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自分の作品を愛せ

少し気持ち悪いタイトルになってしまいましたが
大切なことなんじゃないかなって思っています。

僕ら職人は、自分の目の前にある商品(作品)で価値が決まると言っても過言ではありません。
経営やマネジメントが苦手な人なら特に。
逆に言えば、その商品に圧倒的な説得力や唯一無二の個性を持たせる事が出来る職人に、憧れた人もいるのではないでしょうか?
にも拘わらず、作った後は知らん顔な職人が多いように思います。
(ロスに対峙した時にも愛の差が出ますね、店頭を意識しているかいないかにも差が出ます。)

スマホの写真ホルダーに、パンの写真がたくさんある人の方が僕は好きなんですよね。
自分のパンをいかに美しく残すか、その一瞬自分のパンを愛でることが出来る人。
そういう人は、なるべくお客様に美味しく召し上がって頂こうと試行錯誤します。
それは、製法から提供方法にまで至ります。
自分の作品です、それは真剣です。

売れているお店のシェフは、「どんな人が」「どんなタイミングで」「どう召し上がるか」「食べた時の感想」まで意識して商品開発をします。
そこまで自分の作品の事を考えます。
そしてその想定した道順から踏み外さないように、お客様の手に渡るまで見守っています。

僕が大手ベーカリーを辞めるきっかけになった出来事。
自分の作るパンを
「これが僕のパンだよ、食べてみて!」
と友人や家族に言えなかった。
・自分が選んでいない、なんの背景のない小麦粉
・出来合いの材料
・保存料・増粘剤たっぷりのクリームやフィリング
・自分が考えていない製法。

コンパウンドバターを折り込んだクロワッサンを、ショートニング油で揚げ、パック詰めの出来合いカスタードを絞り、ドーナツシュガーをまぶす。

それを、おばあちゃん(お客様)が美味しそうな顔をして食べている。
それを見た時、この仕事していて良かったなって思えなかった。
身体に悪いかもしれない。。。と思いながら笑顔を返していました。
若いながらに偽善と矛盾を感じてしまったんですよね。
「自分のパンですっ。食べてください!」
って言えるものを作りたい、そう思い退職しました。

だから、自分が作った商品くらいしっかり愛でて欲しいと思っています。
(お前が愛さないで、誰が愛してくれるんだ!くらい思います)
自分の美味しいと思ったお店で働いているんでしょ?
なんなら、もっと美味しくしてやる!くらいで良いです。
そうすれば、入社前よりもっと良い店になります。
そのパンで感動した、刺激をくれる新たな人材が入社してくるかも知れません。
そして忘れてはいけない、その気持ちをお客様に120%にして伝えてくれる販売員を僕は尊敬し感謝します。

明日から改めて、自分のパンを「作って」「見て」「食べて」楽しんでみましょう。

余談
うちの商品の中で、小さい子がバッとパンを鷲掴みにして、両手で持ってパムっと頬張る姿を想像しながら作った商品があります。
実際、小さな子供が手を伸ばしたのを見た時は嬉しかったですね。
会計前だったので、お母さんに少し怒られてましたけど。(お子様に大人気らしいです)
🍞


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