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3年ぶりのショーヘア ―ヘアドネーションへを経て―

この春で伸ばし始めて3年.入社したすぐは襟にも届かないスッキリとした首元だったのに,いつの間にか胸を超えて臍に届こうかという長さになっていた.ここまで長いのは人生初ではないだろうか.

単に髪長いのを体験したかっただけなら,きっとこんなに伸ばすことはなかっただろう.それもこれもヘアドネーションをしたいという気持ちがあったからである.

極力長さを残したいな...そう思いながら切りたい誘惑にも耐えてきた.こんなに伸ばすこともないだろうからと、太めのコテも買ってみた.巷では"ヨシンモリ"というのが流行っているらしいと聞いたのだ.頑張ってみてはみるのだけれど,上手くはいかない.ボリュームは出ないし,時間が経てば伸びてしまう.そんなんでも,試行錯誤するのが楽しかった。

ただそれも時間的気持ち的に余裕があるときの話.会社に行く日はとりあえずまとめれば誤魔化せるからとひっつめだし,トリートメントは気が向いたらするだけ.ドライヤーをすれば後ろの吸込口に髪を吸い込まれるし,椅子に座って背もたれに体を預ければ髪を挟んでヘッドロックがかけられる.

んー流石に限界かもしれない.

自分の気持ちに影が落ちてしまうなら切ってしまおう.
そう思って5分後には美容室を予約した.

元々ショートだったし,切ることにはさほど緊張しないだろう.そう思っていたのに,いざ椅子に座るとなんとも気持ちがザワザワした.ハサミをいれてしまえばこの臍にも届くような髪は一瞬でなくなってしまうのだ.そう考えたらなんだか心もとなくなってしまったのだ.

美容師さんが来て,どんな髪型にしたいかカウンセリングを受け,切る髪をゴムで少しずつまとめる.ああ,後戻りができなくなってきた.

「自分で切ってみますか?」
そう美容師さんに声をかけられた.
最初からそのつもりだったのに,
「じゃあ」なんてさもその場で決めたような返事をした.

親指と薬指で持つようにレクチャーを受け,
私は左手で結ばれた髪を掴み,ハサミを開いた.

まとまって切っているからか,横滑りしてなかなか切れない.
挟む動作を7回ほど繰り返し,やっと一束切ることができた.

約50cmの毛束.

先程まで自分とつながっていたものなのに,
なんだか今は何か異質なものに感じてしまう.
別の生命体.そんな表現がしっくりくるかもしれない.

残りの束は美容師さんに切ってもらい,整えてもらえば,
なんだか昔懐かしい雰囲気の顔が出てくる.
でも長い髪に合わせて来ていたワンピースは,
短くなった今ではなんだか浮いて見える.
またクローゼットの整理をしなきゃかなぁなんて.

頑張って,頑張って,我慢して伸ばした3年だったけれど,
30分もしないうちになくなる,結構呆気ないものだった.

でも”誰かのために”と思って過ごした時間は,
色んなことでいっぱいになっていた私を勇気づけてくれたことは確かで,
切ってもそれはつづいている.

またやるかと言われると,
ライフイベントや今後の髪質とのご相談になってしまうが,
そんな幸せな時間をまた過ごせればいいなと思うのだ.

そんな数ヶ月前のお話でした.

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