2023/7/25 気になるニュース⑮ EVの不都合な真実、メリットデメリット、地球温暖化の簡単なおさらい
⭕ 地球温暖化対策の中で自動車によるCO₂(二酸化炭素)の排出量を減らす目的により、電気自動車(Electric Vehicle)へシフトが推進されていますが、EV先駆けである西欧でも現実的な問題や矛盾に直面しています。簡単にまとめてみました。
① 日本車潰しの為のEV戦略
⭕ 地球温暖化やCO₂による議論はひとまず置いておいて、そもそものEV推進は「日本車潰し」の為、地球環境保護左派と共に欧米で発祥された戦略との見方が大きい。ざっくり言えば「地球温暖化ビジネス」の一環。
自動車発祥の地である西欧は、日本に対して近年の内燃機関技術、ハイブリッド車技術で大きく水を空けられ、その為に脱炭素社会なる「ルール変更」を強烈に薦め世界は「カーボン・ニュートラル」を基準とし始めました。
また、近年の化石燃料依存度の脱却を目指し、産油国への経済的牽制を含めた戦略ともいえます。
⭕ 以下でも説明しますが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書を誰も完全否定論破出来ない為、世界的にはCO₂排出量を減らす脱炭素社会に合意せざるを得ない状況にはあります。
日本政府も2050年までに「カーボン・ニュートラル」を明言し、企業に於いてもそれに準ずる方針となりました。
② 地球温暖化の簡単なおさらい
(1)IPCC第5次評価報告書(2014)
⭕ 第二次産業革命以降(1880年頃)、化石燃料の使用が増えた事や人口の増加により、わずか140年程で平均気温が0.85度上昇しているのは事実です。
報告書によれば「人間活動による支配的な要因が極めて高い事」、「CO2の累積総排出量と地表面の平均気温の変化は おおむね線形関係にある事」が結論づけされました。
⏺️ 人間の手によってもたらされた、とされる急激な気温上昇は、現在までの地球の歴史では皆無の為、地球の気候変動にどのような影響を及し、生態系や降雨量等が変化するリスクをシミュレーションし訴えています。
★ 急激な地球環境変動は、ある日突然「閾値」を越えた瞬間に危険が発生するリスクがあり、映画みたいに、いきなり氷河期に突入する可能性も否定できません。
★ 今の地球は間氷期(氷期と氷期の間)と言われ、夏でも氷が溶けない状態の寒冷期(寒冷傾向が強い時期)と呼ばれている。
(2)パリ協定(2015)
⏺️ 2015年フランスのパリにて「第21回、国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP21)」で合意された、京都議定書に代わる2020年以降の温室効果ガス排出(GHG)削減に為の新たな国際的取り組みです。
● 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
● そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
③ EVのメリット・デメリット
簡単にまとめてみると、
⭕ メリット
● 走行中に二酸化炭素を排出しない
● 災害時に電源として使える
● 騒音や振動が少ない
● ランニングコストの削減
⭕ デメリット
● 航続距離が限られる
● 充電インフラが不足
● 初期費用が高い
● バッテリーの劣化が早く寿命が短い
● バッテリー生産の環境への影響
● 車両が重く、タイヤへの負担が大きい
EV最大のメリットは「走行中に二酸化炭素を排出しない」、その為に作られたようなものです。
ランニングコストの削減(燃料費、オイルメンテナンス費等)も大きな魅力です。
しかし、デメリットも多く「充電インフラの不足」「バッテリー生産の環境への影響」などは大きな問題であります。
④ 最近のEV事情
(1)ノルウェーのEV事情
⭕ 世界でもっともBEV(バッテリー電気自動車)が普及をしている国は北欧のノルウェーと言われており、普及率は80%と言われています。急速充電設備も充実しておりに政府よる補助金により割安に購入できる事から普及率は一気に高まりました。
2022年ノルウェーのガソリン価格は、1リットル=約2.7USドル(約380円)とかなりの高単価もあり、EVに大きくシフトした要因のひとつです。
★ 2022年平均的な燃費と電費で比較すればBEVはかなりお得
● ガソリン車 15.0km/L 1L=380円 1km走るのに=25.3円
● BEV車 6.0km/kWh 1kWh=56円 1km走るのに=9.3円
✅ しかし、脱炭素に対応するノルウェーは最大の矛盾があり、EVの爆発的な普及の裏にある政府による補助金の源泉は、ノルウェー産の豊富な石油や天然ガスを他国へ輸出し得たもので、自国で発生するはずのCO₂を他国になすりつけているだけというものでした。
⭕ また、ロシアのウクライナ侵攻後に情勢は大きく変わりました。ロシアから西欧への天然ガス供給が止まったり、原油価格の高騰に準じて、電気代が高騰し始めました。
首都オスロ近郊では1kWh=1ユーロを超えるようになり電気代はガソリン価格以上となっているようです。
★ 2023年現在の燃費と電費で比較すれば完全に逆転
● ガソリン車 15.0km/L 1L=280円 1km走るのに=18.6円
● BEV車 6.0km/kWh 1kWh=156円 1km走るのに=26.0円
(2)フォルクスワーゲン、一時的にEV減産
⭕ EV需要は落ち込み、生産縮小に迫られています。大手の米国テスラ社や、中国のBYD社の大幅ディスカウントもあり現在、EV車は世界的に「供給過多」となっております。
(3)EVシフト幻想から覚めた欧州
⭕ 「ゴールポスト」を少し動かしました。やはり、EV一本では経済の主体である企業存続が難しいと判断しました。
(4)米国のEV事情
⭕ EVのパイオニアと言えば「テスラ・モータース」です。世界のEVシェアで6割を誇る巨大企業ですが、米国政府政策の大きな恩恵を受けている事は周知の事実です。
バイデン政権の目玉ともいえる「インフレ抑制法」が2022年8月16日に成立し、予算は3690億ドル(約54兆円)。支持層がクリーンエネルギー派のバイデン大統領の虎の子政策です。
(3690億ドルは2022年~2031年にかけての予算)
直近の米国インフレ対策と気候変動に対応する法律で、米国製のEVにのみ購入時に、最大7500ドル(約100万円)補助金(税額控除)をつけるという代物。各国政府は当然批判しました。
✅ しかし、テスラに追随しGMやフォードの生産増強により、米国EV市場は西欧と同じく「供給過多」となり、テスラの意図的な値下げもあり、値崩れを起こし始め、弱小メーカーは淘汰されはじめました。
また、EVの販売台数に応じての、郊外の急速充電器の配備は追い付いていないのが現状で、民間企業も補助金が無ければ設置費用の採算が合わないのでしょう。
(5)中国のEV事情
⭕ 中国は世界で最もEVが売れている巨大EV国家で、製造メーカーは300社に及ぶとされています。
中国は西欧と同じく日本車の内燃機関技術に後れをとっている為、EV製造に対して政府からの税制優遇を受ける出来る仕組みを作りました。それによりEVの普及は2023年には900万台、普及率35%に達すると予測されています。また、バッテリーに必要なレアメタルを自国で賄えるという最大のメリットを活用し、日本車に対抗する手段として取られたのは頷けます。
前述した米国「テスラ・モータース」の影響も大きく、上海工場進出に於いて、通常、外資企業の自動車工場は中国との合弁会社(中国共産党傘下)が条件だが、テスラは初めて単独出資が認められ、同車の購入税は税額控除で大きく優遇されました。 また、上海工場で用いられる部品の8割は中国製を指定、自国の部品メーカーの需要を含め、中国全体の雇用拡大が大きな目的です。
⭕ しかし、ここに来てテスラと中国メーカーの生産増強により、欧米同様「供給過多」の波が押し寄せており、過剰在庫は年間1500万台にのぼると言われております。これは中国の普及台数以上の在庫が眠っている計算になります。日本経済新聞
⭕ 追い打ちのようにテスラモータースCEO、イーロンマスク氏は、上海からの海外輸出拡大を目指し、工場の自動化、メガキャスティングにより生産能力向上を実現し、中国メーカーは大量倒産、中国共産党より大きな懸念を示されています。
⑤ EVの不都合な真実
⭕ EVを普及させる大きな目的は、気候変動に影響するとされる温室効果ガス、主に自動車からのCO2排出量削減である。副次的にバッテリーマネージメント技術の向上や災害時のサブ電源として活用等、メリットは多彩にありますが、環境問題として取り組んだ場合や経済的にも、そして環境問題においてもEVの不都合な真実が多いのは事実です。
(1)EV車の墓場
先述のように、中国では作り過ぎたEV車の在庫過多を企業は放置し、既に墓場となっている事が大きな問題となっています。EVのバッテリーにはコバルトやニッケルなどの材料が多く使われており、これを放置していれば、土壌や水を汚染する原因になります。
環境の為に開発されたEVが環境をさらに壊すという悪循環。
そして、EVシフトが進んでいる中国が世界で一番、二酸化炭素を排出している国であるという最大のジレンマでしょう。
(2)電気自動車はガソリン車よりもCO2排出量が多い
⭕ マンハッタン研究所は最近、はっきりとした数値が見えにくい、EV製造に伴う上流排出量(原料採掘から製造まで)において、10万キロ走行する迄は、内燃機関車(ICE)より電気自動車(EV)の方が多くの温室効果ガス(GHG)を排出していると研究結果を発表しています。
✅ これは、環境左派にとってEVの最も不都合な真実でしょう。
(3)トヨタ自動車 会長のメモ
⭕ また、トヨタ自動車は全方位戦略としてEVシフトには慎重な姿勢を貫いて来ました。先日、トヨタ自動車の豊田章男会長が関係者に配ったメモに、これまたEVの不都合な真実が書かれており、WSJ(ウォールストリートジャーナル)が取り上げ話題になりました。
下記の動画内容を抜粋すると(高橋洋一チャンネル)
米国において政府の定める2030年CO₂制限の為には、
● 120万箇所の充電施設が必要となり、1日400か所の充電施設の申請をしなければならない。
● 大半の公共施設で充電するには8時間~30時間掛かる。
● 2035年までに想定されるバッテリー需要を満たすためには、リチウム・コバルト・ニッケルなど必要なレアメタルが不足しており300か所程の新しい鉱山が必要となる。
● 航続距離の長いバッテリー搭載のEVを1台製造するにあたり使用される原材料であれば、同じ航続距離のPHEV(プラグインハイブリッド車)を6台、HEV(ハイブリッド車)なら90台製造出来る。
⭕ 先回の株主総会では、環境ビジネス推進派のトヨタ自動車株主はEVシフトの鈍い豊田章男会長の不信任案を出すなど袋叩きをしました。環境左派にとってトヨタ自動車はとても煙たい存在で、不都合な存在であります。
⭕ 直近のシリコンバレー銀行破綻の直接原因は流動資産(1年以内に現金化出来る資産)保有水準が低く、急速な預金取り付け騒ぎに対応できなかった事であるが、そもそも経営状況は悪く、環境ビジネスファンドなどを積極的に販売していた為、環境ビジネスの矛盾の浮彫や、状況の悪化と共に倒れたという見方も出来ます。
✅ トヨタ自動車はそもそもEVを否定しているわけではなく、直近の需要の限界を計算していただけであり、政府の補助金政策に頼らず、消費者が求める車づくりを徹底していただけであります。生産性や在庫日数を重視するトヨタ自動車が作り過ぎて在庫放置なんてありえません。
気候変動に対する脱炭素対策は何も完全EVだけでは無いと言わんばかりに、HEV(ハイブリッド車)や水素自動車(液体水素エンジン)の開発を平行しており、またバッテリー技術開発(全個体電池、ペロブスカイト太陽電池のエネコートテクノロジーズとの共同研究)などEVの航続距離延長や再エネの取り込み等、全方位でカバーしています。
(4)エネルギー変換率は?
⭕ 燃料から動力までのエネルギー変換率比較(平均的数値)
(作成 ぼなんざ本舗研究所)
⏺️ ガソリン車のエネルギー変換率 = 約35%
内燃機関のE変換率 = 35% (燃料から動力)
⏺️ EV車のエネルギー変換率 = 約16%(50%×40%×80%)
火力発電のE変換率 = 50% (燃料から電気)
送電時等の放電ロスを含めたE変換率 = 40%
EV車のE変換率 = 80% (電気から動力)
(エネルギー変換率は平均的数値、消失分のエネルギーは熱エネルギーとして放熱される)
✅ 自動車に限って言えば、直にエネルギー変換が可能な内燃機関のエネルギー変換率が未だ有効であり、回生エネルギーを併用活用するハイブリッド車が、世界中の充電インフラを考慮すれば、現在のところ最も有用であると考えられます。
そもそも燃料を燃やし、水を沸騰させてタービンを回している火力発電が主力な事を考えれば、結局、CO₂を排出しています。また、電気は放電する為、発電の際の需給バランスが非常に重要で、長く作り置き出来ない欠点もあります。
(火力発電ではCO₂を回収して再利用する、カーボンリサイクルの実施に向け動いています)
⑥ まとめ
⭕ 環境問題として捉えるのなら、EVの下流だけを切り取って話をすれば、結局普及率は頭打ちになます。世界的には上流も視野に入れ、EV一辺倒路線の軌道修正は徐々に行われていくと思われます。
⭕ しかし、排気ガスを出さないEVは不特定多数への大気汚染公害被害を防ぐ事が出来、騒音が少ない為、住宅地、郊外では推奨される車両であると考え、自動運転技術もEVとは相性が良いと思われます。
また、研究開発途中での副次的な収穫(バッテリーマネジメント技術の向上、EV車による新たな生活スタイルの発掘など)が生まれる可能性が大いにあります。
世界のエネルギー事情を考えれば、化石燃料一辺倒であるのはリスクが大きいのは事実で、日本にとって有事にも対応出来るエネルギーの多様化や、技術革新は必要であります。
もし、「夢の核融合発電」が実用化すれば、エネルギー革命となり、電気価格は爆発的に低下し、EVにとっては大きな追い風となり得るでしょう。
★ 参考サイト
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