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【本091】『少年と犬』

著者:馳星周 出版社:文春文庫

東日本大震災で飼い主を失い、ある目的地に向けて旅をする犬・多聞の物語。多聞は、旅の途中で、孤独や寂しさを抱えた人々たちと接していきます。家族のために犯罪に手を染める人、すれ違いばかりの夫婦、癌を患う老人など。

「人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない。」

登場人物が次々と亡くなっていき、絶望的な気持ちにもなりますが、多聞が、登場人物の暗く荒んだ心に一筋の光や温かな優しさを与える姿を目の当たりにして、読者自身も救われていきます。

そして、最後の編「少年と犬」は涙無くしては読めません。
少年が多聞と関わるなかで、どんどんと成長をする姿をみながら、犬が持つ不思議な力と深い愛情を感じます。

我が家にも犬がいますが、娘の心が壊れた時、片時も離れず、ずっと娘の手を舐め続けていたのを思い出します。何日も何ヶ月も。

そんな犬と人がもたらす奇跡を深く感じる物語です。


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