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【読書体験が劇的に変わる】『本を読む本』は何度も読みたい最高の読書本だった

読書術の本は書店にたくさん並んでまして、僕はこれまで20冊近く読んできました。

でも、そのなかには他の本の”焼き回し”のような内容だったり、あまり参考にならない本がたくさんあります。

つまり、読むべき本は限られるということです。

僕が読んだ読書術の本で「これは何度も読み返したい」と思った1冊が『本を読む本』でした。

わりと難しい本ですが、読書が好きな人は絶対に読むべき本です。

読者のレベルに応じて読書術を解説した本

さて、読書術の本を何冊も読んできて思うのは、読者のレベルをすべて単一に絞った本が多いということです。

つまり、あらゆる読書レベルに合う内容として書かれた本は非常に少ないんですね。

その点、本書は読書術を4つのレベルに分けて紹介しているため、読書初心者でも使えるTipsが書かれています。

レベル① 初級読書
レベル② 点検読書
レベル③ 分析読書
レベル④ シントピカル読書

このうち、① 初級読書は基本的な読む能力が備わっている状態を指します。

②の点検読書はいわゆる「拾い読みの技術」を指し、③の分析読書は徹底的に読み込み自分のものにする読書術です。

そして④のシントピカル読書は1つのテーマについて何冊もの本を比較しながら読む比較読書法を指します。

このレベル分けは本書特有なのでちょっと馴染みにくいかもしれませんが、読者のレベルに合わせて系統立てて読書術を解説した本は少なく、そういった意味では非常に有用だと思います。

技術的・精神的な本の読み方が超具体的に書かれてる

この本は読書の技法としてはかなり具体的に書かれていて、なおかつ精神的な「こういう考え方で読みましょう」というモチベーションを補強する記述も豊富です。

たとえば、「点検読書」(拾い読み)について、以下のような説明があります。

① 表題(タイトル)や序文を見る
② 本の構造を知るために目次を調べる
③ 索引を調べる
④ カバーに書いてある謳い文句を読む
⑤ 本のなかで要(かなめ)と思われる複数の章を読む
⑥ ところどころ拾い読みをする

このような組織的な拾い読みをすることによって「その本が読むに値するか?」というのをチェックすることができます。

僕は読書術の本をこれまで何冊か読んできましたが「自分が理解できるところを読んで、ソレ以外は読み飛ばしてOK」という読み方を推奨する本が非常に多かったんですね。

それによって、「飛ばし読み」という読み方が僕の中で定着しつつあったのですが、以下の記述にハッとさせられました。

良い本は読者にとって難解である。むずかしいくらいの本でなくては、読者にとって良い本とは言えない。そういう本に向かって読者は背伸びをし、自分をそこまで引き上げなくてはならない。
読者がくたびれてしまうのは、背伸びをしているからではなく、うまく背伸びできないことからくる欲求不満のせいなのだ。それはうまく背伸びする技術をもたないからである。

自分の知っている知識や情報だけで安寧の日々を過ごすのはラクですが、それだけだと何も成長しません。

読書を娯楽と割り切るのであれば別ですが、なにか自分を引き上げてくれる要素があるからこそ良い読書なのかもしれません。

「うまく背伸びする」という表現は、知っている内容の本ばかりを読むことの問題点をバシッと指摘してくれます。

難解な本は、難解になるべくしてなっている

本が難しく感じる原因の1つに、用語があります。

文章はそこまで難しくないのに、専門用語や造語が並んでいるせいで意味がぜんぜん取れないことってありますよね。

しかし、じつはそういう用語こそ、その本のキーワードだったりもします。

読み手にとってつかみにくい言葉こそ、著者が特別の意味で使っている言葉であるかもしれない。したがって、読み手から言えばもっとも重要な言葉は、「意味のつかみにくい言葉」であり、それはまた、たいていの著者にとっても重要な言葉である。

意味がつかめないということは、その言葉1つにいろいろな意味が含まれていたり、前後関係に大きく関係する可能性が高いということでもあります。

ですから、言い方を変えれば「その言葉の意味がわかれば、文章全体の理解がクリアになる」ということでもあるわけです。

だからこそ、意味がわからない用語が出てきたときにスグあきらめてしまうのではなく、

・辞書を使う
・前後関係をあらためてチェックしてみる

といった方法で、言葉の意味を知ろうとすることが効果を大きく高めてくれます。

哲学者への苦言

これは余談というか、ちょっと僕が共感して面白いと感じた部分なのですが、

哲学者は一般に、自分だけにしか通用しない言葉を使うことで評判がよくない。

と書かれています。

哲学の本をチラッとでも読んだことがある人ならわかると思うんですが、難解な哲学書の最大の原因はコレなんですよね。

つまり、用語の意味がまったく取れない。なにを言っているのかがわからない。

哲学の本を読むと、理解のできなさに圧倒されてしまい、自信を失いかけます。

でも、哲学界隈では「難しい言葉を使った、難しそうな文章をありがたがる」という風潮があるのは事実なので、哲学書に打ちのめされたからといって、自分を責める必要はまったくないなと思います。

「自分だけにしか通用しない言葉を使うことで評判がよくない」というのは、哲学書に挫折する人に勇気を与えてくれますね(笑)

読み方の説明がかなり深いので、理解するのは難しい

この本は1978年に刊行された古い本でなおかつ翻訳書なんですが、非常に読みやすい文体で書かれています。そのため「意味が取れなくてつらい」ということはありません。

ただ、本の読み方についてかなり深堀りしているページも多いため、読むには体力が必要で、ちょっと理解が追いつかない部分があるのもたしかです。

たとえば、以下の文はパッと読んだだけでは理解するのがむずかしいです。

論理(思想)と文法(言葉)のあいだには、名辞対語句、命題対文という対応関係があるが、証明のレベルには、はっきりしたこの対応関係は見当たらない。

「著者の伝えたいことは何か」という章では、「命題」「論証」という言葉がたびたび出てきます。

書いてあることは複雑なのですが、僕はこのあたりが本書の”核”に当たると思っていまして、ここをクリアにできるとかなり読書術が向上するのではないかと感じています。

さきほど「むずかしいくらいの本でなくては、読者にとって良い本とは言えない」という一節を引用しましたが、つまり、この本がまさに僕にとっての良い本に他ならないというわけです。

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