理系陰キャが彼女と友だちと相席ラウンジいく。

僕は理系の陰キャだ。
これだけは地球が何回まわろうと確固たる事実である。

東京に来て二年になるが、東京に友だちはいない。例外として物理科出身の友だちが祐天寺にいる。ガタイが大きいものの、くるんとしたまつ毛で親近感を感じさせてくれる身長183cmの大男だ。

そんな彼にはひとつ悩みがある。彼女がいない、ということ。僕のいないところで「相席屋にいきたい」とこぼすぐらいだから、かなり真剣らしい。

とはいえ僕も鬼ではないし、相席屋にいけるご身分でもない。相席屋に行きたい彼を放ってはおけないが、付き合ってそろそろ10年になるクレイジーな彼女がいるのも事実だ。さて、こんな経緯を話していたら彼女から驚きの提案が出た。


「じゃあ、三人で行こうよ、相席屋。」


常識に囚われない簡潔な答え。「え~、僕には男としての魅力を感じないの?」とは思ったけど、彼女に逆らえない僕はしぶしぶ提案を飲むしかなかった。

当日。渋谷で待ち合わせをし、昼はいつも通りゲームセンターを巡るデート。彼女が好きな「鬼滅の刃」のプライズをああだこうだアドバイスを送りながら互いに大金を突っ込む。 今日特別なのは、大男が横につったているということ。なんだかんだで「太鼓の達人」にて手加減をして負けてくれる友だちには感謝した。まあ、僕が相席ラウンジに連れていくわけだから、彼女の前でかっこつけさせてくれるのは当然の接待として受け取っておくべきか。そうこうしている内に本番までの時間が近づいていく。

僕は初の相席屋で彼女が僕より素敵な人に出会ったらどうしようと胃がきりきりしていた。

僕には初めての彼女で付き合って10年になる。
こんなクソみたいなイベントを自分からふっかけておいて、万一のことがあれば、僕は一生立ち直れないだろう。少しブルーな僕を尻目にかわいい彼女がオリジナルクレーズドをもぐもぐしていると、時間になった。
「さあ、時間になった。行くぞ。」
僕たちは戦場に向かう戦士さながら、各々思いを秘めながら相席ラウンジに向かった。




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