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今週の全米アルバムチャート事情 #99- 2021/10/2付

いよいよ長かった緊急事態宣言も10/1から解除になり、飲食の現場に少しでも活気が戻ってくるといいなあ、と思いながら、一方自民党総裁選の結果を見て、結局何も変わらない自民党と、総裁選の前後で全く言ってることとやってることが違ってしまってる岸田氏を見ると、本当に自公政権何とかしなくちゃいかんと思う今日この頃。解除後もコロナ感染に対する意識は緩めずに、次のリバウンドを少しでもコントロールできるようにしたいものです。政府はあてにならんしね。

今週もお送りする「全米アルバムチャート事情!」。今週も公私超多忙の一週間ということもあってこの記事のポストもぎりぎり日曜日になってしまいました。連動ポッドキャストも日曜日の真夜中の配信となってしまいましたが、上記のリンクからお楽しみ下さい。

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さて今週のBillboard 200全米アルバムチャート、10/2付のチャートの1位は、やはり先週の予想どおりドレイクの『Certified Lover Boy』が3週目の1位をキープ。今週は対先週比28%減と、予想よりポイントがやや下げ渋って171,000ポイント(うち実売4,000枚)とそこそこの水準を維持して2位に初登場してきたリル・ナズXの挑戦を割と余裕でかわしてます。この構図は今週の全英アルバムチャートでも似たような感じで、リル・ナズXが2位に初登場しているところを先週マニック・ストリート・プリーチャーズに一旦首位を蹴落とされたドレイクが首位に復活してます。

記録みたいなところを改めてまとめると、今回の『Certified Lover Boy』の1位で、ドレイクのナンバーワンアルバムは10作目になりますが、これはエルヴィス、エミネムそしてついこないだ『Donda』が1位になったカニエに並んで歴代5位。歴代1位はビートルズの19枚、2位がジェイZの14枚、そして3位タイで11枚なのが、バーブラブルース・スプリングスティーンというランキングになってます。ビートルズエルヴィス以外はどれも現役バリバリ(含むバーブラ)の顔ぶれなので、このランキングはしばらく動きそうですな。ちなみにバーブラ1960年代から2010年代まで6デケイドに渡ってナンバーワンアルバムを記録してて、2020年代に1位を取ると、7デケイドという前人未踏の記録がかかってます。いや、出せば取りそうですね

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さて、そのドレイクに若干届かなかったのが、2位に初登場してきたリル・ナズXの初フルアルバム『Montero』。ポイント数では126,000ポイント(うち実売22,000枚)と結構迫ってはいたんですがもう一息でした。これで2019年に同じく2位初登場最高位だったEP『7』に続いて1位逃しということになります。あのEPはその後グラミー賞の何と最優秀アルバム部門にノミネートされるという理解不能な扱いを受けてましたが、まさかこの『Montero』はそんなことにならないだろうなあ。でも今回のこのアルバム、なぜか一様にメディアの評価が高く、あのメタクリティックでも85点が付いてるという高評価。作品の題材がLGBTQ支持の内容だったり、まあ曲としてもキャッチーなあたりが受けてる理由なんでしょうか。そこまでの高評価が付くような内容とは正直あんまり思えないんですがね。

今回のこのアルバムには今年4月に1位初登場の「Montero (Call Me By Your Name)」と最新ヒットのジャック・ハーロウをフィーチャーした「Industry Baby」(最高位2位)の2曲のヒットが収録されてて、それ以外にもゲストにドジャ・キャット、ミーガン・ザ・スタリオン、マイリー・サイラスそして何とエルトン・ジョンまで担ぎ出してる(ゲイつながりってのも大きいんでしょうね)という超豪華幕の内弁当的内容で、そのエルトンも彼を結構褒めてるあたりが勢いって凄いなあ、と思わせます。個人的にはどうでもいいんですが。

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さて、ドレイク、リス・ナズとワンツーパンチで来た今週のBB200、3位も初登場で、こちらはまたまた来てるよKポップ、ってことでNCT 127の『Sticker: The 3rd Album』が62,000ポイント(うち実売58,000枚)で飛び込んで来てます。NCT127っていうと、やたらメンバーの多い(確か23人)NCTのスピンオフ・グループで、それでもメンバーが10人(笑)という、何となくAKB48をモデルにしてるような、SMエンターテインメント所属のボーイズ・グループですよね。これまでにNCTとして昨年『NCT 2020 Resonance』が6位、NCT127としてはやはり去年の『NCT #127: Neo-Zone, The 2nd Album』の5位に続く2作目のトップ10入りでしかも過去最高ランクを今回記録してるわけです

このNCT127、前は日本人メンバーが2人いたと思ったんですが、今回確認したらユータのみがメンバーで、もう一人いたはずのショタローがどこかに行ってしまってるみたい。いずれにしてもBTSEXOのKポップ・フォーミュラ通りの、イケメンの子達がヒップホップっぽいトラックをバックに踊りながら歌う、という例のパターンです。今回は前作に比べてトラップっぽさがやや強調されてるような感じもありますが、その他にもジャスティン・ビーバーちっくなナンバーとかもあるみたいで、まあ売れ線狙いの作品ではあります。

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ということで今週のトップ10初登場は2枚で、いずれもトップ3に固まってました。続いて11位以下100位までの初登場のご紹介。今週は5枚が初登場してます。まずその中の一番人気は、13位に初登場してきた、女性ボーカルのコートニー・ラプランテとギターのマイク・ストリンガーの夫婦メンバーを中心にしたカナダのヘビメタ4人組、スピリットボックスのデビュー・アルバム『Eternal Blue』。2017年に2人によって結成され、2020年にリリースしたシングル「Holy Roller」が人気ネットラジオ、シリウスXMのメタル・ステーションで人気を呼んだのがきっかけで、コロナで2020年リリースの予定だったこのデビュー作がこのタイミングでリリースされ、溜まった人気のマグマのおかげでこの高順位デビューとなった模様。

そしてちょっと驚いたのは、この「Holy Roller」のリミックス・バージョンに日本のメタルコア・バンド、クリスタル・レイクのボーカルのRyo Kinoshitaがフィーチャーされてて、これもシリウスXMで人気を呼んだというから面白い。やっぱベイビーメタル以降、日本のメタルバンドもグローバルになってきてるんですね。で早速聴いてみたけど、いやこりゃ曲もコートニーのデス・ボイスでシャウトしまくりというのも凄いし、PVに登場する彼女の素顔とをメイクの落差が凄いねこれ。僕はこれ一曲で充分です、はい(笑)。

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続いて19位初登場は、カリフォルニアはサクラメント出身のラッパー、モジー(本名:ティモシー・コーネル・パターソン)の実に25作目になる『Untreated Trauma』。多作なだけあって今年34歳のかなりのベテラン・ギャングスタ・ラッパーのモジー、ネットを調べると2012年くらいから結構アングラ・ヒップ・ホップ・シーンでは評判になっていて、その筋では既にかなりの人気を確保していたことが伺えますね

音を聴くと、50セントばりの迫力あるだみ声のフロウ(古いw)が結構グッとくる、存在感あるパフォーマンスがいいですね。一緒につるんでる連中がYGとかYFNルッチとか、LAラップシーンでも小物中心なのがちょっと残念ですが、こういうソリッドなパフォーマンスでこつこつ作品を作ってるヤツは応援したくなります。今回のこのアルバムは彼にとって5作目のBB200チャートインで、今回が最高ランキング。ここからじわじわ人気が広がるでしょうか。

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さてぐっと下がって40位に初登場してきたのは、ディランのブートレッグ・シリーズの16作目、『Springtime In New York: The Bootleg Series, Vol. 16, 1980-1985』。このブートレッグシリーズも、1991年のボリューム1−3のリリース以来、出れば必ずチャートインするし、ディラン・ファンのコレクター魂をくすぐるような企画を上手に送り出し続けてきているので、ファンの財布は大変ですね(笑)。

今回のブートレッグは、80年代前半のディランとしては評価が分かれるアルバム『Shot Of Love』『Infidels』『Empire Burlesque』といったあたりの頃のツアー・リハーサルの音源や、アウトテイクを集めたもので、今回はCD2枚組の通常版以外に、CD5枚組の特別盤と、LP2枚組版、LP4枚組版とこれまたシニア世代をくすぐるラインアップでのリリースというのもすごい。今回の目玉の一つは、『Infidel』に収録されなかったアウトテイクの「Lord Protect My Child」の収録で、あのスーザン・テデスキデレク・トラックスが人身売買のドキュメンタリー番組の主題歌としてカバーしたというもの。このボブのオリジナル・バージョンが結構しみるんですよね。久しぶりにこのブートレッグ、買おうかしら。

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そして50位に初登場したのが、先週の予想でトップ10来るかもといいながらこんなところに入って来て、人気絶頂の頃とのギャップを感じてしまったドートリーの新作『Dearly Beloved』。アメアドで脚光を浴びた直後の作風はストレートなアメリカン・ロック、という感じだったけど、今回のアルバムの曲をいくつか聴いた感じでは、ちょっと陰りが強くなったサウンド担ってる感じで、チャートパフォーマンスの後退も併せてちょっと黄昏れた感じがしますね。

アメアドでブレイク時の2005年に契約したRCAと2019年に契約解消した、というのも彼にとって大きな変化だったと思いますが、今回新たにワーナーと契約してリリースしたこのアルバム、チャート的にはこれまでの彼の作品ほどの成果を出してませんが、引き続き頑張ってほしいな、と思います。

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今週100位までの初登場のトリは、86位に初登場した、スコッティ・マクリーリーの5作目『Same Truck』。この前のドートリー同様アメアド関連ということでも(ドートリーは2006年の第5シーズンの4位、スコッティは2011年の第10シーズンの優勝者)、これまでのアルバムのチャート・パフォーマンスと今回のが大きなギャップがある、という点でも共通してますね。スコッティはデビュー・アルバムの『Clear As Day』の1位(2011)をはじめ、これまでの4枚は全てBB200のトップ10ですが、今回はこんな順位に甘んじてます

アメアドというフランチャイズ自体、最近では存在感とシーンへの影響力を失っている状況を考えると致し方ないのかなあ、とも思います。ドートリーと違って、スコッティアメアドのもう一つのラインであるカントリーの世界で一応頑張ってますし、今回のアルバムも、カントリー・アルバムとして聴くと、エリック・チャーチあたりの路線をフォローしている感じでカントリー・メインストリームには受けるんだろうなと思います。ただこの前のアルバムから、メジャーのマーキュリー・ナッシュヴィルからインディのレーベルに移ってるあたりが、彼みたいなアーティストの立ち位置の難しさを物語ってるような気がしますね。

ということで以上トップ10圏外100位までの初登場でした。ここで恒例により、今週のトップ10のおさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト)。

1 (1) (3) Certified Lover Boy - Drake
*2 (-) (1) Montero - Lil Nas X
*3 (-) (1) Sticker: The 3rd Album - NCT 127

4 (2) (4) Donda - Kanye West
5 (4) (18) Sour ▲ - Olivia Rodrigo
6 (6) (13) Planet Her - Doja Cat
7 (8) (37) Dangerous: The Double Album ▲ - Morgan Wallen
8 (7) (61) F*ck Love ▲ - The Kid LAROI
9 (10) (8) Happier Than Ever - Billie Eilish
10 (3) (2) Star-Crossed - Kacey Musgraves

さて今週の「全米アルバムチャート事情!」どうでしたか。最後にいつもの来週1位予想。来週のチャートの集計対象期間は9/24-30にリリースされる作品が来週ドレイクを凌駕できるかが当然ポイントなんですが、前回『Scorpion』の時は4週目には初週の25%程度のポイントになっていたことを考えると、来週のドレイク予想ポイントは153,000ポイント。これって十分普通の週なら1位いけるレベルで、これを凌駕しそうなリリースというと、ストリーミング次第だけど、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインの新譜くらいかな。これ、ドレイクとは五分五分の勝負じゃないでしょうか。それ以外にトップ10に入って来そうなのはアレッシア・カーラ、Gイージー、ミッキー・ガイトンくらいかな。ということでまた来週。

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