千葉真一さんがお亡くなりになられた

先日、映画俳優であるところの千葉真一さんの訃報に接した。

千葉さんはもともとオリンピック選手を目指していたが、諸事情により断念、その身体能力を生かして東映のアクションスターとしてそのキャリアをスタートさせた。

個人的な千葉真一ベストロールはその時期に撮られた『日本暗殺秘録』の小沼正である。小沼は血盟団事件の主犯であり、千葉さんは心優しきテロリストを見事に演じきった。「革命ってのは俺たちでやるもんじゃないんだな。俺がやるんだ」というセリフは常に心のどこかにひっかかっている。

小沼の恋人役の藤純子をはじめ、田宮二郎(藤井斉)、片岡千恵蔵(井上日召)、菅原文太(朝日平吾)、高倉健(相沢三郎)、鶴田浩二(磯部浅一)、里見浩太朗(村中孝次)、待田京介(栗原安秀)と超豪華キャストの中でも、千葉さんの小沼正は一番輝いていた。
また脚本家笠原和夫の最高傑作でもあり、昭和初期という異常な時代を活写した名作でもある。これを機にといっては変だが、多くの人に見て欲しい作品だ。

これ以外で東映時代で決して忘れてはならないのは、深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズの二作目だろう。

無軌道なやくざ者大友勝利は強烈な印象を残した。千葉さんの最高傑作に本作を推す人も多いと思われる。

シリーズ全体の主人公である菅原文太は本作では狂言回しであり、スポットライトは千葉さんと北大路欣也である。ふたりとも若い

千葉さんはこのころにジャパン・アクション・クラブ(JAC)を設立し、アクションスターとしての地位を確立するとともに、後進の指導にもあたるようになる。

私はアクションスターとしての千葉さんの集大成は『柳生一族の陰謀』ではないかと思っている。映画史に残るようなタイプの作品ではないけど、非常に面白い娯楽作品である。

柳生十兵衛といえば千葉真一というイメージを決定づけた作品でもある。海外にもファンが多い。殺し屋とか剣の達人とかがやたらとアイパッチをつけるようになったのはこの作品の影響という説もあるくらいだ。

海外にファンが多かったことが結実したのは『キル・ビル』だろう。少林寺映画名優リュー・チャーフィーとともに老師役で出演し、ウマ・サーマンらに剣術指導をおこなった。


私ももう中年、かつて胸をときめかせたスターの訃報を多く聞くことになる年齢なのである。
しかし、彼らは死してなおその姿をフィルムに留め続ける。羨ましいことである。

千葉真一さんの冥福を心よりお祈りします。

サポートは執筆活動に使わせていただきます。