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瀬木比呂志『絶望の裁判所』読んだ

はい、読みました。

理解に苦しむ判決がこのところ目に付くようになってきたので、ちょっと前にニー仏さんが紹介されていたこれを読んだのだ。

著者は社会人経験無く裁判官となり、途中で大学教員に転じた経歴の持ち主である。もともと学究肌であったこと、日本の裁判官の質の低さ、制度の拙さに嫌気が差したこと、またうつ病を患ってしまったことなどが転進の理由らしい。

著者自身がそうであったように、社会人を経ずに裁判官となる者が多いために、おもんない人がいっぱいいるらしい。まあこれは医者もいっしょだね。お勉強ばかりしてきた人間はそうなりがち。

また日本の裁判官のキャリアシステムが悪い意味で官僚的であり、自浄作用が働きにくいし、上の覚えがめでたいものが出世しやすく、色々と良くないようだ。

個人的にはテクノクラートってそんなもんだろうと思う。もちろん裁判官には高潔で知性豊かな人物であってほしいが、無いものねだりである。日本社会はそんな人物を求めていないのだからしょうがない。私だってそんな立派な人間ではないから、他人に要求しづらいというのもある。

また著者は裁判所の村社会が肌に合わずに辞めているのだから、それをことさらに批判するのは自然なことであり、割り引いてみなければいけないだろう。
ただし、村社会とその住人を批判するのにイワン・イリイチだけでなく、ソルジェニーツィン『収容所群島』、カフカ『流刑地にて』なんかを引いてくる辺りは非常に手が込んでいると言わざるをえない。

だから著者の批判の多くは当たっているのだろうと思うし、これだから法曹一元が求められたのだなと得心したのである。


しかし家裁所長を批判するのに、妻側の事情を慮らない者が多いと述べているくだりにはちょっとがっかりした。おそらく裁判官にありがちなチンポ騎士の方なのだろう。
離婚紛争においてどれだけ女性側が優遇されているかわかってないらしい。知ってて無視しているなら悪質である。

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741字

労働者の解放を新反動主義、左派加速主義に則って論じる。その過程で生命至上主義、生権力、過剰医療を批判することになるだろう。

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