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大切にされないなら大切にしない

この人、私のことそれほど大切じゃないんだな、と、気付いてしまう瞬間があって、そういうとき、胸の奥が、ずんと痛む。もう私は若くないけれど、その痛みの強さと重たさは、少女の頃と変わらない。むしろ、若い頃ほど跳ね返す力がないぶん、悲しみが長く尾を引く。

自分を大切に思われていないという実感は、生きる力を著しく削ぐ。私にとってとても深刻な痛みだ。そういうことが続くと、誰かを大切に思うのが怖くなるし、自分自身のことも、大切に思えなくなる。だからいつの頃からか、私は自分の心を守るために、私を大切に思わない人と、親しくしなくなった。その結果、交友関係がものすごく狭まったけれど、傷つくことが減って生きやすくなったから、このままでいいと思っている。

社会で生きていく以上、避けられない人間関係はあるが、よく知りもしない相手を、うっかり大切に思わないよう心掛けている。本当は、巡り会う人みんなを大切に思いたいし、みんなから大切に思われたい。しかし、現実はそんなことあり得ないので、そんな理想を掲げていては心が疲れすぎる。私を大切にする気のない相手をそれでも大切に思えるほど、私は強くも優しくもない。

だから、小さく小さくまとまって、自分と、自分の本当に大切な人だけを守って生きている。それでいて、私の大切な人たちが、外の世界でなるべく多くの人から大切に思われていてほしいと、勝手なことも願っている。