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読書note-3

「スコーレ No.4」311頁
宮下奈都
光文社文庫

本棚の背表紙のよくわからないタイトルに惹かれて手に取ると若い女性の横顔の素敵な装丁。表紙裏のあらすじを読んで興味を持ち購入。

都会の外れで骨董品店を営む父と、祖母、母、3姉妹の物語。主人公は長女の麻子。祖父が始めた骨董品店を長男をさしおき継いだ次男の父。厳格な祖母は昭和の価値観で麻子と七葉には制約を押し付けるが、末の紗英だけにはあれこれと適当な理由でそのルールを超越する。茶道、華道の才能が溢れていたが結婚出産を機に家庭におさまり、娘たちを温かい眼差しで見守るいつもにこやかな母。1学年下の妹の七葉(なのは)は器量がよくとても優しく太陽のような存在。七葉とは双子みたいに気持ちが通じ合う。6学年下の妹の紗英は、幼い頃から麻子、七葉たちと遊ぶ際には「お豆」として扱われるが、そのポジションを気に入っているような天真爛漫さを持つ。

そんな6人家族を、麻子の視点で恋愛、仕事、家族、結婚について語っていきます。情景の描写が細やかで目の前に見える!そして表現の一つ一つがとても美しい。

最終章では、七葉との感情の縺れを機に大学生になってから実家を出た麻子が、就職した先で奮闘します。そんな時に自分に足りないものを発見。それは幼い頃から自分の分身のようにいたあの美しい妹でした。蟠りも解け、新しい恋に出会う麻子。才能溢れる母が結婚により家に囚われたように感じてネガティブな印象を持っていましたが、結婚をしても良いかなぁとポジティブに捉えるようになるところで終わっています。まだ先が知りたくなる余韻が素敵です。

宮下奈都さんは初めて読みました。この「スコーレ No.4」は満塁ホームランくらいのインパクトを僕に与えてくれました。他の作品も読んでみようと思います。

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