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スーザン・ストレンジ『カジノ資本主義』再読

積読解消シリーズだ。

大学生のころに読んでいまいち意味がわからず、また読まないといけないなあと思って放置していたら20年以上たってた、、、

原書は1986年出版なので、書いてあることが今ではだいぶ古臭くなってしまった。グローバルに資金が移動することで市場がカジノのように不安定になっていると批判しているのだが、その内容にはおおむね同意できるものの陳腐化しているのは否めない。

とはいえまだグラス・スティーガル法があり、ユーロはなかった時代からこうした批判を展開していたのは慧眼であろう。この20年の間にリーマンショックを頂点とするさまざまな金融危機があり、その間に私も色々と知識を積み上げたから陳腐に感じるだけなのである。

ますますカジノ的になる資本主義については本書以前にハイマン・ミンスキなどのポストケインズ派が批判しており、本書でもちゃんと引用しているのはフェアであると思った。

そしてミンスキらに欠けている国際的な資本移動について考察しているのが良いところである。

処方箋としては、各国の思惑で自縄自縛になるほかない国際機関よりもアメリカが行動したほうがアメリカ自身のためにもなるということであった。これは1986年当時も今も変わらないと思う。なぜならいまだに米ドルの威光は健在だからだ。

コロナ禍およびウクライナ戦争で明らかになったのは、カネの移動の自由も重大事ではあるものの、やはりヒトやモノの移動の自由に依存していることも現代の世界経済の脆弱さなのであった。それを1986年に予想するのは不可能であっただろう。

著者はLSE出身だがウォーリック大学でも勤めていたらしい。ウォーリック大学といえば今はニック・ランドとかマーク・フィッシャーで有名なのだが、こんな人もいたんだなあと感慨にふけるのであった。

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