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音楽にまつわる思い出-Romeo/Basement Jax

フランス・イギリスへの旅行の直前だった。

当時付き合っていた彼女と何かの理由で大きめなけんかをした。
元々、私たちはお互いに言いたいことをぶつけ合っていたので意見の相違からけんかになることが多かった。
旅行前でもあったし、ひとまず仲直りすることにしたのだが、その条件として彼女から一つの要求が出された。

「旅行中に旅先で毎日手紙を書き、送るように」

メールや電話ではなく「手紙」である。
幼少の頃より文章を書くのが得意ではなく、字もきれいとは言えないレベルであるため中々にハードルの高い要求ではあったが、今は旅行前でもあり時間がないためこの要求を呑むしかなかった。
旅行前に、旅行日数より少し多めのエアメール用の封筒と便箋を買いこんだ。

フランス・イギリスへ

旅行先では、毎日夜になると日記のような手紙を書いた。
今日はここに行ってこんなものを見た、こんなものを食べた、こんな事があったなど、大して面白くもないような内容であったが、彼女のために便箋の紙面を埋めるべく色々と書いた。

最初はフランスから、次の目的地イギリスからも毎日手紙を書き、毎日一通ずつ送った。

海外の郵便事情

とはいえ、海外から手紙を送るのは時に不安定要素を含む。
この旅行よりも数年前、私がタイに旅行する際、同じ職場の友人たちが海外からの郵便物を受け取ってみたいという要望があった。
旅行中に快く仕事をヘルプしてくれる友人たちのためにタイの北の方を旅した時に、よくあるバンコクではなく北の方の少し珍しい風景や山岳民族などの写真が印刷された絵葉書を使って7枚ほど郵便を出した。
小さなホテルだったが、そこにいた英語ができガイドもしてくれた男性に切手代に相当するお金とチップを渡し、郵便物を託した。
しかし、帰国してから数か月たってもその絵葉書は一通も届かなかった。
信頼できる感じの男性であったし、切手代など大した金額ではないので彼が盗んだとは思えない。
純粋に海外の郵便システムのせいだろうと思っている。

そんな経験もあったため、フランスやイギリスの郵便システムがどれほど信頼できるものか不明ではあったのだが、タイよりは信頼できると思い彼女の言う通り毎日手紙を書き、毎日手紙を送り続けた。

フランスでは、ホテルの一角に絵葉書なども売っていて、郵便を受け付けてくれるカウンターがあった。
夜に手紙を書き、朝にそのカウンターで手紙を出す。
3日目にもなると、カウンターのおじさんに

「今日もガールフレンドに手紙を出すのかい(笑)」

とからかわれる位には覚えられてしまった。

私は海外に行くと、ホテルのテレビで音楽番組をチェックするのが好きだ。
MTVなど、一日中プロモーションビデオを流しているチャンネルがどの国にもあるものだ。
タイでも、エジプトでも、インドでも音楽チャンネルを見てその国の音楽事情を考察するのが好きだ。
フランス・イギリスだとMTVが強かった、あるいは泊まったホテルの事情かもしれないがMTVしか見られなかった。
遊びに出かける日中以外、朝と夜の時間はある程度決まった曲を毎日ローテーションで流している。
夜はそのMTVを流しながら彼女への手紙を書いた。
その中で毎日流れてきたのがこの曲だ。

Basement Jaxx の "Romeo" という曲。
Basement Jaxx はイギリスの二人組のダンスユニット。
明るめで、自然に体が動くダンスミュージック。
実際の映画なのか、このPVのために撮り下ろされたものかわからないが、インド映画のシーンがサンプリングされたような映像がひたすら流れるPVが印象的で忘れられず、ロンドンに移動した後にピカデリー・サーカスにあったタワーレコードでこの曲のCDを購入した。
イギリスでは、時間が許す限りレコード屋巡りをしたかったのだが、このタワーレコードも結構大きく、相当な品揃えだった。
他にも、当時どこかで聞いていて曲名も知っていたのにCDを見つけられなかったバーナード・パーディーのCold Sweatの入ったPurdie Good!もあっさり見つかった。
一応、リンクを貼っておく。

ついさっき、仕事の時に適当に流していたSpotifyからBasement Jaxx の "Romeo" が流れてきたので、当時のことを思い出し書いてみた次第だ。
仕事中だというにも関わらず。

手紙の行方と後日談

さて、フランスとイギリスで書いた手紙だが、私の不安をよそに、数日分ずつまとめてだったようだが無事に彼女のもとに届いていた。

その時の彼女とは、どうなったか気になることだろうと思う。
その後も色々ありつつ、たくさんけんかもした。

しかし、その当時の彼女は、今では私の妻という肩書でタイにまで着いて来てくれて今でも一緒に暮らしてくれている。
結婚前に言いたいことをたくさん言って、お互いの考え方の溝を埋めたこともあって、今ではそれほど大きなけんかをすることもなく、穏やかな日々を送っている。

人生は分からないものだ。

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