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ワイルドな昔

トシを取ると、歴史が気になり出すのはなぜなんだろう。若い頃みたいに自分のことだけが関心事ではなくなったり、過去に生きた人たちがいたからこそ今自分も生きているんだということが胸に迫って感じられるようになったからだろうか。それに、かつて自分がいた「昭和」の時代はすっかり過去として扱われるようになり、当時意識していなかった良さみたいなものを再認識する機会も増えた。そうやって消えていった、名前も付けられていない尊きものが、遡ればもっとたくさんあるということに気づき始めたからかも知れない。

「忘れられた日本人」に出てくる、歴史に名を刻むことなく昭和の初期に地方に生きていた人々の日常は、自分のそれとは全然違う。今ではあり得ないほど粗野だけれど、ほとんど見かけないそのワイルドさ、逞しさ、生き生きとした生き様、、、そこに、失われた世界への羨望のようなものを感じてしまう。

今のこの日常も、いつかは過去となる。宮本常一のような人はいるかどうかわからないが、ネットに転がっている記録から、未来の人たちはいくらでも市井の人々の過去を閲覧できるだろう。未来の人たちは過去を羨ましいと思ってくれるのかな? たぶん、思わないかも、、、そう考えると、ちょっとつらい。

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