現時点での最新作です。予定していたよりもリリースが遅れたので、製作時期は前作「OK Human」よりも前とされています。
 ロックサウンドをフィーチャーした作品で、エモやアメリカンハードロック、ヘヴィメタルの要素を持ち込みました。特筆すべきはVan Halenの「Eruption」などの大胆でユーモラスなパロディで、「Blue Dream」でのOzzy Osboruneの「Crazy Train」拝借はリヴァースがこがけんに見えます。彼らの小粋な遊び心が光る作品です。
 曲のクオリティも高く、本当に高水準で曲を書き続けられるリヴァースの才能には改めて敬服しますね。


9位:Weezer (Red Album) (6th / 2008)
https://open.spotify.com/album/6v8wNjiQDhDijoapXXZ9mZ?si=-8vqzneLSm6kZvi92X32pg&dl_branch=1

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 彼らが低迷期に突入するきっかけのアルバムです。が、いいところはしっかりいいと言わせていただきますよ!まず、かの御大リック・ルービンがプロデュースしています。ビースティ・ボーイズやパブリック・エネミー、リンキン・パーク、カニエ・ウェストなどに携わった生きる伝説みたいな人ですね。まあ、前作から引き続きのプロデュースではあるんですけどね。
 このアルバムで彼らが推し進めようとしたのは脱ウィーザー的ロックに近いようなもので、(その方針をやめて従来の方法論に回帰したことを逆説的に踏まえて武器としていたシンプルなメロディロックを「ウィーザー的ロック」と表現しますね)他の新しい要素をどうにか取り入れられないかといろいろ模索し始めます。その結果、このジャケットのような血迷ったビジュアルにも辿り着いてしまったわけですね。
 肝心の内容ですが、まず他の低迷期作品よりも圧倒的に上位に来ている理由としては、あくまでも今までにウィーザーになかった新しいアプローチを探していたので、Raditudeのように極端に突飛な音楽性を差し込むのではなく、今の音楽性のまま、表現の引き出しを拡張しようとしていたように見えます。例えば、「The Great Man That Ever Lived」ではロックオペラ調のアプローチが見られ、クワイアが参入する瞬間なんかは、新鮮に聴こえたんですよ。
 「Everybody Get Dangerous」ではレッチリ的なノリの良いファンキーなロックをやってますね。リフとかはグランジっぽくも聴こえたりするし、曲展開もスピーディーでおもしろいので、何か「っぽく」は聴こえても、そこまで似てないようにも聴こえるところはめっちゃ良いバランス感覚なんじゃないかと感じます。
 おそらくこのアルバムが嫌われやすいところは、パトリック・ウィルソンボーカルの曲がいくつかあるところかもしれません。コーラスは今までもありましたが、大々的にメインボーカルをリヴァース以外が取る例は後にも先にもこの1枚しかないし、おそらく不評の理由の一つになっているとは思います。パトリックのボーカル自体は上手いんですけど、リヴァースの声が聴きたくてウィーザー聴いてるところはあるとも思うのでね。
 そして、ウィーザーのアルバムというのは30〜40分程度のコンパクトなものが多くて、1時間のボリュームの今作は全作品中でも最長です。後半のアメリカンロック的なドラマチックな展開は長くなってもおかしくはないんですけど...ですね。
ただ、こういうテーマ性のある作風や、低迷期の音楽性の模索・蓄積が以降の作品の深み、後期キャリアのシンプルさに加えられたエッセンスなどに成果として現れてくるというのもあったと思いますし、おもしろい聴きどころのある作品だと思ったので少し順位を高めにつけてみました。


8位:Make Believe (5th / 2005)
https://open.spotify.com/album/4D8A8M0NJjEdQhusawyeDz?si=cpXtmV7WTjukLjlIQ1WxWA&dl_branch=1

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 Red Albumの前作で、同じくリック・ルービンがプロデュース。ヒットシングルの「Beverly Hills」を筆頭に強力なロックナンバーが並ぶアルバムです。おそらく主にヒップホップアーティストをプロデュースするリック・ルービンによるところだと思うのは、「Beverly Hills」などでも顕著な縦ノリロックの存在です。次作でもそれが拡張されていましたけど、今作でもすでに新しい表現には漕ぎ着けていたのかも。
 ロックサウンドにも細かくリック・ルービンの影響が出ているようにも感じます。それまではオルタナっぽいサウンドをしていたのに対して、今作はポップパンクや00sエモっぽいサウンドになっています。こういうところは流行に沿っていろんなバンドがサウンドは常々アップデートしていくものですから、別にウィーザーが特筆してどうってわけではないんですけどね〜。
 今作の作風がウィーザーのアルバムでは中央線かな、と思っていて、初期と後期のちょうど間をとった(中期はちょうど低迷期なので)作風だと今作かなと。最もウィーザーらしいという点では、入門アルバムとしてもオススメです。


7位:OK Human (13th / 2021)
https://open.spotify.com/album/0dL9rGQxUeIqpiUndXaQLl?si=ikRw_m0JR8qYFLvKxRT9Pw&dl_branch=1

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 ここから格段に良いアルバムが揃います。まず1枚目!! レディオヘッドのアルバム「OK Computer」をパロってつけられた今作「OK Human」です。作風自体はOK Computerとは全く別物。バンドサウンドを廃した徹底的にコンセプチュアルな演奏形態で、全編にわたってストリングスやブラスセクション、グロッケンなどの装飾音が鳴り響く煌びやかなオーケストラル・ポップで、キャリアでも最も異色な作品です。コロナ禍でのアルバム制作としても有効的な例だと思いますね。
 今作のメロディはギターフレーズなどない分、かなり歌メロ的に作ってあると思います。重厚なバックのサウンドも軽快なメロディに乗せられてとても爽やかに聴こえてきますし、敷き詰めるようなオーケストラではなく、室内楽っぽいミニマルな編成なのも変にゴージャスにならず、風流です。
 曲間もシームレスに途切れず繋がるので、アルバム単位での統一感は強く、アーティスティックな趣もあります。もともとビーチ・ボーイズフリークのリヴァースですが、制作期間中は「Pet Sounds」をよく聴いていてその影響もあるとかって聴いた話でしたが、聴いてるとそんな感じもしてきますね。今年の新作ですが、大健闘の順位だと思いますし、まだ聴いていないよって方にはぜひ聴いてほしいアルバムです。


6位:Everything Will Be Alright In The End (9th / 2014)
https://open.spotify.com/album/5bwoCpDhski3iIxwsdgPTM?si=YDFym1cBSsyyaWcdZ-lPMw&dl_branch=1

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 毎度言いますが、もうここからはどのアルバムも優勝でいいぐらいなんですよ。本当はね。でも優劣はつける、どちらの良さも伝える、両方やらなくっちゃあならないのがつらいところです。
 低迷期脱出のアルバムです。プロデューサーは元The Carsのフロントマンで、ウィーザーの1st、3rdアルバムのプロデュースも担当していたリック・オケイセックです。昨年9月に惜しくも亡くなってしまいました。1周忌ですね。
 今作もロックサウンドでウィーザー節を聴かせるウィーザー・スタンダードな作品です。それだけではなく、今作に特徴的なのは、「OK Human」でもあった緩やかに繋がっていく曲間ですね。どの曲も素晴らしいのに加えて、この繋ぎによってアルバム全体に一体感が生まれています。アルバムのラストにはフューチャースコープ3部作と呼ばれるメドレーがあり、ブルージーで演歌的な抒情メロディの長尺インストやロックオペラ、プログレ的な曲展開、メタリックな速弾きギターなど新しいアプローチのオンパレードなのにも関わらず、スランプを完全に払拭したクオリティで、低迷期の挽回を見事に果たしていて圧巻です。
 今作の作風がウィーザーのアルバムでは中央線かな、と思っていて、初期と後期のちょうど間をとった(中期はちょうど低迷期なので)作風だと今作かなと。最もウィーザーらしいという点では、入門アルバムとしてもオススメです。それさっきも聞いた?ちょっと僕は覚えてないんですけどもね〜。


5位:Weezer (Green Album) (3rd / 2001)
https://open.spotify.com/album/2OBSz5Nlto0Q5CtYPzPY7c?si=Bu82cGEXTQC-xX7nDyx3RA&dl_branch=1

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 今作の人気ぶりを知っている人からすると早すぎる登場という感じですかね。予定調和なランキングはやってる意味ないですからね。わざと順位を下げてるわけじゃないんですよ。リヴァースのハーバード大学入学卒業というちょっとわけわからん経緯を経て、約5年の沈黙を破りリリースされました。プロデュースは再びリック・オケイセックです。
 とにかくこのアルバムはシンプルでキャッチーでクールなこれ以上ないほど極まったポップなロックの王道とも言える内容です。10曲28分というかなりコンパクトなボリュームでも心を充電するのには十分すぎるほどの満足感があります。特に前半の怒涛の名曲ラッシュで引き込まれたウィーザーファンの方も多いかもしれません。
 ウィーザーの音楽性の芯の部分はそこまで変化がないんですけど、明確にはジャンルで区別できないんですね。パワー・ポップだとかエモだとかポップ・パンクだとかの要素はもちろんあるんですけど、もっとロックの根底にあるキャッチーなメロディセンスそのものがウィーザーの音楽性を定義していて、ここはビートルズのような名だたるロックレジェンドと共通の部分だと確信します。このアルバムではそんなウィーザーの溢れ出るメロディセンスを存分に楽しむことができます。


4位:Maladroit (4th / 2002)
https://open.spotify.com/album/274YHaMmctXWht39Olh8ub?si=wQyWmRhjS3C45iYu1cZNxA&dl_branch=1

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 彼らの作品中、最もオルタナ風味の強いアルバムです。ギターはディストーションの効いたソリッドなサウンドで、ドラムもいつもより多め強め濃いめにシンバル叩いてます。ダイナソーJr.ほどの凶暴さや疾走感はないにしても、彼らの持つ良い意味での青臭さが見事にシナジーを生み出しています。このアルバム、前3作と比べると人気は落ちるんですけど、絶対もっと聴かれて、評価されるべきアルバムだと僕は確信してます。非常に魅力に溢れていて、1stより全然こっちって人がいたって全くおかしくないアルバムだと思います。
 メロディも非常に冴えています。それも、前作のようなキャッチーで軽快なメロディではなく、オルタナサウンドにしっかりフィットするようなギターのフレーズやバンドアンサンブル全体がメロディを作っているような一体感も備えていて、ウィーザーというバンドの実力や器用さを改めて感じます。「Everything Will Be Alright In The End」でもこういったサウンドにうまくチューニングされたメロディメイクの魅力を味わえますが、彼らの音楽性開拓の旅の始まりはこのアルバムではないでしょうか。


3位:Weezer (White Album) (10th / 2016)
https://open.spotify.com/album/6StNTJJ7Yq3Hf121kLvPBz?si=kLulJi6vRfeWerkyvjimmg&dl_branch=1

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 ウィーザー低迷期脱出後の最高傑作はこのホワイトアルバムでしょう。リアルタイムでの初めてのウィーザーのアルバムは「Pacific Daydream」だったんですが、そのリリースの前にウィーザーを知って、その時の最新作が今作だったので、こっちも思い入れ深いですね。むしろこっちの方がよく聴いてたと思います。
 非常に高クオリティな名曲群が揃う疑いようのない名盤。特に緩急のある歌メロはJポップからの影響も感じさせるので、初めてウィーザーを聴こうって方にも自信を持っておすすめできるアルバムです。サウンドは前作ほど攻撃的でもなく、なんならいちばん雰囲気が近いのは1stかもしれないですね。貫禄のある、かといって尊大ではない、成熟したウィーザーの魅力がしっかりパッケージされています。
 その年度のグラミー賞ベスト・ロック・アルバム部門にノミネートされたりもしています。近年ではウィーザーの新しいマスターピースのひとつという認識は結構固まってきているのかもしれないですね。


2位:Pinkerton (2nd / 1996)
https://open.spotify.com/album/3jWhmYMAWw5NvHTTeiQtfl?si=XrwcYP-lSiiynn4tOcmrEg&dl_branch=1

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 歌川広重の東海道中五十三次の浮世絵がアイコニックなアルバムジャケット、タイトルも日本が舞台のプッチーニによる未完の名作オペラ「蝶々夫人」のことを指す「ピンカートン」とリヴァースの趣味である日本要素を多分に盛り込んだ和風な印象ですが、中身は衝動性に溢れた乱雑なオルタナロックです。複雑な感情を痛々しく吐露するようなボーカルや歪んだバンドサウンドは、若者の抱える空虚な悲しみを代弁するかのように激しく鳴らされます。このアルバムが彼らの1stアルバムだと言われた方が納得できるぐらい、アグレッシブでエモーショナルです。
 このアルバムもロングヒットを記録しましたし、ロックの歴史的にも時代の名盤として紹介されることも多いんですが、リリース当時の反応は悪く、初動でのセールスは振るわなかったアルバムでもあります。セルフプロデュースのアルバム制作に加え、そのエモーショナルすぎるスタイルは1stで獲得したファンを困らせる原因でもあったんですね。そんな今作の再評価に大きく貢献したのも、リヴァースの愛した日本だったという背景もあります。
 ウィーザー史上最も激しく、センチメンタルなアルバム。僕も最初に聴いたときは全然ハマれなかったのを覚えています。話していくうちにだんだん打ち解けられ親密になっていくような、味わい深い音楽体験だったと思います。


1位:Weezer (Blue Album) (1st / 1994)
https://open.spotify.com/album/1xpGyKyV26uPstk1Elgp9Q?si=tpIYDlK_Qt-sEWCZUXqfGA&dl_branch=1

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 不動の1位。コネチカットからロックスターを夢見たうぶな4人が、リック・オケイセックのプロデュースによって見出され、淡いギターサウンド、ささくれ立った情熱的なボーカル、稀代のメロディセンスをもって忠実に、かつ抽象的に誰かの青春の情景を描写するレジェンダリーな1枚。彼らの赤裸々な独白は「泣き虫ロック」と呼ばれて親しまれ、今作による300万枚のメガセールスをもって一躍、ロックシーンの寵児に。等身大のロックスターとしての記念すべき大きな1歩です。
 このアルバムのサウンド的特徴としては、飛び道具的に用いられるアコギにあると思います。ノイジーなロックサウンドとのコントラストは、素朴な若者の心情を非常に鮮明に表していますし、疾走感のある曲にワンポイントの爽やかさを加味してくれていて、イヤな暑苦しさを感じさせません。シンセやハーモニカなど各曲にわかりやすく特徴的な楽器が効果的に配置されていて、曲の強度を一層強めています。
 曲展開のおもしろさもアルバム全体を通して見られる共通点で、一辺倒のメロディの押し売りではなく、計算された曲全体のプロポーションの良さがあります。「Surf Wax America」でのボリュームダウンからの高揚感のあるラストスパートや、「Say It Ain't So」での裏サビでの感傷的なシーン、徐々に盛り上がっていく長尺の大団円曲「Only In Dreams」など、見事なまでに作り込まれていて一切の隙がありません
 最初から最後まで余すところなく名曲なので、気づいた時には聴き終えてしまっているぐらいです。そんでもって、アルバム1枚を聴き終えたあとのしっかりとした満足感もあります。それが名盤っていうものなんですよね〜。魔法ですね。こおアルバムランキング企画では毎度1位にくるようなアルバムはもう魔力の塊みたいなもんですね。俺たちは音楽を聴くことで魔力を喰ってんのよ。生きるための活力になる魔力をね。


というわけでウィーザーアルバムランキングでございました。いかがだったでしょうか?
これを読んで少しでもウィーザーを興味を持って、聴いてくれる人が増えてくれたら嬉しいです。初めは1stのブルーアルバムから聴くのがやっぱりいいんじゃないかな、と思います。アクも強くないし、何よりめっちゃ良いし。


新しい発見もたくさんあって今回もやってて楽しかったです!
次のマラソンターゲットは未定で〜す。また気まぐれに出没するので、のんびり待ってていただけるとありがたいです。


それではまた次回お会いしましょう。

ほな〜。

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