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捨てる神あれば拾う神あり

前回からの続きで、観光狙いのゲストハウスには非常に辛い状況、暗い影をおとす、なんてもんじゃない影響。
やはり10月からちょっと営業を停止して色々考えようかな〜と思っていた。

そこに知人から相談の連絡が入る。
「映画のロケ地を探してる人がいるから相談に乗ってやってくれるかい?」というもの。「おもろいやん!」と特に谷地頭の家についてではなく、単純に不動産家としておもろい相談やなと思った。そんな何度もある話じゃないので、これは絶対がんばりたい!他も同じくがんばれよ…。

まあ、ともかく、話を聞くことに。
函館を舞台とした映画で、佐藤泰志の小説の映画化第5弾だという。佐藤泰志とは函館出身の小説家でファンも非常に多い。今までの映画作品も若き日の菅田将暉やオダギリジョーなど錚々たる面々が出演している。人気も非常に高い。暗いけど…。

「めちゃめちゃええやんけ!」

条件は、一戸建てですぐ11月から撮影に入れて、小高い場所にある景色のいい場所で、バルコニーがあるところ、だという。今9月後半ですよ。そんな都合よくそんな条件の家なんて…。

「あるやん!」

「私の所有している家がバッチリな気がします。」ということで、一行をご案内して、大変気に入ってもらえ、他にも色々と一応探してみたが、かなりリフォームが必要だったり、すぐに貸せるなどなど、なかなか条件に見合うのは難しく、ここがそもそもいいのではということでトントン拍子で決まった。

こんなこともあるもんやな〜、と。
実際に2021年10月から映画館で上映され始めた。まだ見に行けてないけど…。

チケットまでいただいたのに…。

しかし、問題は映画が長々続くわけではなく、撮影で賃貸するのは1ヶ月だけだ。12月からはどうするかを決めなくてはならない。と、なりそうだが、実は解決済みだった。映画に貸す前に実は知人の家族がDIY可能な賃貸住宅を探しているという。なかなかDIY可能な賃貸っていうのものは少なく、かなりボロボロなものしかない場合が多い。そこで自分の所有物ならOKだなと思い至り、提案したところ、すぐ借りたい!となった。時期が2月からでもいいということなので、映画撮影後に住んでもらうこととなった。もうあれから1年経過する。

階段の木質壁は真っ白にペンキで塗装され、一部アートな模様が入り、奥にあった納戸は壁に工具がびっしりのDIYルームに。他にも至る所に個性的な棚ができ、木で出来たソファや子供用のおもちゃも自作していた。自分が作っておいていったテーブルも加工され、真ん中に収納ができていた。なんかすげーな。おもろい。

まだまだいろんなものを作ったり、構想がたくさんあるらしい。行くたびに変わっている家が楽しみだ。で、この借りてくれいる一家の旦那がアメリカ人。それで、なんの仕事をしているかというとスウェーデンの仕事をリモートでやっている。アメリカ人が函館に住んでいてスウェーデンの仕事をする。もう想像するのやめよ。

まあ、なんやかんや思いつきで物件を購入してみたが、いろんな人のつながりや出会いでおもろい展開になっていった。『結果的に』こうなった訳でなにも狙った訳では全くなかった。当然不動産を購入するとなるとある程度お金が必要で、あるいは借入で、と簡単に大根を買うようにはいかない。試算をして採算を合わせなければならない。

しかし、ここを買ってなければ、この展開もなかった。まあ、この建物はうまく直せば、宿泊がダメでも賃貸で貸せるだろうし、なんとかなる算段はついていた。しっかりした計画とほんの少しの思いつきと思いきりが重要なのかもしれん。


前回の記事はこちら↓



数年前は民泊、ゲストハウスが流行り、空き家の活用もされ始めてきていた。そんな流れに乗じて、自分もゲストハウスを始めた。観光地とは離れたきつい坂の上だったが、自然や眺望が魅力的な物件だったので、他にない特徴を出したいと思っていた。
 俄にキャンプブームがきていることから、この建物の場所的利点も利用できると考え、家の中にテントを入れて室内キャンプ気分を味わえる設定に決めた。庭では焚き火を眺められ、BBQも楽しめるようにした。キャンプ初心者でも雰囲気だけでも楽しめるし、子供は絶対喜ぶだろう。そんな構想を練りつつDIYを進めていた矢先にコロナ禍がきた。ようやくゲストハウスとして夏頃始動した。少し落ち着いてきていた時期だったが、秋以降の目処が立ちそうになかった。これは一旦今後の展開を考える必要があるな、と感じていた時に予期せぬ依頼が舞い込んできた。
 「映画のロケ地を探している」という話だった。知人から協力してやってくれという話があり、その映画関係者さんと打ち合わせをしたところ、景色がよく、バルコニーがあってすぐに使える戸建て住宅とのことだった。「そんな都合のいい家無いやろ」と一瞬思ったが、すぐに見つかった。そう、ゲストハウスにしていた建物だ。ここしかない、と思い、早速案内すると、トントン拍子に決まった。1ヶ月間映画に使ってもらうことになり、平時でも観光客の少ない時期だったので、まさに渡りに船だった。そして、体験しようとしてもなかなかできることではないので、とても貴重だった。作品も佐藤泰志の小説の映画化で函館作品第5弾の『草の響き』。映画制作に携われたような気がしてとてもいい経験だった。
 しかし、今後ずっと続くわけではないので、それ以降はどうしようかという問題は残っている。そこに知人から戸建てのDIYがOKな賃貸住宅が無いかという相談がきた。好きにDIYしてもらってもいいな、という気持ちがあったので、またもや自分の建物を進めてみた。そうすると、またまた話は順調に進み、借りたいという。なんだか展開がすごすぎて、自分でも怖いが、こんなこともあるんだな、と感心してしまった。

北海道新聞 夕刊 みなみ風



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