移動の記録/奈良井の宿場町と民宿(22年6月)

奈良井は生きている宿場町

奈良井宿では「いかりや町田」に宿を求めました。「奈良井宿は生きている宿場町」という名言がありますが、「生きている宿場」を体験するためには、民宿の投宿がおすすめです。


ここはご夫婦で経営されている民宿です。店主によれば、民宿経営は60年の歴史があるとのこと。ご先祖は、薄く削り取った木材を円形に曲げて作る「曲げ物」で生計を立てていたそうです。昔は「曲げ物」が地場の経済を支える重要な産業だったといいます。

玄関から最も奥の部屋まで長い道のり⁉︎

この宿に泊まると建築物が不思議な構造になっていることに気づきます。玄関から入って、一番端の部屋に至るまで、相当な距離をズンズンと歩くのです。店主曰く「50メートルぐらいかな」とおっしゃっていましたが、これは究極の“ウナギの寝床”です。


こうした細長い建物は、間口が広いほど多額を納税させられることから、あえて間口を狭くし、奥へ奥へと建物を長くしたという「江戸時代の節税の工夫」だったといいます。

細長い廊下は奈良井宿ならではの特徴とか

この宿は室内をリノベーションされているので、“伝統建築の名残”は視覚的には感じ取ることができませんが、江戸時代の建物の構造がどうなっていたかをリアルに体感することができます。


昔ながらの宿のスタイルを残す民宿


さて、民宿は古くからある日本の宿のスタイルで、旅の人に自分の家の部屋を貸し与えたことにルーツがあります。今でも、経営者であるご主人やその家族が同じ屋根の下(あるいは同じ敷地内)で生活しているケースが多いです。


そういう意味で民宿は、店主に気軽に質問もできるし、また土地の歴史についていろいろと教えてくれるなどの、他では得難い利点があります。当宿もフレンドリーな店主さんで、とても会話が弾みました。

心尽くしの品の数々

旅館業法上は簡易宿所に分類され、ホテルとは違うので、民宿ではちょっとした不便を感じることもあります。たとえば、当宿にはカギのかからない部屋があります。これもまた“民宿らしさ”の1つです。昔は部屋の仕切りが「ふすま」だったので、部屋にカギがかからないのは当たり前でした。各部屋にトイレがないというのもその1つです。ただ、この宿では、居室の扉を開けてすぐのところにトイレがあるので、とても安心でした。


お食事も“プロによる豪勢な料理”とは行きませんが、郷土の味や家庭の味を満喫することができます。特にこの宿では、素朴ながらも心尽くしの、数々のお食事を用意してくれました。

最近、テレビドラマ「正直不動産」がヒットしましたが、店主の、利益を削ってでも客をもてなすという“正直経営”に頭が下がりました。〝民宿派〟のひとりとして応援したくなる宿です。

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