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県議会、県民投票条例案否決

 10月23日、鹿児島県議会本会議場には100人を超える県民が詰めかけた。塩田康一知事は、2020年の知事選で、運転延長について「必要に応じて県民投票を実施する」と公約。しかし、川内原発の運転延長の是非を問う県民投票条例案を議会に提案した塩田知事の発言は、多くの県民を裏切るものだった。「私としては、マニフェストに基づく県民投票は実施しないとしたことなどを踏まえると、条例案に基づく県民投票については、慎重に判断すべきであると考えております」
 運転開始からまもなく40年を迎える川内原発。九州電力は20年運転延長を原子力規制委員会に申請し、審査が進む。わたしたち、「川内原発20年延長を問う県民投票の会」は、「みんなで決めよう」をスローガンに県民投票実現に向けて、地方自治法に基づき署名を集めた。6月からの2ヶ月間で集まったのは5万筆以上。各市町村選挙管理委員会の審査を経て、4万6112筆が有効とされた。法定数(2万6475筆)の1・7倍だ。10月4日、わたしたちは県民投票条例制定を塩田知事に請求、23日に県議会臨時会が開かれた。
 県民投票条例案の提案理由説明で、塩田知事は、県は安全対策・防災対策の充実・強化に取り組んでいる▽専門家でつくる「県原子力安全・避難計画等防災専門委員会」で九電の取り組みは適切と整理された──として、県民投票を実施しないこととしたと説明。その上で、県民投票条例案については、原発に関する県民投票条例が提案された他自治体で「原子力政策は国策なので国が責任をもって判断すべき」「多様な意見が二者択一では反映できない」などの理由ですべて否決されているとし、県民投票実施を否定した。
 10時間後に始まった質疑では、県議が「二者択一では多様な意見を反映できない」の意味を質問した。これに対して、塩田知事は「運転延長に関し、賛否だけでなく理由が多様で複雑な思いがあるということだ」と述べた。「複雑な思い」という部分は理解する。しかし、なぜこれが県民投票を実施しない理由となるのか皆目わからない。24~25日にあった委員会審議でも、県議会最大会派の自民側は「長期的視野で議論がなされないまま、感情に基づいた意思決定が行われることは決してよくありません」などと条例案に反対した。塩田知事も自民も「県民はバカだからオレたちの決めたことに従え」と言っているに等しい。県民をバカにするのもいい加減にしろ、と言いたい。
 23日の開会日には、請求代表者を代表して3人が議場で意見陳述。同日午後9時半近く、県民投票の会の向原祥隆事務局長が議場を圧倒した。「県民の意思を専制国家のように無視するのか、主権者の意思として尊重するのか。まさに民主主義が問われているのです。若い方も大勢署名に応じてくれました。この若い声を否定し、無視することは鹿児島の未来を潰すことです。この鹿児島の未来を若い県民とつくっていくために、歴史に残る誇り高い選択を期待します」
 26日の本会議で、県民条例案は否決された。
 「国策」として、県民の意思表示の機会を与えないというのであれば、速やかに原発を廃炉にすべきだ。非民主的な方法でしか動かせない発電施設は、「民主主義」国家・日本にあってはならない。

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