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今週の全米アルバムチャート事情 #125- 2022/4/2付

桜満開の東京の今週は気分は最高でしたが昨日の雨で大分散っちゃったかも。吉岡正晴さんとのプリグラミー・イベント「ソウル・サーチン・ラウンジ〜グラミー賞大展望・予想」も2年ぶりにフィジカル開催できていよいよ来週月曜日はグラミー授賞式今年もガッツリ生ブログやりますよ。まあ何にせよグラミーでは変な事件が起きないよう、お願いしたいもんですね。ウィル・スミスのあの事件、結局ウィルが一人で男下げただけになっちゃってますし、結構ブラックのマイナスなステレオタイプをまた蘇らせちゃった、てんでアカデミーのアフリカン・アメリカンの委員が頭抱えてたらしいです。意外とこの影響、深刻かもしれません。

一方主要四部門の予想を残した「DJ Boonzzyの第64回グラミー賞大予想ブログ」も先週末にそれ以外最後の「ミュージカル、ビジュアル・メディア、プロデューサー部門」の予想を上記リンクに掲載していますのでご覧下さい。最終の主要四部門予想は、この週末にポストする予定です

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さて月も変わって、今週4月2日付の全米アルバムチャート、Billboard 200の1位ですが、てっきりリル・ダークが2週目の1位キープすると思ってたら、蓋を開けてビックリ。強力に110,000ポイント(うち実売が103,000枚で、今週はもちろん2022年で今のところ最大売上!)で初登場1位を決めたのはストレイ・キッズのEP『Oddinary』。へ、ストレイ・キッズ誰?ストレイ・キャッツなら知ってるけど(笑)。我が家のKポップ・ファンの女性軍に訊いたら「ああ知ってる知ってる、日本でも結構人気あるよ」とのこと。調べてみると、既に去年トップ10アルバムを2つも決めてるTWICEや、日本で人気のNiziUが所属するJYPマネジメントが今超売り出し中の8人組ボーイズバンドらしいです。何でもストレイ・キッズという名前のアイドルデビュー・プロジェクトのリアリティショーから出てきたとか。いやあ最近Kポップしばらく聴かないなあと思ってたらいきなり1位(しかも彼らこれが初チャートイン!)、これだからKポップ侮れません。

肝心の音の話をしてませんが(笑)シングルの「Maniac」とか聴くと超ハイテンションのエレクトロ・ヒップホップ・ビートチューンって感じで、BTSが全米仕様にR&Bディスコ風になる前のスタイルを更にテンション上げたみたいな感じで、正直これ一曲で自分はもうお腹いっぱいって感じですね。まあ例によってCDのパッケージか7種類あってそれぞれにランダムに異なるフォトカードとかミニポスターとかが同梱されてるというKポップお得意商法みたいなので、彼らのファンの子で7種類買い集めた子もたくさんいたんだろうなぁ。

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今週のもう一つの注目は、初登場ではないけど、先週35位から5位に急上昇、今年の1/15付チャート以来ほぼ3ヶ月ぶりにトップ10に復帰した、ジュースWRLDの『Fighting Demons』。

先週の1.4倍の40,000ポイント(うち実売は先週の268倍の12,000枚)と大幅なストリーミングと実売枚数積み上げによるこのジャンプアップ、リリース当初はストリーミングとデジタルダウンロードだけのリリースだったのを、今回3曲追加のデラックス・エディションがストリーミングとデジタル配信になったのに加え、CD、ヴァイナル、カセットのフィジカルもリリースされたことによるもの。やっぱみんなフィジカル待ってたんだろうなぁ。特にヴァイナルの最近の供給逼迫状況を考えるとヴァイナル3ヶ月遅れって結構レーベルも頑張ったうちだと思うなぁ。テイラーとか半年遅れだったしね。自分もこれ買おうか今思案中。

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今週のもう一枚のトップ10初登場は、2019年のアルバム『Charli』が音楽メディア等の高評価を集めてアーティストパワー上昇中だったチャーリーXCXが初のトップ10を決めた『Crash』の7位初登場(31,500ポイント、うち実売19,000枚)。このアルバム、今週UKとオーストラリアのアルバムチャートでは1位になっていて、彼女のキャリアで最大のヒット作になってますね

もともとチャーリーの名前がメインストリームに知られたのは、スウェーデンのエレクトロポップ・デュオ、アイコナ・ポップの大ヒット「I Love It」(2012年全米7位、全英1位)にフィーチャーされたのが最初で、その後イギー・アザレアの全米No.1ヒット「Fancy」(2014年、全英5位)にもフィーチャーされ、自らもソロで「Boom Clap」(2014年全米8位、全英6位)のヒットを放つなど、一時期メインストリームでもかなり露出。しかしその後リリースしたミックステープ『Pop 2』(2017)や先述の『Charli』などはその先進的エレクトロ・ミュージックのため、チャートの上位には来ないけどメディアの評価は高い、そんな立ち位置になってました。今回はそれを大きくポップな方向に舵を切って(ジャネット・ジャクソンにかなり影響されたとのこと)切れ味鋭いエレクトロダンスポップ・アルバムになってるのが今回のグローバルなチャート躍進の要因なんでしょうね。彼女とモロキャラが被る、リナ・サワヤマとのデュエット「Beg For You」なんて、なかなかスケールの大きいエレクトロポップでいい感じですよ。ところでアイコナ・ポップとかイギー・アザレアとか、最近全く名前聞かないけどどうしてんでしょう。

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さて今週のトップ10のトピックは以上ですが、今週の11位以下100位までの圏外、何と初登場はたった1枚、珍しい!それも先週リリースされて以来各方面で話題を呼んでいるスペインの歌姫(っていうかそういう呼び方がおよそ似つかわしくないんですけど)、ロサリアの3作目で全米アルバムチャート初チャートインになった『Motomami』が唯一今週圏外33位に初登場してます。彼女が地元カタロニア音楽大学の学位取得プロジェクトとして、13世紀南欧のロマンス伝説を題材に、彼女の出自であるフラメンコをベースにしたオルタナ・ポップで表現したセカンドアルバム『El Mal Querer』(2018) が音楽メディアから大絶賛。一昨年のグラミー賞ではスペイン語シンガーとして初めて主要部門の新人賞部門にノミネート、『El Mal Querer』はその年のラテン・グラミー賞の最優秀アルバム受賞だけでなく、本家のグラミーでも最優秀ラテン・ロック/アーバン/オルタナティブ・アルバムを受賞するなど、ロサリアの名前を一気にシーンでブレイクさせるきっかけになったのです。

先達のフラメンコ・シンガーだけでなく、何とジェイムス・ブレイクの影響を強く受けてると自ら語ってるように、そのロサリアの新作『Motomami』(ちなみにこのタイトルの意味は不明です)のサウンドは無茶苦茶いろんなジャンルのごった煮状態。レガトンのリズムとミニマルなトラックに乗ってパンチ満点のフロウをかます「Chicken Teriyaki」、デュエットするザ・ウィークンドもスペイン語で歌う古風な感じのフラメンコ・ポップ「La Fama」、シンプルなピアノ弾き語りから後半ジェイムス・ブレイクの影響を窺わせるオルタナ・ポップバラード、その名も「Hentai」(笑)などなど、日本語や日本のカルチャーにも興味を持っていると思しきこのロサリア、今ビリー・アイリッシュの向こうを張れるのは彼女しかないかも、と思わせる内容。このアルバム聴いてから、「♪パティ・ナキー、チキンテリヤキ〜ミ・ガタ・ン・カワサキ〜♪」と言うフレーズがずっと脳内ループしちゃってます(笑)。3月にはスペイン語のシンガーとして初めてあの『Saturday Night Live』にも音楽ゲストで出演して大反響だったというロサリア。これ、ひょっとすると今年一番の話題作になるかもしれませんね。

ということで今週のアルバムチャートの初登場と話題盤は以上。ここでいつものようにトップ10おさらいです。今週でトップ10在位62週目で、セリーン・ディオンの『Falling Into You』の61週を抜いて、アデルの『21』の84週、アラニス・モリセットの『Jagged Little Pill』の72週に次ぐ、1990年以降では3番目の長期滞在記録を作ってしまったモーガン・ウォレンがやな感じです(順位、先週順位、週数、タイトル、アーティスト、<総ポイント数/アルバム実売枚数、*はHits Daily Double調べ>)。

*1 (-) (1) Stray Kids Mini Album: Oddinary (EP) - Stray Kids <110,000 pt/103,000枚>
2 (1) (2) 7220 - Lil Durk <81,000 pt/431枚*>
3 (3) (17) Encanto ● - Soundtrack <59,000 pt/7,161枚*>
*4 (4) (63) Dangerous: The Double Album ▲2 - Morgan Wallen <46,000 pt/1,787枚*>
*5 (35) (15) Fighting Demons - Juice WRLD <40,000 pt/12,000枚>
6 (6) (58) The Highlights - The Weeknd <34,000 pt/912枚*>
*7 (-) (1) Crash - Charli XCX <31,500 pt/19,000枚>
*8 (9) (29) Certified Lover Boy - Drake <31,000 pt/84枚*>
9 (8) (11) DS4Ever - Gunna <31,000 pt/148枚*>
10 (10) (39) Planet Her - Doja Cat <30,000 pt/607枚*>

初登場は少ないけど、中身の濃かった今週の「全米アルバムチャート事情!」、いかがでしたか。最後にいつもの来週の1位予想です。今週はKポップの伏兵にまんまとやられましたが、来週チャートの対象期間、3/25-31のリリースで来そうなのはポップパンクに転向して1位をゲットした前作に続くマシンガン・ケリーの新作、これでしょう。ではまた来週。

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