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コロナを乗り越えた「アメ横商店街」の行く年来る年と多国籍化の課題

アメ横商店街といえば年末の風物詩。かつて東京・上野のアメ横商店街は都民の「食の台所」だった。年末の風物詩となったのは、当時でいう「新巻鮭(今はほとんど見ないけど)」や「数の子」など正月用の食材の調達先だったから。2022年12月27日から31日までは約150万人の来街者が見込まれるという。

コロナ禍前は170万人が訪れていたらしい。確かに、当時のこの時期は立錐の地もないほどの大賑わいだった。ところがその後はガクンと落ち込み、店舗にとっても苦しい時代が続いていた。


2020年コロナ禍のアメ横
店舗にとって先の見えない日々が続いていた


今年はようやく本格的な回復を取り戻したようで、現場に行ってみると、「立錐の地なし」に戻っていて、黒山の人だかりだった。


あの百果園さんは閉めてしまった?

だが、「アメ横商店街」が年末の賑わいを回復したからと言って、手放しで喜ぶのは早計だ。ここ「アメ横商店街」でも、今やその「アメ横ならではの年末の雰囲気」を味わえる「食材店舗」はまるで少なくなっているからだ。

ここにあったはずの魚屋さん、あそこにあったはずの果物屋さん――長年、アメ横の顔を作り続けてきた店舗が姿を消しているのである。


中華食材店、店舗面積拡大中

そして、これらの店と交代するようにして目に付くようになったのが中華食品店や中華物産店だ。

私は日本のインバウンドビジネスの盛り上がりとともにこの「アメ横商店街」も定点観測し、またテレビ番組でもコメントさせてもらっているが、コロナを経てなお「中華街化」「アジア街化」がいっそう進んだと実感している。

ここに中国含むアジア資本が集まる理由の1つには、「アメ横商店街」が醸し出す“ごちゃ混ぜ感”のあるアジア的カオスの心地よさがあるかもしれない。彼らの店舗面積は、間違いなく2019年に比べて大きくなっている。

広告塔をジャックするのは中国のマオタイ酒
アメ横は今や食の屋台街

景気後退が予想される2023年は、都内屈指の賑わいあるアメ横でもさらなるシャッフルが進むのだろうか。空き店舗をどんな商売が埋めていくのかは観察対象の1つだ。

以前、アメ横関係者が「日本人には商売で闘うハングリー精神がなくなった」と嘆いていたのを思い出す。「商い」という実業も、昭和の遺産になってしまうのかもしれない。

年末の風物詩としての「アメ横商店街から中継でーす!」は、果たしていつまで続くのかとハラハラして見守っている。


余談:アメ横の水産品には独特な商売のやり方がある。大トロのトレイにはマジックで6000円、中トロのトレイには3000円と書かれている。大トロ1パックと中トロ2パックで1万2000円だが、年末30日には5000円という驚きのディスカウントが行われていた。いかにもダイナミックな叩き売りだが、もともとの値段はなんだったのか、なぜこういう商売が成立するのか、本当に信用に足る商品なのか――そんな深い疑問に包まれてしまう。アメ横は戦後の闇市が出発点だと言われているが、“商売のカオス”も今なお健在だ。

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