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今週の全米アルバムチャート事情 #172- 2023/2/25付

先々週発生し、46,000人以上の犠牲者を出したトルコ大地震の被災者の方々には心より一日も早い日常への復帰を祈るばかり。昨日震災後の救出活動が、一部の地域以外では完了した、というニュースを聴いていたら、先日のニュースではまたM6.3の地震がトルコ南部で発生したとの報を聴き、重い気持ちになっています。今回の第2波の地震の犠牲者ができるだけ少なくて済みますように。わずかばかりの支援寄附はさせてもらいましたが、それ以外はただ祈るばかりです。

"SOS" by SZA

さて、気を取り直して今週2月25日付のBillboard 200、全米アルバムチャートです。今週ようやく10万ポイントの大台を切ってもまだ93,000ポイント(うち実売500枚)と高止まりしていたSZAの『SOS』、パラモアの新譜を軽くかわして今週通算9週目の首位をキープしています。相変わらずポイントのほとんどはストリーミング、そしてそのストリーミング・ボリュームがなかなか減衰しないという状況は続いています。ここのところの2位のポイント数が6〜7万ポイントで、この調子だとなかなかそこまで一気に減衰する可能性が低いだけに、10万ポイントレベルを叩き出す強力な新譜が出ない限り、SZAの独走は続きそう。今回の9週1位で、テイラーの『Folklore』を抜いて、以前ご紹介した2000年以降の女性アーティストによる1位長期政権ランキングの5位に躍進したSZA、歴代2位(11週)に名を連ねるのも時間の問題のような気がしてきました。そのランキングをもう一度見てみましょう。

1,(24 weeks) 21 ▲14 - Adele (2011/3/12-19, 4/2, 4/23, 5/7-6/4, 6/25, 8/6, 8/20, 11/5, 2012/1/14-3/17, 6/23)
2.(11 weeks) Fearless ▲10 - Taylor Swift (2008/11/29, 12/27-2009/2/7, 2/28-3/14)
2.(11 weeks) 1989 ▲9 - Taylor Swift (2014/11/15-29, 12/13-20, 2015/1/3-24, 2/14-21)
4.(10 weeks) 25 ▲11 - Adele (2015/12/12-2016/1/23, 2/13, 3/5-12)
5.(9 weeks, so far) SOS ▲ - SZA (2022/12/24-2023/2/25*)
6.(8 weeks) Folklore ▲2 - Taylor Swift (2020/8/8-9/12, 10/3, 10/31)
7.(7 weeks) Red ▲7 - Taylor Swift (2012/11/10-24, 12/22-2013/1/12)
8.(6 weeks) Feels Like Home ▲4 - Norah Jones (2004/2/28-4/3)
8.(6 weeks) I Dreamed A Dream ▲4 - Susan Boyle (2009/12/12-2010/1/16)
8.(6 weeks) Speak Now ▲6 - Taylor Swift (2010/11/13-20, 2011/1/1-22)
8.(6 weeks) 30 - Adele (2021/12/4-2022/1/8)

"This Is Why" by Paramore

一方、今週トップ10初登場は確実と見ていたパラモアの6年ぶりの新作『This Is Why』は64,000ポイント(うち実売47,000枚)で惜しくも2位初登場。しかし全英アルバムチャートでは堂々初登場1位を記録するなど、ここ数年ヘイリーのソロ活動やバンド活動休止で遠ざかっていたシーンへの久々の復帰にあたって、大きな存在感を見せています。

ポップでエモな作風で当時うちの娘も大ファンだった『Riot!』(2007年15位)や『Brand New Eyes』(2009年2位)そして『Paramore』(2013年1位)の頃の作風から今回は一気にポスト・パンクというか、抑えめでタイトなギターリフ主体のロックを展開している内容で、ヘイリー曰く「昔自分達が聴いて育ったUKのブロック・パーティーの迫ってくるようなサウンドを意識して作ったの」とのこと。ヒットした「Misery Business」(2007年26位)のようなスカッと感や「Ain’t It Fun」(2014年10位)のようなキャッチーさはないものの、筋肉質のロックを楽しめるサウンドになってます。そしてそれだけでなく、ラストの3曲「Liar」「Crave」「Thick Skull」ではぐっとムーディーな感じのドリーム・ポップな曲で締められているあたりは、コロナ・ロックダウンを通過した影響を感じさせる仕上がりになってますね。メディアの評価も軒並み高いようです(メタクリティック85点)。

"Anti" by Rihanna

今週のトップ10初登場はこのパラモアのみですが、話題としては先週のスーパーボウルのハーフタイムショーで賛否両論あったリアーナの曲に当然ながらストリーミングが殺到したらしく、2016年に1位を飾ったアルバム『Anti』が今週50位から8位に急上昇してます(36,000ポイント)。ハーフタイムショーでやった「Work」(2016年1位)が収録されてますしね。今週でチャートイン355週目となるこのアルバム、Billboard 200史上、R&B系女性シンガーのアルバムとしては最長チャートイン記録を更新中とのことです。リアーナはこれ以外にも圏外に『Loud』(26位)と『Talk That Talk』(49位)が再登場してます。

最長チャートインというと、うーんあんまりお伝えしたくないんですが(笑)今週4位で変わらずのモーガン・ウォレン、ついに通算トップ10チャートイン107週となって『West Side Story』サントラ盤(1962年、106週)を抜いて、歴代3位になってしまってます。そのすぐ上には109週の『The Sound Of Music』サントラ盤(1965年)がいるんですが、これも抜いて歴代2位はほぼ到達間違いないんでしょうね。ま、歴代1位の『My Fair Lady』オリジナル・キャスト盤(1956年)は173週で、さすがにこれは抜けないでしょうけど。新作も出るらしいので、まあそろそろこのアルバムにはご退場願いたいものです。

"The Jaws Of Life" by Pierce The Veil

さて2月も後半になっているのに相変わらず新譜のリリースも相変わらず薄めのようで、今週も11位以下100位までの圏外初登場はわずか1枚。その1枚が、14位に初登場、5作目にして3作目のトップ20アルバムとなっている、サンディエゴ出身の3人組エモ・パンク・バンド、ピアス・ザ・ヴェイル(ベールを突き刺せの意)の『The Jaws Of Life』。前作の『Misadventures』(2016年4位)で初のトップ10を記録した彼らですが、ボーカルのヴィック・フエンテの弟でドラムスのマイク・フエンテが、前作リリース直後に未成年のファンの女の子から性的暴力を受けたと訴えられてバンドから除名されるなどいろいろあったようで、いわば今回再出発のアルバムだったらしく、それを考えるとこの順位は大したものかもしれません。

バンド結成が2006年、セカンド・アルバム『Selfish Machines』(2010年106位)のブレイクからもう13年、その間も精力的にツアーを重ねて一定のファンが付いてるバンドのようですね。曲も王道エモ・パンクなタイトル・ナンバーから、メロディアスなメロコア「Emergency Contact」、スクリーモっぽい「Pass The Nirvana」など微妙に楽曲にもバリエーションを付けてます。まあ今のアメリカには結構よくあるタイプではあるので、こうして少しでも個性を出してるバンドが生き残って行ってる、ってことなんでしょう。

ということで今週は2位のパラモアと100位内でリアーナのアルバムが躍進した以外は相変わらず地味目のチャートでしたね。ここでいつものようにトップ10おさらいです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

1 (1) (10) SOS ▲ - SZA <93,000 pt/500枚>
*2 (-) (1) This Is Why - Paramore <64,000 pt/47,000枚>
3 (2) (17) Midnights ▲2 - Taylor Swift <60,000 pt/14,812枚*>
4 (4) (110) Dangerous: The Double Album ▲4 <44,000 pt/1,296枚*>
5 (7) (41) Un Verano Sin Ti - Bad Bunny <44,000 pt/1,140枚*>
6 (5) (11) Heroes & Villains - Metro Boomin <43,000 pt/504枚*>
7 (8) (15) Her Loss - Drake & 21 Savage <40,000 pt/225枚*>
*8 (50) (355) Anti ▲3 - Rihanna <36,000 pt/5,593枚*>
9 (9) (39) Harry’s House ▲ - Harry Styles <33,000 pt/9,433枚*>
10 (3) (3) The Name Chapter: TEMPTATION (EP) - Tomorrow X Together <32,000 pt/26,543枚*>

今週も何だかんだでSZAが首位に君臨していた「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか。最後にいつもの来週の1位予想です。来週のチャートの対象期間、2/17-23リリースの新譜で10万ポイントレベルで1位を取る可能性がありそうなのは、ジョナス・ブラザーズピンク。いずれも直近3作すべて10万ポイント以上を叩き出して1位を続けてるので、このどちらかが来週SZAを押さえて1位の可能性ありですね。ではまた来週。

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