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今週の全米アルバムチャート事情 #121- 2022/3/5付

ベラルーシ国境近くでのロシア・ウクライナ停戦交渉実施の合意がなされたとのことですが、本当に一日でも早いロシア軍撤退と停戦を祈るばかりです。今年も今週から3月。春の訪れと共にコロナの収束、そしてウクライナ和平が早く実現しますように

並行してやってる第64回グラミー賞大予想ブログですが、先週末にジャズ部門をアップしてます。今週はゴスペル&CCM部門をアップの予定。上記のリンクから是非ご覧下さい。

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さて今週の全米アルバムチャート、Billboard 200の3月5日付チャート、やはり今週も先週の予想通り、『Encanto(ミラベルと魔法だらけの家)』が堂々の7週目の1位。今週もわずか8%のポイントダウンで、90,000ポイント(うち実売11,000枚、9%ダウン)と、2位のガンナの倍以上のポイントなので、その差はまだまだあります。後でコメントしますけど、来週は2つばかり強力そうなやつが出るんですが果たして首位交代となりますか

アルバムと並んで、シングルの「We Don’t Talk About Bruno(秘密のブルーノ)」の方もHot 100今週も1位で5週目の1位。UKの方も今週6週目の1位と、もう何だか世界中ミラベル一色になってきてます。一方今月27日(日本時間3/28)に発表される第94回アカデミー賞で、この映画から最優秀オリジナル・ソング部門にノミネートされてるのはこの曲じゃなくて「Dos Oruguitas」というスペイン語のバラードなんですよね、前もここでお話ししましたが。「秘密のブルーノ」ノミネートしてればかなり強力だったと思うんですがね。ノミネート候補提出戦略のミスですかねえ。まあ制作側もここまでこの曲とアルバムがヒットするとは多分思ってなかったと思いますけど。

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今週のトップ10、もう1枚だけ初登場があります。それが先週予想のところで名前を出していたビーチ・ハウスとか、クルアンビン&リオン・ブリッジズとかでは全然なくて(彼らはこの後圏外で登場)、何とイート(Yeat)と言う名前のオレゴン州ポートランド出身の、今年22歳のラッパーの2作目『2 Alive』で、32,000ポイント(実売はHits Daily Doubleによると167枚w)で6位に初登場してます。聴いたことない名前なのにいきなりトップ10かよ、と思っていたら、最近のご多分に漏れず、昨年TikTokでリリースした”Get Busy”って曲がいきなりヴァイラルになって、ドレイクリル・ヤティといったメジャーなラッパー達に名前を挙げられたのがかなりブレイクを後押ししたらしいです。

両親がメキシコ人とルーマニア人というマルチレイシャルなイート(本名:ノア・オリヴァー・スミス)、まあ作風はフューチャーヤング・サグに影響受けてるというだけあって、ひたすらトラップトラップなトラックをチープなサウンドに乗っけて、フロウもマンブル系で何言ってるかよーわからんという、まあ自分的に「何でこんなに売れるんだろう?」と思うような内容なんだけど、よく考えたら実売を見ても判るように、この手の最近のティーンのトラップヘッズが飛びつくような作品って、みんなストリーミングで死ぬほど繰り返し聴いてるんだよね。ある意味みんなトラップ中毒って感じなんじゃないかな。

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今週のトップ10初登場はこのイートだけ。トップ10圏外100位までも今週はやや少なめで3作が初登場してるのみです。まず12位に登場、わずかにトップ10を逃したのが先週名前を出した、ボルチモア出身のオルタナ・ポップ・デュオ、ビーチ・ハウスの8作目になるアルバム『Once Twice Melody』。4つのチャプター、全18曲のドリーミーで、エレクトロニックながらどこかしら陰鬱さをたたえる楽曲で構成されているこのアルバム、とにかく音楽メディアが軒並み絶賛してますねメタクリティックでは84点付いてます)。ビーチ・ハウスって、先週のスプーン同様、これまであまりちゃんと聴いたことなかったんですが、ちょうど去年の秋に出たウルフ・アリスとかあの辺のアーティストの感じに通じるものがあるのと、80年代エレポップ(OMDとかウルトラヴォックスとか)の雰囲気もそこここに感じられて、確かになかなか悪くないですね。

不思議なのはこういうバンド、UKでも受ける気がして、事実彼らのこれまでのアルバムは何枚かUKのトップ20にも入ったりしてるんですが、今回はまったく引っかかってないみたいです。

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続いて23位に入ってきたのは、これも先週の予想のところで名前を出していた、ヒューストンの不思議インスト・デュオ、クルアンビンと昨年『Gold-Diggers Sound』という素晴らしいアルバム出してたR&Bシンガーのリオン・ブリッジズのコラボEP2作目『Texas Moon』。前作が『Texas Sun』(2020)で、今回は前回よりもより夜の雰囲気を持った楽曲をやってるんだ、というのが本人たちの弁なんですが、前のEPにも「Midnight」なんていう曲もあったくらいなので、まああまり関係ないかも。そして今回もクルアンビンの不思議な年代不明のインストゥルメンタル・トラックに乗って、リオンがふわーっとした感じで歌ってる、という前作同様のフォーミュラのできあがりになってますね。

よく考えると、リオンの『Gold-Diggers Sound』のシネマティックで、内省的な楽曲の響きって、このクルアンビンとのコラボを経たことによってかなり影響を受けていたんじゃないかなあ、という気がします。それくらい多分『Gold-Diggers Sound』と並べて聴いてもあまり違和感なく聴けてしまいそう。でも「B-Side」なんてクルアンビンのアジア・ディスコか中近東ディスコかって感じの独得のビート炸裂で「ああやっぱいつものクルアンビンだわ」と思いますね。『Texas Sun』がA面、これがB面、という併せて一枚のリリースでもよかったんじゃないかという気もします。

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今週最後の100位内初登場は、ぐっと下がって60位初登場、カリフォルニアはサンタクルーズ出身のオリヴァー・トゥリーの2作目になる『Cowboy Tears』。このオリヴァー・トゥリー(本名です)ってのは何だかよくわからないアーティストで、曲聴いているとごく普通のポップ・オルタナっぽいシンガーソングライターって感じなんですが、アートスクール出身で、何かコメディ・ビデオを作ってネットにアップしたり、2019年にはコーチェラに出演して2mくらいのステージからジャンプして顔面強打して血みどろになったり(笑)とまあ何だか行動が普通じゃないんですよね。

デビュー作の『Ugly Is Beautiful』はBB200の14位と一応ヒットアルバムだったんですが、音楽メディアの受けは悪く(笑)、今回は順位もさることながらピッチフォークには4.8点付けられるという相変わらずメディアの評価は高くないようですね。ちょっとキャラ的にプランクスター(おふざけキャラ)っぽい感じが一部では受けてるんでしょうか。聴いててちょっとケイクとか、チャンバワンバとかあの辺のバンドを思い出してしまいました。曲そんなに悪くないんだけど、真面目に評価してもらえないという点が共通してますね(笑)。

ということでいつものトップ10おさらいです。先週スーパーボウルハーフタイムショーのあおりでトップ10に返り咲いたエミネムがまだ頑張ってトップ10に踏みとどまってますね。でもそれでも1000枚以上実売売ってて、実売28枚で2位のガンナって何者??(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)

1 (1) (13) Encanto ● - Soundtrack <90,000 pt/11,000枚>
2 (2) (7) DS4Ever - Gunna <41,000+ pt/28枚*>
3 (3) (59) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <41,000 pt/1,678枚*>
*4 (5) (54) The Highlights - The Weeknd <33,000 pt/1,265枚*>
*5 (10) (40) Sour ▲2 - Olivia Rodrigo <32,000 pt/6,564枚*>
*6 (-) (1) 2 Alive - Yeat <32,000 pt/167枚*>
7 (4) (25) Certified Lover Boy - Drake <32,000- pt/75*>
8 (6) (35) Planet Her - Doja Cat <28,000 pt/578枚*>
9 (8) (569) Curtain Call: The Hits ▲7 - Eminem <26,000 pt/1,143枚*>
10 (7) (14) 30 ▲3 - Adele <25,000 pt/9,376枚>

さて今週は初登場少なめでしたが「全米アルバムチャート事情!」いかがでしたか?最後に恒例の来週の1位予想ですが、来週のチャートの集計期間の2/25-3/3のリリーススケジュールを見ると、ひょっとするとミラベルに迫るかも、と思えるのはアヴリル・ラヴィーンの新譜と、最近「Super Gremlin」が意表を突く大ヒットになってるコダック・ブラック。両方とも10万ポイントは厳しいと思うけど、ミラベルが8万ポイント割ってくるようだとチャンスがありそうです。あと、巷で話題のあの!ティアーズ・フォー・フィアーズの18年ぶりの新譜がトップ10に来るかもしれません。ということでまた来週。

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