そういえば、
マシューが行ってしまうしばらく前に言ってたことがある。

「人生にタラレバは無いんだぜ。」

あの時こうしていたら、今と違う人生だっただろうか〜
みたいなこと。
そんなことは無いんだって。

マシューは昔、ハワイで不思議な女性に魂を読んでもらったことがあるらしい。

「あなたとあなたの母親とはとても深い縁があるわ。何度も一緒に生きて、今回も一緒にいようって決めて、約束して来てるの。しかも、今回は母親の面倒をみるってことを契約した上でやって来てるのよ。」

誰にも言ってない。マシューは病気の母親の面倒をみていた。
だから、一瞬驚いた。でも思ったんだ。

「そうか、だから俺、なんだか今回の人生に積極的になれなかったんだな。本当はさ、ずっと小さい頃から外国に行きたかったんだ。でもさ、病気の母親、置いていく訳には行かないだろ。そうなるって約束を魂は知っていたから、なんだか辛い人生だなって感じてたんだよな。いつだったか、母親が病気になる前に家を飛び出していたら、どんな人生だったんだろうって考えたことがある。でもさ、どんな風に生きるのかある程度決めて来てるんなら、過ぎた後にタラレバなんか無いんだよな。」

そう言っていた。

マシューは、晴れて自由になった後にすぐには出ていかなかった。

「なんだか怖くなっちまったんだ。何もかもが。そしたら動けなくなったよ。」

　
それも、決めて来たことだったのかな？

だけど、僕から見たらマシューはすっごく勇気があって、強くて、逞しい男だ。
それは、本当はそう見えただけなのかもしれない。

人は不安や恐怖が根底にあったら身動きなんか出来ない。

どうやって、吹っ切ったんだろう。

マシュー。

きみはずっとひとりで生きて来たね。
ひとりで悩み、ひとりで解決し、ひとりで乗り越えて。

どうやって、吹っ切ったの？
どうやって、決断したの？

人生にタラレバは無い。
いつも、三叉路でどの道を選ぶかは、その時の最高最善の選択だと確信するよ。

ああ、僕もマシューのように、確信できるようにするよ。

そうだよね、信じれば、そうなるよね。

今、どこで、何してるんだろ、マシュー。
会いたいな。