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【恒例洋楽新年企画】DJ Boonzzyの第65回グラミー賞大予想#8~ゴスペル&CCM部門

寒い日が続く中、NFLのプレイオフが今佳境。昨年のスーパーボウル覇者のLAラムズはプレイオフ進出ならなかった一方、前々回スーパーボウルの覇者、スターQBマホームズを擁するカンザス・シティー・チーフスが現在順調にプレイオフを勝ち上がっている様子。NYスポーツファン(除くヤンキース)の自分としては、今日フィラデルフィア・イーグルスと激突するNYジャイアンツに11年ぶりのスーパーボウル・チャンピオンを決めて欲しいものです。今年のハーフタイムショーにはリアーナの5年ぶりのライブ・パフォーマンスが予定されていてこちらも必見ですね。さあ、続いてゴスペル&CCM(コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック)部門の予想に行きます。

32.最優秀ゴスペル・パフォーマンス/ソング部門(アーティストと作者の両方に与えられる賞)

○ Positive - Erica Campbell (Erica Campbell, Warryn Campbell & Juan Winans)
  When I Pray - DOE (Dominique Jones & Dewitt Jones)
◎ Kingdom - Maverick City Music & Kirk Franklin (Kirk Franklin, Jonathan Jay, Chandler Moore & Jacob Poole)
✗ The Better Benediction - PJ Morton Featuring Zacardi Cortez, Gene Moore, Samoht, Tim Rogers & Darrell Walls (PJ Morton)

  Get Up - Tye Tribbett (Brandon Jones, Christopher Michael Stevens, Thaddaeus Tribbett & Tye Tribbett)

この部門の予想も今年で4年目で、段々とノミネートされるアーティスト達の名前も馴染みが出てきて少しずつ予想の感覚がつかめてきた感じです。そんなところでまずはゴスペルのパフォーマンスとソングの両方を一つの部門で受賞できるこの部門。今回ノミネートされたのは、90〜2000年代に妹のティナと一緒にゴスペル・デュオのメアリー・メアリー(2000年最高位28位「Shackles (Praise You)」のヒットあり)で活躍、2010年代以降はソロでベテラン・ゴスペル・シンガーとして活躍しているエリカ・キャンベル、元フォーエヴァー・ジョーンズという家族によるゴスペル・グループのメンバーだった、今年ゴスペルCCM3部門ノミネートのドミニク・ジョーンズことDOE、昨年初ノミネートでCCMアルバム部門を受賞、今年もゴスペルCCM5部門ノミネートの、ジョージア州アトランタ・ベースの人種男女混合9人組のメイヴェリック・シティ・ミュージックとゴスペル界の帝王カーク・フランクリンのコラボ作、マルーン5のキーボーディストからR&Bソロシンガーとして活躍、一昨年『Gospel According To PJ』で最優秀ゴスペル・アルバムを受賞してからはこの部門でも登場が増えているPJモートン、そしてニュージャージー州出身の黒人ゴスペルシンガーで、R&Bヒップホップ的作風で神の愛を歌うタイ・トリベットと実力派のアーティスト達がずらり。

そんな中で本命◎はやはり去年受賞で今年ゴスペルCCM5部門ノミネートと、今のゴスペルシーンでの存在感を大きく増して来ている上に、ゴスペル界のドン、カーク・フランクリンとコラボしているメイヴェリック・シティ・ミュージックかな、と思います。この曲の動画でも神の愛を信じる様々な人種や年齢のメンバー達が、この曲を含むアルバム『Kingdom Book One』が収録されたマイアミのエヴァーグレイド刑務所の受刑者たちと一体になってこの曲を歌い上げる高揚感たるや半端ないものがありますね。対抗○としてはここはゴスペル界でのキャリアとシーンでの存在感、そして曲自体コンテンポラリーR&B的スタイルで素晴らしいエリカ・キャンベルの「Positive」に付けておきましょう。

そして穴✗は、収録アルバム『Watch The Sun』が最優秀R&Bアルバム部門、そして同じ収録曲の「Please Don’t Walk Away」が最優秀R&Bソング部門にノミネートされているPJモートンの「The Better Benediction」に。

33.最優秀コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック・パフォーマンス/ソング部門(アーティストと作者の両方に与えられる賞)

  God Really Loves Us (Radio Version) - Crowder Featuring Dante Bowe & Maverick City Music (Dante Bowe, David Crowder, Ben Glover & Jeff Sojka)
✗ So Good - DOE (Chuck Butler, Dominique Jones & Ethan Hulse)
◎ For God Is With Us - for KING & COUNTRY & Hillary Scott (Josh Kerr, Jordan Reynolds, Joel Smallbone & Luke Smallbone)
○ Fear Is Not My Future - Maverick City Music & Kirk Franklin (Kirk Franklin, Nicole Hannel, Jonathan Jay, Brandon Lake & Hannah Shackelford)

  Holy Forever - Chris Tomlin (Jason Ingram, Brian Johnson, Jenn Johnson, Chris Tomlin & Phil Wickham)
  Hymn Of Heaven (Radio Version) - Phil Wickham (Chris Davenport, Bill Johnson, Brian Johnson & Phil Wickham)

毎年この部門での「ゴスペル」と「CCM」の違いは何かというのがよく判らないことの一つでして、単純に黒人系アーティストによるR&Bスタイルで神への愛を歌う音楽が「ゴスペル」で、白人系アーティストによるロック・ポップスタイルでやるのが「CCM」というのが一番判りやすんですが、今回のこのCCM部門には黒人女性ゴスペル・シンガーのDOEや、どちらかというと黒人系主体でR&Bスタイルのメイヴェリック・シティ・ミュージック+カーク・フランクリンがゴスペル部門とWノミネートされてていやあよく判りません。そして昨年のこの部門の予想でも書きましたが、去年などはCCM部門のノミニーがほぼ「黒一色」だったんで驚いたのですが、そこから言うと今年の顔ぶれは従来の考え方にちょっと戻っているのかもしれません。ただ一つ言えるのは、「ゴスペル」という枠組のこの前の部門では過去6回ノミネートすべて受賞しているカーク・フランクリン師が、このCCM部門では昨年・一昨年と受賞を逃してしまっていて、それ以前にはCCM部門でのノミネートすらないこと。当然自分はカーク・フランクリン絡みということでいずれも本命◎予想していました。ということを考え合わせると、このメイヴェリック・シティ・ミュージックカーク師の強力と思える組合せはCCM部門では必ずしもそうではないかもしれない、と思い対抗○に止めています。

では本命◎は、というとこの部門で過去2回、いずれも有力アーティストとのコラボで受賞を果たしている(2020年第60回ではドリー・パートンとのコラボで受賞してました)オーストラリア生まれでナッシュヴィル育ちのジョエルルークスモールボーン兄弟によるクリスチャン・ポップ・デュオ、フォー・キング&カントリーが有力ではないかと思います。今回はレイディA(元のレイディ・アンティベラムですね)のボーカル、ヒラリー・スコットをフィーチャーして、スケールの大きいポップ・ナンバーで「神はいつも我々と一緒にいる」というメッセージを歌っています。

そして✗ですが、ゴスペル部門でも気になっていて、このCCM部門にもノミネートされているドミニク・ジョンソンことDOEの「So Good」の軽快でアップビートな曲調が聴くだけで楽しくなってくるので、こちらに。

34.最優秀ゴスペル・アルバム部門

  Die To Live - Maranda Curtis
  Breakthrough: The Exodus (Live) - Ricky Dillard
○ Clarity - DOE
◎ One Deluxe - Maverick City Music & Kirk Franklin
✗ All Things New - Tye Tribbett

前述のようにちょっとジャンル錯綜状態にあるような感じのこのゴスペル・CCM部門ですが、アルバム部門でも一部その傾向は引きずってる感じで、人種混合のR&Bゴスペルスタイルのメイヴェリック・シティ・ミュージックこの部門とこの後の最優秀CCMアルバム部門でも両方ノミネートされていますね。ただこの部門の予想で注目したいのは、パフォーマンス・ソングの両部門でノミネートされていた、DOEメイヴェリック・シティ・ミュージック&カーク師がこの部門でもノミネートされていること。そうなってくるとどうしてもこの2組が強いのではないか、というのが自分の見立て。で、今年ゴスペルCCM3部門ノミネートされど未受賞のDOEか、今年5部門ノミネートで昨年最優秀CCMアルバム受賞のメイヴェリック・シティ・ミュージックか、となるとカーク師の存在もあり、刑務所で1,300人の受刑者と一緒に録音された作品、という重要性もあり、ここはMCMが僅差でDOEをかわすのではないか、というのが予想です。なので、MCM+カーク師が本命◎、DOEは対抗○。

そして穴✗ですが、残る3組の中では過去のノミネート回数や受賞歴から言って一番実績を持っているタイ・トリベット(過去10回ノミネート、2014年第56回最優秀ゴスペル・ソングとアルバム受賞)に付けておきます。

35.最優秀コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック・アルバム部門

  Lion - Elevation Worship
✗ Breathe - Maverick City Music
◎ Life After Death - TobyMac

  Always - Chris Tomlin
○ My Jesus - Anne Wilson

先ほども触れたように、今年のCCMアルバム部門は、メイヴェリック・シティ・ミュージックがR&B的ゴスペル・グループな以外は、いずれもロック・ポップ的アプローチによるクリスチャン・ミュージックをやってる以外はいずれも白人系アーティストのノミニーが並んでいて判りやすい状態ですね。その中でも今年57歳、90年代に全米で絶大な人気を誇ったクリスチャン・ロック&ラップ・グループ、dcトークのメンバーだった今や大御所のトビーマックはヒップホップ・ポップスタイルですが、以前も書いたようにどちらかというとマック・ミラーとかのセンスに通じるようなところもあって、CCMという意識なしに普通に私たちが聴いても楽しめる作品に仕上がっています。このアルバム、Billboard 200でも34位のヒット・アルバムになっていて、まあ余裕で本命◎でしょう

そしてそのトビーマックと同様、この顔ぶれの中では唯一Billboard 200のトップ100にチャートインしていたのが、ケンタッキー州レキシントン出身のカントリー・ポップ・クリスチャン・シンガーソングライターのアン・ウィルソンハートとは無関係ですw)の『My Jesus』。昨年5月に68位にランクインしていました。その時「全米アルバムチャート事情!」にも書いたのですが、彼女の音楽スタイルは、テーマが神への信仰や愛といったものである以外は、今カントリー・ポップ・シーンの最前線で活躍しているキャリー・アンダーウッド、マレン・モリス、ケルシー・バレリーニといったシンガーソングライター達とスタイルは同じなので、こちらも普通に曲だけ聴いても充分楽しめる作品になっています。そしてこのMVの最後に出てくる、23歳の若さで事故死した彼女の兄のジェイコブのことを思って書かれた曲なんだな、というのを知ると更に彼女の作品の深さが判ると思いますね。対抗○としては充分です

そしてゴスペル・CCM両部門4つ制覇の偉業に敬意を表して、メイヴェリック・シティ・ミュージックの『Breathe』には穴✗を。このタイトル曲なんかではやはりCCM部門だからなのか、R&Bというよりはロック・ポップよりになってますね。

36.最優秀ルーツ・ゴスペル・アルバム部門

○ Let’s Just Praise The Lord - Gaither Vocal Band
  Confessio - Irish American Roots - Keith & Kristyn Getty
◎ The Willie Nelson Family - Willie Nelson
  2:22 - Karen Peck & New River
✗ The Urban Hymnal - Tennessee State University Marching Band

さてゴスペル・CCM最後の部門、ルーツ・ゴスペル・アルバム部門です。昨年も書きましたが、この部門はよりサザン・ゴスペルやトラディショナル・カントリーなスタイルのアーティストがノミネートされる部門のはずなんですが、毎年「なぜこのアーティストが?」というノミニーが含まれてるんですね。昨年だとジャズ・スタンダード・ボーカルのハリー・コニックJr.がノミネートされてましたし、2020年第62回なんかはあのグロリア・ゲイナーがノミネートされて受賞してました。彼女なんて普通のゴスペル・アルバム部門ではなくなぜこのルーツ・ゴスペル・アルバム部門だったのか今でも不明です。で、今年意外だったノミニーは、北アイルランド出身で『ロード・オブ・ザ・リング』とかあの手の世界観の賛美歌シンガーソングライターの夫婦デュオ、キース&クリスティン・ゲティ。まあ「ルーツ」というのが「民族的ルーツ」という意味だとすると、アイリッシュ・ルーツのクリスチャン・ミュージックという意味で対象になってるんでしょうね。ちょっとエンヤとかにも通じるスピリチュアルな感じの曲が多いので聴いてて気持ちを鎮めるにはいいし、穴✗を付けさせて頂きます。

ただし今回のこの部門の本命◎は今年89歳のカントリー・レジェンド、ウィリー・ネルソンと、息子のルーカスマイカ、娘のポーラエイミー、そしてこのアルバムリリース後今年2月に91歳で他界したウィリーの姉のボビーという、文字通り「ウィリー・ネルソン・ファミリー」によるアルバム『The Willie Nelson Family』でしょうね。ボビーへの追悼にもなるし、何といってもこの部門は去年のキャリー・アンダーウッドや2018年第60回のリバ・マッキンタイアなど、カントリー界の大物がノミネートされる場合は必ず受賞してますからここは堅いところでしょう。このアルバムではウィリー自作のキリストへの愛や祈り、信仰についての曲の他、ジョージ・ハリソンの「All Things Must Pass」やクリス・クリストファーソンの「Why Me」を息子達に歌わせたりして、ネルソン・ファミリーの一体感を感じさせる作品になってます。

そして対抗○には、昨年もノミネートされていた、オーク・リッジ・ボーイズのようなサザン・ゴスペル・スタイルのグループ、ゲイザー・ボーカル・バンドのそのものずばりのタイトルのアルバム『Let’s Just Praise The Lord(みんなで主を讃えよう)』に付けておくことにします。

ゴスペル部門とCCM部門、いかがだったでしょうか。キリスト教信仰に関するジャンルということで、この部門も馴染みのないアーティストが多かったかと思いますが、動画を観て頂くと、純粋に音楽作品としても素晴らしいものが多いことが少し判って頂けるかと思います。さてこれで全54部門予想のちょうど3分の2が完了。残り18部門頑張って行きます。この次はアメリカーナ部門の予想です。お楽しみに!

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