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私の知らない私たち

私は、さまざまな成分でできている。

住所。名前。職業。
全部私だけれど、どれも私の全てではない。

私を形作るものはいくつもあって、ひとつひとつの要素と出会い、時間を重ね、共に経験をすることで、私が作られてきた。

何か一つでも違う成分が混ざっていたら、今の私は居ない。

勇気を出して手を挙げたあの瞬間も、挙げようとした手を引っ込めたあの瞬間も。
大切な人に出会ったあの日も、大切な人を失ったあの日も。

どこを切り取っても、今の私に繋がっている。

でも、私が知っているのは、今この瞬間を共に迎えている私だけで、昨日のあの時点でさようならした私のことは知らない。

私が、「これは私です」と言ってあげられない、私。
自分の手から離れてしまった、私。

彼女は今、何処にいるのだろう。
出会う術も、知る由もない。

無数に存在しうるはずの、私が知らない私たち。

どうか何処かで、お元気で。

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